作品タイトル不明
やっぱりなんかただの集団探索だったはずなんですけど
「次、FPダンジョン3Fの危険性について。そもそもFPダンジョン1・2Fは、日本…いや世界中にあるダンジョンの中でも格段の安全度を誇る。別格と言っていい。逆を言えば、本来のダンジョン1・2Fはもうちょっと危険なんだ。ゴブリン種やワイルドドッグ種が出るダンジョンであれば、命の危険もある。スライム系だとしても、汚染地域タイプのアシッド系やポイズン系に属するスライムであれば、命とまでは言わなくても、長時間接触すれば重篤な傷病にみまわる可能性がついて回る。」
「その破格の安全を誇る代償が、FPダンジョン3・4Fで跳ね上がる難易度だ。この難易度は本来より難しくなる5・6階層を差し置いて、より危険と判断されている。ゆえに、3・4Fに監視員は常駐していない。多くの探索者は、FP1・2Fで初の探索を経験したのち、近くのダンジョンで1~6Fを攻略してから、『D級探索者』の認定を受けて初めてFPの3Fに戻って来る。」
知っている。授業でも習ったとおりだし、FPダンジョンに入場する前にしつこいほどに念を押された。今回の集団探索が如何に簡単で恵まれているか。安全でローリスクか。そして、ダンジョンが本来どれだけ危険であるかを。
「その理由が、『①3Fからノンアクティブだったスライムがアクティブ化する。』『②スライムの性質が変わりマッドスライムとアシッドスライムの混成になる。』『③新種の敵として毒持ちで素早く集団で行動するキラー・ビーが出現する』『④レアモンスターで6Fボス相当のクイーン・ビーが出現する』『⑤ジャングルエリアとなり見通しが悪く足元も危険』『⑥ときたまスコールが降るため自分の位置を見失いやすい』『⑦高温多湿の環境下でのサバイバルを強要される』の7つだ。」
『そうね。故に3Fへの入場は最低でもDランクでかつ、可能ならばCランクが随伴することが望ましいと規定されているわ。だから3F入口に、普段から中川のようなベテランを配置して監視しているのよ。』
「そして探索者としてDランクになれば、まずスライムには対処できるし、キラー・ビーも魔法で対処可能だ。クイーン・ビーは接触を避ければいい。万が一、不意遭遇した場合は逃げに徹すれば逃げるだけならなんとかなる。そして、高温多湿のサバイバルも魔法や各種耐性を取得すればそれほど問題にはならない。自分の位置を見失う件も、地図作成IIまで成長すれば最低限対処可能になる。つまり、 駆け出し(E級~D級) 探索者数名での集団アタックならば、3F・4Fを 突(・) 破(・) す(・) る(・) だ(・) け(・) ならばさほど問題はなくなる。…そこまでが大変ではあるが。」
「が、無策でEランク以下の者が少数で突入すれば待っているのは死地だ。地図作成Iで正確に自分の位置が把握できず、スライムに油断すれば泥と粘液で動きが封じられ、アシッドスライムに目や鼻や喉や皮膚をやられる危険がつきまとい、足元のスライムに対処をしているところに、キラービーに集団で襲われる。そして一度位置に迷えば高温多湿に体力が持っていかれ、文字通りのサバイバルが始まる。そうこうしているうちに、クイーン・ビーに出会ってしまえば逃げるのは難しいだろう。」
『現に、FPができた当初は、1・2Fで油断して3Fのスライムに初見殺しされる駆け出し探索者が山のように出たわ。油断してスライムを叩き潰して、目や皮膚をやられて、他のスライムに動きを封じられたところを、キラー・ビーにやられる初心者が続出した。故に協会は、3F・4Fの探索に、探索者ランクD以上という制限を課した。』
「で、だ。高橋君と山田君はこの話を聞いた上でも、3Fに行くと駄々をこねていた。ただの短慮だとしては命知らずが過ぎる。」
「…ただのバカなんじゃないですか?」
「その可能性もある。だが、一番は『これでも自分たちならばどうにかなる』と考えた可能性が高い。」
「…同じでは?」
「違う、つまりは何かしらの根拠があるんだよ。おそらく、何かしらのレア・アイテムを持っているか、人為的なステータスのアップおよび、強力なスキルの獲得をしている可能性がある。さっき言った、現役探索者を欺ける第三者による協力によって…ね。」
『つじつまは合う…わね。』
「黒川さんも、何かしら心当たりあるんじゃない?」
「…」
―読めてきた。それで 私(・) に繋がるのか。