軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense206

「ああ、朝か……結局、徹夜だったな」

じりじりと太陽の登っていく様子をグランド・ロックの背から眺める俺は、ピッケルを担ぎ、茫然と眺める。

朝日と共に活動を停止したグランド・ロックの頂上では、一晩続いたコカトリス・キングの出現が止んだ。

俺たちがコカトリス・キングを倒した後、みんなが歓喜の声を上げる中で、新たに出現したボスMOBのコカトリス・キングと二戦目に突入。

一戦目の教訓が生き、全体で苦戦無く倒せたが、その場には長く留まらずに一度上層へと全員避難した。

その後も、一定時間で出現するボスMOBを倒すために夜通し、多くのプレイヤーが挑戦。特に一回目の戦闘では、行動パターンが割れていないために足踏みしていたプレイヤーや一回ではレアドロップを入手できなかったプレイヤーたちが、多く集まり、二つのグループが交代でボスを狩り続けていた。

俺も最初の一戦では、ボスドロップは入手できなかったが、続いての二戦目で手に入れた。これを羨ましそうに見るタクだったが、ドロップ運ばかりは、正直どうしようもないので、俺はその時点で戦線から離脱した。

「あー、眠い。リアルだとまだ日は登ってないのかな? ああ、ミュウの朝食の準備しなきゃ……」

「何でも良いんじゃない? 今日は本格的に休みだし……不健康な学生よね」

「そっかぁ、【素材屋】のエミリちゃんとユンくんは、学生だよね。私は、午後から予定があるから辛いや」

戦線を離脱した後は、マギさんとエミリさんと一緒に鉱石採掘。二人が俺より優れたプレイヤーでレベルもプレイヤースキルも高かったとしても、夜通しの単純作業は堪えただろう。だがその結果、大量の鉱石が手に入った。これで当分は俺も採掘をしなくても十分と言うくらいの宝石の原石が手に入った。

「おーい、ユン。そっちはどうだ?」

「疲れた。もう、徹夜は勘弁。今日は寝て過ごす」

上から降りてくるタクを眠たそうな眼で見上げれば、太陽の光を浴びて元気な顔にどこからその活力があるのか分からない。

「さて、ユン。パーティーで報酬の分配するか」

「そうだな。早く終えて、俺は寝たい」

メニューの時計を見てみると四時半。冬の朝を考えるとまだ夜と言って良い暗さだろうか。

下を見れば、こちらと同じように最後に残ったボスMOBを刈り取ろうと奮戦している。あの中に、ミュウたちが居るならば、後二時間半ほど寝て、その後朝食に……。考えるのが面倒だ。どちらにしてもベッドでぐっすり眠りたい。

「じゃあ、パーティーで共同の奴だけ選んで後は好きに分けろ」

俺は、今回採掘したリストの中から自分の必要な分だけを先に残し、残りをそれぞれのリストに提示する。

全員、既に決まっている物を選び取る。一晩掘り続ければ、低確率の【陸皇亀の甲羅片】も十個近く出た。一人一つずつでも二つ目は誰が取るのか。と言うより一部俺に遠慮している様だが……

「遠慮するな。俺は、もうこれで二個目だ。と言うより早く決めてくれ」

軽い欠伸を手で押さえながらする。

そこから少し時間を掛けて自分の装備用の鉱石や換金率の高いアイテムを上手く分ける。

残ったのは、採掘に一番の労力を割いた俺の物になるわけだけど、正直使い道が無かったりする。だから、タクに提案する。

「タク。剣を一本折っただろ。残りの鉱石で直さないか?」

「良いのか? 残りは、ユンが掘った奴だろ?」

「別に良いって。売るなり、打ち直す素材にするなり好きにしろ。それに……落ちる俺を助けるために折った様な物だしな」

最後に呟く、とガンツとミニッツがニヤニヤした表情でこっちを見ている。なんだよ、と軽く睨むと何でもないよ。と言った風に顔を背ける。

「じゃあ、有難く貰うわ。特に積炭石は、良いな。マギさん! 沢山手に入りましたよ。これでウーツ鋼の剣を打ってください!」

「あっ、タク。お前ずるいぞ! 俺だってウーツ製の小手欲しいんだぞ」

「お前は、格闘家だから素手で充分だろ! 先に俺の壊れた装備を直させろ!」

「くぅ……素手よりも小手とかガントレットとか欲しいんだよ」

ああっ、徹夜明けなのに元気が良いな。マギさんも疲れた笑顔で、その話はまた今度ねー。と言っている。

「下でも戦闘が終わったのか」

下を覗きこめば、太陽に照らされた平原が広がり、戦いを終えたプレイヤーがこちらに手を振っている。

ミュウやセイ姉ぇは、合流しているらしく、平原フィールドの一部では宴会をしていた痕跡が残っている。

また、活動を停止したグランド・ロックの周辺には、夜通し超弩級モンスターを相手に無謀を繰り広げながらも立っている【獄炎隊】がいる。当初の人数を大幅に減らして、延々と戦闘を続けていたのか、装備や姿がボロボロだ。ただ、フレインが大の字で平原に倒れ込んでいるのだけは、見ることが出来た。

「――呑気なもんだな」

この場に居る殆どのプレイヤーは、グランド・ロックの活動から停止までの雑魚MOBの上位MOBの討伐がメインだったが、俺の場合は、アイテムを手に入れて終わりじゃない。

マギさんの場合は、大量の積炭石を使ってウーツ鋼製の武器を何度も練習して、納得のいく物を作り上げる。

エミリさんだって、【錬金】と【合成】のセンスで何らかの生産活動をするだろう。

そして、俺も――生産職の日々は、事前の仕込みと事後の生産が本来のバトルフィールドなのだ。

早く寝て、疲れを取ったら、今回の成果で何かを作らなければ、そう考えながら、俺たちは、ログアウトする。