軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百六十九話

「……すげえな、本当に聖女じゃねえか」

『お酒はまだ体の中にあるから、動いたらすぐ魔法も切れちゃうと思うけどね』

バダダムの背中に背負われていたゲラリオに、ヘレナが魔法を使って酔いを醒ましていた。

正確には、酔っていないという精神状態にしているだけのようだが、ゲラリオは感心し切りだった。

「で、お前はなんなんだ?」

クルルが不機嫌そうに尋ねる。

それはヘレナへの警戒心というより、ヘレナの魔法に感心しているゲラリオの様子が、弟子として面白くないのだろう。

『クウォンの聖女様』

「……」

クルルの目が細くなると、ヘレナは首をすくめていた。

『そんな風に男たちから呼ばれてたのよ。ここがまだ、崩壊した帝国から逃げてきた人でごった返してる時に』

どこか自嘲的な言い方に、ゲラリオもすぐにヘレナのかつての職業に思い当たったようだ。

ただ、いつもの軽い調子ではなく、冒険者の顔で尋ねていた。

「姉さんは古代帝国時代を生きてたのか?」

『古代って言われるのが慣れないけど、まあ、そうね』

「で、その古代帝国が、崩壊した」

『ある日、突然にね』

ヘレナの笑みは、ただの苦笑いではない。

山ほどの辛いことを、諦めというヤスリで削りつくしたような、そんな顔だ。

『あれは、お使いの帰りのことだった。大きな壺に入ったコケモモの砂糖煮を抱えて、盗み食いしようかどうしようかって思いながら町の通りを歩いていた時、東の空に巨大な火柱が立って……そこからはもう、大混乱』

大混乱、と言って両手を空に向けるしぐさは冗談めかしているが、かつてのヘレナは、平和に暮らす普通の少女だったようだ。

『最初は商人が町に来なくなって、食べ物がなくなって、大人たちが遠くの町に出かけるようになった。やがて出かけた大人が戻ってくる代わりに、我こそは帝国の継承者と名乗る山賊が入れ代わり立ち代わり町にやってきた。西のほうにはまだ安全な土地があるって噂になって、ここに来たってわけ』

ゲラリオはヘレナをじっと見つめ、軽く頭を振る。冒険者として、戦の混乱に見舞われる町で、そういう例をたくさん見てきたのだろう。

ヘレナが恥ずかしそうなのは、不幸自慢をするタイプではないからだ。

『ただ、こっちの土地の平和っていうのは、誰も住んでないって意味だった。なんにもない山とか荒野に、私たちみたいな避難民が溢れかえっててさ。おかげでまあ、あんまり長生きできなくてここで死んで、どういう理由なのか、この形で生き返ったわけ。その時にはもう、だいぶ時間が経ってて……百年とかなのかな? ここにいたたくさんの人たちは姿を消して、小さな集落になってた』

淡々と語る様に、クルルも口を挟まない。

『その時にはもう、過去になにがあったのかなんて誰も気にしてなかった。すべてが夢だったのかと思ったくらい。あなたたちの言う古代帝国語も、ここに住む人たちは単語をいくつか知ってるだけになってた。あれって元々、帝国のどこでも伝わるようにって目的で作られた物だから、使う人もいなかったんだね』

