軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense15

一晩経って冷静に考えれば、NPC在庫の薬草買って、ポーションにすれば、薬草一つ2G。二つで4G。それをポーションに変換するとマギさん買い取り価格35Gになる。

つまり――濡れ手に粟。いくら金欠の130Gしかないからと言っても、さすがに薬草程度なら買える。そう思い、急いで走る午後の昼下がり。

朝から行けよ。いや、無理だよ。だって家事支えるの俺なんだから。食材の買い足しとか、なんか天気悪そうだ。ってことで今日は部屋干し。そして夏場は夕立の心配があるから【OSO】の設定に地域の気象情報とかもリンクさせてゲーム中でもアラームが鳴る設定作業で時間が掛かった。俺って結構、機械音痴だったりする。

まあ、昨日ログアウトした森から全力で走っているのだが考えてみれば、SPがあるし、速度上昇のセンスも取得して走る。

現在のセンスも昨日のビッグボア狩りで戦闘面で大分成長した。

所持SP5

【弓Lv13】【鷹の目Lv18】【速度上昇Lv1】【魔法才能Lv15】【魔力Lv18】【錬金Lv5】【付加Lv16】【合成Lv11】【調合Lv11】【生産の心得Lv7】

控え

【調教Lv1】【細工Lv5】

早い早い。ミュウやセイ姉ぇの付けたステータスアップ系のセンス。体感してみて確かに便利という感想を抱く。これは常時エンチャントを掛けているようなものなのだ。しかもそれに準じた行動をすれば、成長する。

攻撃ならレベルアップに必要なダメージ回数の累積、防御なら被ダメージ回数の累積。速度だったら累積走破距離らしい。

成長方法をみると防具センスと似通ったところもあったりするように感じる。それに後衛職にとっては防御力上昇系のセンスは、局地的な不遇センスと言える。そもそも攻撃を受けないポジションなのだから。その反面、鎧持ちは、防御力上昇と併用して攻撃受けて、ダメージ減少させてセンス上昇が見込める。

うーん。センス構成って結構難しいね。生産職の人のテンプレも見たことあるけど、力仕事の鍛冶とかってのも、攻撃力上昇センス持ってるらしい。何でも金属打つ回数が攻撃判定と同じ。とか。

まあ、考え事しながら走ると、もう中央広場。ここには、NPCの店員がいたはずだ。

「すみません。薬草ありますか?」

「すまないね。薬草は売り切れたんだよ。何でも、ポーションを作るとかで」

「……へ?」

腰の低い男がへこへこすまなそうな顔をしている。いやー、最近のゲームってNPCまでリアルだなっ、て違う!

「どういうことだよ!」

「昨日、ポーション作るために色々な人が買い占めたんだよ。ついでに初心者ポーションも在庫切れ。この町のポーションの在庫がなかったからありがたいけど、さすがに初心者ポーションまで買い占められるとそれを使う人が困るからね」

そんな。昨日、 二人一組(ツーマンセル) のポーション作製を予想して、もう転売屋が買い占めたのか。しかも、広間の反対側に並ぶ露店では、心なしか、薬草、という単語が聞こえた。

NPCの店員から離れて俺はその露店に向かう。

「薬草一つ5Gだよ。初心者ポーション20G!」

「なっ!」

そんなの、薬草ってただの素材アイテムだろ! それが初心者ポーションと同じ値段だし、初心者ポーションに関しては、合成すると40Gの出費だ。マギさんに適正価格で売ったら赤字じゃないか。

