作品タイトル不明
なんか普通においしいんですけど
私達は、ダガンさんとイドラさんの案内でこの海底都市を巡っている。上層の事も気になっているが、この都市から一歩…いや、一泳ぎでも外に出れば『ダンジョン最下層』の厳しい環境が待っている。当然、出てくるモンスターも10階層の比ではない。実際、空を見上げるとあの『オイラン』が数体泳いでいるのが見える。他にも見たことがないモンスターが何体も空を泳いでいる。
この都市は、遥か前に滅んだと言われる古代都市の遺産による結界で守られているが、これだけ広いエリアを守っているということは、もしかするとセーフゾーンパレットみたいなものかもしれない。それにしても都市一つをまるまるセーフゾーンにできる物となると、もしかすると多数有るのかもしれないね。
いろいろ見て回ったのだが、このリーリエの文明には、やはりいろいろと人間社会の文化が紛れ込んでいる。例えば、今来ているこのお店には、なんとワインがある。さすがにこの都市では作られてはいないそうだが、はるか昔に地上と交易した時に仕入れたものが、何十年、何百年と熟成されたものらしい。また、いろんな調理法や、漁の方法などもいろいろと伝えられているようだ。
今来ているこのお店は、夜ご飯にとダガンさんとイドラさんに連れてこられたお店だ。名前はこの海底都市の文明の言語で書かれていて、私達には読めなかった。
そうして今、目の前に出ているのが、タコのカルパッチョだ。正確には『タコ型モンスターのカルパッチョ』か。この海底都市で作られた酢と塩で味付けされている。そしてその隣にあるのは、魚のオイルで揚げられた『タコ型モンスターのオイル揚げ』で、こっちは『イカ型モンスターのイカリング』に、あっちには『オイランのポアレ』まである。他にも『ぬるぬるぶにぶにとしたよく分からない魚型モンスターが入ったスープ』等が出されている。
「ようこそいらっしゃいました。今回の料理はお客様に合わせて、地上でも馴染のある料理法で調理させていただきました。材料はすべてこの都市や周辺でとれたものを使用しております。どうぞ、お楽しみください。」
料理について、見た目が人間に近いシェフの人が説明してくれる。人と違うのは、ヒレとエラがある所ぐらいだろう。ちなみに、この食卓に並んだ料理の殆どは、刺し身やカルパッチョを除いて、加熱料理されたものであり、特に油を使ったものが多い。どの食材もモンスターであるが、見た目は実際の海産物に近い。実際に、タコ型モンスターのカルパッチョは、『タコのカルパッチョ』と言われれば、おそらくそのまま信じるだろう。…皮の色が緑色じゃなければ。
「…これ全部モンスターっすよね?」
「そうやね。まだ見たこともないモンスターばかりやね。」
「タコとイカっぽいのが多いですね。あとは全部深海魚みたいな。」
「臭いは美味しそうだな。少し生臭いが。」
24階層の偵察部隊のことを考えると、悠長に食事をしている場合ではなさそうに思えるが、実際としてこの都市の外へ出られない以上、都市を回っていろいろと情報収集をしたい。その上でダガンさんとイドラさんの真意を見抜かなければならない。一度も姿を見せていない、女王様というのもなんだか怪しく思えるし。クーちゃん関係の事もなんだか怪しい。今は、このままこの食事を頂くとしよう。
周りのテーブルでは半魚人や、ほぼ魚みたいな見た目をした人達が、生の深海魚っぽいモンスターを頭から食べていたり、ぶよぶよの塊をスライスしたものを食べていたりと、私達からみれば、到底食べれそうにないものを食べている。例えば隣の席では、このタコを生きたまま丸ごと一匹ぶつ切りにしたものに、正体不明の茶色い色をしたソースをかけて食べている。しかもその状態で、ぶつ切りにされたタコがうごうごぬめぬめと動いているのが見える。触手の切れ端なんて皿から逃げ出してしまっている。なんというか、冒涜的な光景だ。
本当に食べても大丈夫なのか悩ましいが、勇気をだして食べてみた所、味は普通にタコのカルパッチョだ。…ちょっとぬめりが強いかな?口に入れると意外と臭みを感じない。得体のしれない料理に抵抗がない訳では無いが、普通に美味しいから困る。…ところでこのタコ型のモンスターって、一体なんて名前なんですかね?
「…普通に美味しいっす。」
「見た目はアレだけど、普通にタコの味やな。」
「意外と口に入れると生臭くないんだな。」
「スープも見た目によらず、濃厚な魚介の出汁がすごいですね。」
『テケリ・リ』
そんな事を考えながら食事をしていると、足元から声がs「キャッー!!!!!」