ローマ帝国が崩壊した後も、文書の中や知識階級の間で生き続けた、ラテン語のようなものなのだろう。

だから魔石の伝言に利用されていたのに、今の世でほとんどまったく知られていないのだ。

いずれにせよ、ヘレナの話は自分たちの見聞きしてきたこととも符合していた。

ヴォーデン属州にいた悪魔と、鉱山の奥に残されていた伝言から、古代帝国はある日大魔法によって滅んだとわかっている。

そして突如として統治機構を失った帝国は、急速に瓦解した。

帝国として機能していたのであれば、都市部が政治や物流を掌握し、農産物などを管理していたろうから、破滅的な被害が出たに違いない。

商人が町に来なくなり、食べ物がなくなったというのは、この辺りが原因だろう。

流通を采配する人がいなければ、ある地方では農作物が溢れかえって腐るに任せ、別の地方では食料が払底して飢餓が広がっていくものだ。

そしてそういう混乱に乗じて武装勢力が暴れ、内乱とすら呼べないような、ただただ無法地帯となっていくのもお決まりのパターン。

やがて難民となった人々の人口移動が起こるが、いきなり押し掛けてきた人々を養えるだけの資源があるような土地は、限られている。

飢餓と絶望の中、過去の文化や知識を残そうとする者など存在しないし、その術もない。

こうして生きるので精いっぱいな世代が三世代も続けば、昔のことなど綺麗さっぱり失われるには、十分だろう。

だから、ヘレナという存在の貴重さは、どんな言葉でも表現しきれない。

「ヘレナさんにはたくさん聞きたいことがあります」

自分の言葉に、ヘレナは冗談っぽく腰に両手を当て、笑ってみせる。

悪魔になる前、普通の娘だった頃のヘレナは、きっと周りを明るくするタイプだったろう。

「ただ、自分が一番気になっているのは、聖堂に攻め込む前、あなたが言っていた言葉です」

「帝国を滅ぼせ、とか言ってたな。悪魔らしい台詞じゃないか」

クルルがやや剣呑に突っかかると、ヘレナは楽しそうに笑った。

『そうかもね。でも、私は本気よ』

ゲラリオが眉をゆがめ、こちらを見てから、ヘレナを見た。

「帝国を、滅ぼすだって? 姉さんの生きた帝国は、すでに滅びてるじゃねえか」

ヘレナは面白そうに肩を揺らしてから、一転、ため息をついた。

『滅びた……滅びたはずなんだけどね。でも、そうじゃなかったんじゃないかって』

ヘレナは視線を落とし、口をつぐむ。

考えをまとめているのか、あるいは古い記憶を遡っているのだろう。

『この集落にやってくる人の中に、時折、使命感に満ちた人たちがいたのよ。皆疲れ果てて、希望なんてどこにもなかったのに、目に光を宿してた。そういう人から聞いた話の欠片を、ずっとこの山で考えていたの』

「使命感?」

自分の問いに、ヘレナは顔を上げ、遠くを見た。

その顔は、はっきりと西を向いていた。

『そういう人たちは、みんな、西に向かったわ。帝国でなにが起きたのか、後世に残さなければならないからって』

もちろん、心当たりがあった。

属州が集まるこの半島の西の果て。ヴォーデン属州の鉱山にいた悪魔のこと。

そして、彼が守っていた魔法使いの骸のこと。

「ヴォーデン属州という、この半島の西の果ての魔石鉱山に、魔法使いが残した伝言がありました。世界が滅びる光を、東の方角に見たと」

ヘレナはその言葉を聞くと、驚きに目を見開き、それから、柔らかく笑った。

『そう。じゃあ、使命を無事に果たせた人がいたんだね。私が一夜の元気を与えた人ならいいんだけど』

ヘレナはそう言って、自虐気味に笑っていた。

自身のことを、なにも知らない町娘、と称していた。

情報に満ちた現代でさえ、政治のことなどろくに知らない人のほうが平均だ。

帝国が音を立てて崩壊する中、この地にたどり着いた当時のヘレナは、寝物語に男たちから帝国の根幹にかかわるような政治の話を聞いても、ほとんど理解できなかったに違いない。

男たちのほうも、理解してもらえるとは思っていなかったのではないか。

使命感から、話さずにはおれなかった。

自分たちの見たこと、聞いたこと、知っていることを。

そしてヘレナは蘇り、長い時間と、当時の記憶の欠片が残された。

「それで?」

クルルが続きを促す。

ヘレナは、言った。

『そもそも、なんで私たちの帝国が滅びたのかって考えてた。私たちも最初は、反乱かと思ったのよ』

「反乱?」

『そう。あの当時、帝国は世界中から魔石をかき集めていたからね。皇帝は正気を失ったと言われていた。それくらいに魔石を求め、帝国中が悲鳴を上げていた。そんなに集めてどうするのだとみんなが思っていた。皇帝の御世に、もう倒す敵なんていないのにと。でも』