こんなの売って儲けられるのは、露店持ちのぼったくりだけだろ。

それでも嬉々として薬草やポーションを買っていく人たち。なんでお前らそんな嬉しそうなんだよ。理不尽だろ。そんな光景が所々に見られた。

なんとなく、嫌な気分になった。マギさんの所に納品しに行こう、そして愚痴ろう。と離れる。

マギさんに事前にチャットを入れている事を確認して、何時もの場所に。

「マギさん。聞いてください」

「知ってるよ。薬草関連の話でしょ? いやー、あれはお姉さんも驚きだよ」

「あんなのぼったくりだ。俺みたいな金欠に対する宣戦布告か!?」

「そんなに怒らない怒らない。可愛い顔が台無しだよ」

俺は、かなり不満だったが、それを見ているマギさんは可愛い女の子がぷりぷり怒っているようにしか見えないようで微笑ましいといった表情だった。

そうして、俺が不満を呟いている間に納品終了。

マギさんに収めたアイテムは、ポーション×30、丸薬×15の七割価格の2100G。うーん。生産のキットを買い揃えるにも、少し足りないな。

「うーん。お金欲しい」

「あはははっ、じゃあ、さっきのポーション。自分で売ってみる? 今ならさっきの三倍でも売れるよ」

確かにそうだ。そうなれば約6000G。自作だし、乾燥工程を加えたポーションは効果が僅かに高い。それだけで売れる自信はあるが。

「やめとく。そんなことすると転売屋と同じになるから。その代わり、今まで集めたアイテムとか見てくれない? その中で売れそうなアイテムとかあるかもしれないし」

トレード画面に使わないアイテムを乗せていく。

コウモリからのドロップの皮膜、野犬ドロップの犬の毛皮、牙、犬肉、それに草食獣からの毛皮とついでに錬金で作った大きな毛皮。結構毛皮とか有り余ってるんだよね。

「うーん。どれも普通だね。二束三文ってのがいいかな? でも、一つ聞いても良い? 大きな毛皮ってアレで作った?」

なんか、マギさんが大きな毛皮を見てにやりと笑っている。

「はい。まあ秘密にしてほしいかな」

「良いよ良いよ。うーん。そっか。じゃあ、他のアイテムもアレ使って、これと同じように作ってよ。そしたら色付けて買い取るから」

「でもどうしてこれだけ?」

「あー、身内話でもいいかな? 毛皮とか、皮膜って裁縫で皮鎧やコート作りで使うんだけど。まあ、これが困ったことに、この周辺のMOBだと小さい毛皮とかだからあんまり大きな鎧出来ないんだよ。せいぜい部分保護程度? まあ、籠手とか作る分には足りるし、サイズが足りなければ、合成でもして合成皮にも出来るんだけど、合成皮って利点は容易に作れるけど、脆いんだよね。何でか知らないけど。普通の部分保護よりは覆っている箇所が多いから急所にはなり辛いけど、耐久が極端に低いんだ」

へー、インゴットとは違って、皮鎧やコートって一つの毛皮から作るんだ。それに合成皮か。なんか家具とか作るセンスで使いそうな名前だな。

「まあ、そういうところから今は身内の裁縫師や皮師は、自分で合成取得してんだけど、やっぱり一級品を作りたいじゃない? だから譲ってくれると嬉しいな」

「うーん。じゃあ、今作りますね」

人は周囲にはいるが、周りはみんなピカッピカ光って調合やら合成してポーション作ってるようだ。まあ、錬金がその中混じっても問題ないはずだし、事実アイテム取り出さなくても錬金出来るし。

「じゃあ、行きますね」

「ほいほい。よろしく」

ぴかっ、と光ってはい終了。俺、この味気なさが嫌いだから何時も取り出して、目の前で変化させるんだよな。

まあ、大量にあった二束三文のアイテムは、綺麗に変換されました。

大きな皮膜×3、大きな犬の毛皮×3、大きな毛皮×7、大きな牙×3。うーん。なんか、犬肉ってゴミになった。何に使うんだ本当に。

「出来ました」

「おお、やってくれたか。じゃあ、出して出して」

再び開いたトレード画面。錬金したアイテムを乗せていく。

「やー、ありがとね。うん。いくらにする?」

「いや、俺分かりませんよ。適正価格でお願いしますよ」

「そう言われてもね。NPCの七割だってこの場合安いよ。それに、秘密にするってことは、価値が下がらないってこと。ふふふっ、どうする。吹っかけてお姉さんから搾取する?」

「なんで、そんなに無駄にエロい事言うんだよ。七割で良いですよ」

「あはっ、もー、欲ないねユンくんは。まあ、正直、私も価格分からないから、身内に聞いてみるけど、こんなもんで良いかな?」

トレード画面に乗せられるお金は、2500Gって多い! ポーションより儲けがあるじゃん。

「なんか、マギさんと取引すると毎度のことで驚かされますよ」

おもにお金的な意味で。昨日の上質な鉄鉱石と良い。今日の毛皮や皮膜と良い。

「私も、驚かされっぱなしだよ。ユンくん、面白いセンス構成してるんだもの」

それは主に、アイテム的な意味ですか。わかりますよ。

「にしても。不遇センスの塊なのに、どうしてこんなに面白いかな?」

「まあ、隙間産業的なキャラだからな」

「あはははっ、まさに人の思考の隙間を縫うようなプレイ方法だね」

「茶化さないで下さいよ」

もう、お金がほくほく。これなら4500Gの儲け。やっと携帯炉が買える。普通、鍛冶や細工センス取得した人って、800Gで炉を買って、西の森で鉄鉱石採取して、作るそうだから。俺遠回りしたな。

ゲーム始めて、四日目。なんかここまで来るのに長かった気がする。

「それじゃあ、トレード完了っと。何かほかにあるかな?」

「あっ、そうだ昨日、東の方で、銅鉱石とすず拾ったんですけど、これってインゴットを合成して 青銅(ブロンズ) になりますか?」

「あー。それね。β版で友達誘ってやったな」

「どうだったんですか?」

「青銅製ってあんまり性能良くないんだよね。見栄えだけだし、防御力高くないし、まあ、細工センスの練習にはなるよ。銅よりも」

あー、つまり、銅以上、鉄未満か。そして、俺。細工センス低いな。

「ついでに言うと、NPCからも買えるし、青銅インゴットを一度作ると」

つまり、一度作ればそれで良いアイテムなんだ。なんか、微妙に悲しいな。あの時、あれだけ嬉々と拾ったのに。

「まあ、練習頑張って」

「……はい」

少し、俺の細工街道は、前途多難なようだ。