言葉を切ったヘレナは肩をすくめてみせる。

自分はその言葉の続きをすぐに理解する。自分も魔石の流通システムから、同じように考えたからだ。

ヘレナの場合は、鏡を見ればよかった。

「お前みたいなやつが、古代帝国の中心にいたってことか」

クルルの言葉に、ヘレナはウインクして見せる。

『特に、教会の歴史を考えると、そうとしか思えなかったのよね』

「教会、ですか」

教会は神を奉じ、同時に、精霊という存在を教義に含んでいる。

そしてファルオーネが言うには、教会はその精霊という存在を教義の中で持て余していると。

「あ~……」

ゲラリオが顎の不精髭をさすりながら言った。

「教会が歴史の中で保持してる大規模魔法のことか。確かにあの魔法陣が本物なら、誰が、なんのためにあんな巨大な魔法をこしらえたのか、いまいち理解できん。ヨリノブは、人間同士の争いだろうと言っていたが……」

もちろん仮説のひとつだし、その仮説にも瑕疵がある。

帝国が滅ぶような壊滅的な被害が出て、その歴史がきれいさっぱり失われるほどの災厄が起きたのに、どうして教会だけは大規模魔法陣を受け継ぎ続けることができたのか。

しかし、問題の捉え方がそもそも間違っていたとしたら。

「つまり教会は、元々帝国を滅ぼそうとしていた?」

自分の言葉に、ヘレナはうなずく。

『連綿と、ものすごく長い時間をかけて、大きな魔法陣を受け継いでるんでしょ? それにさ、このクウォンの地に温泉が見つかって旅人が来るようになって、私がちょくちょく魔法で旅人の苦痛を癒してたらさ、ある日教会がやって来たんだけど、驚いたわよ。帝国は滅んだのに、教会は昔と全然変わらず、生き延びてたんだから』

当時を生きていた者ならではの感想だろう。

ヘレナはこの世界の誰よりも、教会という存在の違和感に気がつける立ち位置にいたわけだ。

『やがて大きな聖堂がここに移設されてきて、都会から人がたくさん来るようになったから、今の世界のことをどんどん知ることができた。私はこの山からそれを見て、聞いて、確信したわ。教会だけが偶然生き延びたなんておかしいし、なによりあの大魔法は、飾りじゃないって。そうじゃなきゃ、筋が通らないもの』

「彼らがそうしているのは、倒すべき、敵がいたから」

ヘレナは嬉しそうに微笑んだ。

「では、ヘレナさんの時代の帝国を滅ぼしたのも、教会だと?」

『悪魔祓いは教会の仕事でしょ?』

そこにクルルが言った。

「だが、お前は昔、この土地で教会相手に聖女の振りをしてたんだろう? 今も聖堂の連中はその伝説を信じている。おかしいじゃないか。倒すべき敵がいるとしたら、お前のような悪魔のはずだ」

ゲラリオはクルルを注意しない。

誰もが思うことだからだ。

『私はすべてを知らないし、この山でずっと暮らしてるから、確かなこともわからない。でもね、確信してるの。帝国に巣食う、ナニカのことをね』

息を飲むクルルに、ヘレナは小さく微笑んだ。

『私も色々考えた。帝国の中心で魔石を集めていたのはどんなやつなんだろうって。私は、私みたいな誰かとももちろん思ったわ。あるいは、おとぎ話に出てくるような、永遠の命を得る魔法で寿命を延ばし続けてる悪い王様かとも思った。でも、そういう奴らなら多分、あの大魔法の前に、ひとたまりもなかったと思うのよ』

帝国と名のつく土地からなら、どこからでも見えたという、巨大な火柱。

きっと多くの人が、この世の終わりと思っただろう。

『でも、ある日、私にまったく新しい閃きをもたらしてくれたものがいる』

ヘレナがそう言うと、ふっと姿を消した。

そして再び現れたその手に握られていたものを見て、自分は目を見開いた。

「茸……」

『そう。この茸を見て、こいつらならって思った』

茸は菌糸を地中に伸ばし、むしろそちらが本体だ。

ある研究によれば、直径十キロの範囲に渡って、地下に菌糸のネットワークを築いていたらしい。しかもその研究は途中で資金が尽きてしまったため、菌糸のネットワークの全貌は明らかにならなかったという。

そういう微生物群を根絶やしにするのは、容易なことではない。

昔の生物学では、地下数十メートル以降の岩石層には生物がいないとされていた。

けれど地下三千メートルの金鉱山からも、微生物が発見されている。

ましてや、魔物と化したそいつらならば。

「いや、それも変だろう。茸だろ? それでどうやって帝国を……んっ……治めるって言うんだ?」

クルルが話している途中にちょっと笑ったのは、玉座に座る茸を想像したのかもしれない。

ゲラリオも、確かに、みたいな顔をしている。

けれど、自分だけは違った。いや、ヘレナもまた。

なぜなら、この山に人々が容易に入れなかった理由を、思い出すべきなのだから。

「茸の使う魔法ですよ」

そして。そう、そうだ。

茸は植物と共生し、時に生物に寄生する。

しかも寄生生物には、宿主の行動を支配するタイプのものがいるのだから!

終宿主である鳥に食べられやすくなるよう、開けた場所に寄生したカタツムリを移動させるやつ。

羊の消化管を目指し、寄生した蟻が草と一緒に羊に食べられるよう、蟻が草の先端でじっとするように操縦するやつ。

それから寄生した鼠が猫に食べられやすくするように、鼠が天敵である猫の匂いを好むように脳をいじくり、襲われやすくするやつ。

もしもその手の連中が魔物化していたとしたら?

ならば、帝国の宮殿の最奥で、御簾の向こうに鎮座する皇帝は……。

『私はこの山から離れられないし、私に貴重な話を聞かせてくれた人たちはもういない。当時の私はただの小娘で、きっともっと覚えておくべきことがあったにしても、聞き流してただろうし、忘れてることも多い。だから、全部、私がどうにか手に入れられることから推測した話』

自身の話が絶対ではない、とは言っているが、ヘレナのその様子からは確信が見て取れる。

それから、激しい怒りも。

『もしもあの大混乱が、ナニカのせいだったのなら、私はそいつを絶対に許さない』

ヘレナの手の中で、茸が握りつぶされ、灰となった。

ヘレナはなるべく明るく話していたが、彼女の生きていた時代は、間違いなく地獄だったのだから。

『だから……まあ、帝国を滅ぼしてっていうのは私の復讐心。もちろん、全然的外れかもしれないけどね』

途端におどけたように言ったのは、激情を見せてしまった照れだろう。

だが、自分たちは笑わなかった。

ヘレナの話をたわ言だと一蹴するには、符合する点が多すぎる。

なにより、その真剣さからは、長い思索の跡がうかがえた。

「さっきから静かだな、おっさん」

ゲラリオが急にそんなことを言った。

クルルが驚いていたのは、いつもはやかましすぎるくらいにやかましいファルオーネが、ヘレナを前にしてからずっと静かにしていて、その存在を忘れていたからだろう。

「……うむ。なにかを飲み込むとき、言葉が出ないのと同じだ。それに、我が師の残した言葉を、思い出していてな」

ファルオーネはヘレナに向かい、膝をつく。

「知識は受け継がねばならない。そなたは、恐ろしく貴重な知識を、受け継いでくれた」

『……多分、正確じゃないけど』

「なに、どんな宝石も、掘り出されたままでは輝かんものだ」

ヘレナは目を見開き、それから照れたように微笑んだ。

「だが、我々が見つけた。そうだろう、ヨリノブ殿」

ファルオーネがこちらを振り向く。

魔導隊を巡る騒ぎや、聖女を見つける段ではあまり活躍しなかったファルオーネだが、人には各々役目がある。

荒唐無稽な話の考察と調査なら、占星術師の右に出る者はいない。

「ええ。そのとおりです」

ヘレナの語った歴史は、おそらく正確ではない。

だが、とても重要なことを示唆していた。

よもやそんな与太話を、ということについて、事実かもしれない足場を与えてくれたからだ。

宇宙人がいるかもしれないと思っていることと、いた痕跡が確かにあると知ることの間には、途方もない差が存在する。

なぜなら、なにが起こりうるのかという確信が変わるため、人類全体の研究の方向性やその資源の配分について、天と地ほどの差が出ることになるためだ。

つまりは、社会の発展の方向性を、大きく左右することになる。

ヘレナの語ってくれた話は、それがたとえ不正確であろうとも、それほどの話だった。

特に、ヴォーデン属州の鉱山に刻まれていた話に傍証が出たのが大きい。

存在を忘れるくらいに静かだったファルオーネもきっと、そのことをずっと考えていたのだ。

「それに、そなたの話の中で最大の収穫は、だ」

ファルオーネがそれまでの沈黙分を取り返すかのように、ローブをはためかせた。

「大規模魔法陣は、やはりなんらかの方法で動くのだと知れたのだからな!」

「ヘレナさんは、その方法については?」

こちらの問いに、ヘレナは首を横に振る。

『わからない。魔法なんて縁遠い存在だもの。魔石の暗号は寝物語で聞いてたから知ってただけだし、帝国言語も嫁入り修行で学んでたってだけのことだし』

コケモモの砂糖煮の詰まった壺を運んでいる最中に帝国が滅ぶ光を見た、というヘレナの話を思い出す。

きっと当時は、結構いいところのお嬢さんだったのだろう。

『というか、多分、そういう大事なことも、本当は書き残されてたはずなのよ。でも、私が復活した時にはもう、前の帝国文字はみんな読めなくなってたし、なんの記録も残ってなかった。多分文書類なんかは、全部焚火に使っちゃったんだと思う』

生活の厳しい土地で、読めもしない文書を大切に保存する意味を見出すのは難しい。

古代帝国末期になにが起きたのか、それをきちんと書き残していた者がそれなりにいたのかもしれないが、その後に続いた大混乱の中、燃料として燃やされたり、散逸してしまったのだろう。

だから重要な情報は欠けたままだし、ヘレナの話には、よくいえば大胆な仮説、悪く言うとかなり強い思い込みで構成されているところが多い。

なにより今自分たちが手に入れている情報の中でも、矛盾しているところがいくつかある。

特に、暗号文に残されていた、「魔法の知識を追いかけるな」とはどういうことなのか。

もしも大規模魔法が人類の敵を打ち倒すための切り札ならば、それは矛盾するメッセージだ。

さらにはこの世界に残る神話、神が人間に魔法を授け、獣人のくびきから解放したというものも、どう位置づけられるのかわからない。

しかし、かつて偉大な物理学者は言った。

問題というものは、なにが問題かわかった時点で、八割がた解けているのだと。

大規模魔法陣も解けない謎ではないのなら、そこに資源を注ぎ込むのは無益なことではないし、謎を解く過程で新たな地平が見えることもあるだろう。

そして帝国中枢にナニカがいるのなら、その途方もない規模の大魔法が、切実に必要となるかもしれない。

おまけにその帝国は、ジレーヌ領の噂を耳にし、目を付け始めている。

こちらには、武力が必要だ。

それも、圧倒的な武力が。

「島に戻りましょう」

自分は、言った。

この世界で生き延びるために、やるべきことが山積みなのだから。