軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39 マリアとお茶会を

女官長に連れられ、貴賓用の客間に到着した。

「皇女様、こちらが婚儀までの間お過ごしになるお部屋でございます」

日当たりの良い落ち着いた感じの部屋で大きな窓から庭にも出られるようになっていた。帝国のアデライーデがいた部屋よりはこじんまりしていたがきれいに清掃され女性好みの調度品や花が飾られている。

「素敵な部屋ですね。用意をありがとうございます」

「お褒めの言葉ありがとうございます。ご挨拶が遅れ申し訳ございません。私、女官長のヨハンナ・マイヤーと申します」

そう言うと、アデライーデに、深い淑女の挨拶をした。

「なんとお呼びすればよろしいのかしら」

「ヨハンナとお呼びいただければ…」

「そうね…では、マイヤー夫人ではどうかしら。これから色々教えてもらう事も多いと思いますし」

マリアのような薫達より下の年ならあまり抵抗はないけど…

どう見ても陽子さんの実年齢に近そうな…50は過ぎているであろう…ヨハンナを呼び捨てにするのは、慣れない…。

「…もったいないことでございます」

「ありがとう。では私の侍女のマリアを紹介しますね」

マリアは一歩進み出ると「マリア・ウェーバーと申します。アデライーデ様付を仰せつかっております。以後、よろしくお願いします」と挨拶をした。

マイヤー夫人も「こちらこそ、よろしくお願いします」と挨拶を返す。

メイド達を統べる女官長とマリアの様な侍女は、上下関係ではなく対等になるらしい。

対面が終わったところでマイヤー夫人がアデライーデにお伺いをたてた。

「お茶のご用意をいたしましょうか?それともお風呂を先にいたしましょうか?」

「そうね。少しゆっくりしたいからお茶をいただいてからお風呂にします」

「承知いたしました。ではマリア様、給湯室のご説明をいたします」

マリアはマイヤー夫人から施設の説明を受けるために連れられて行く。

アデライーデが、窓から庭を眺めると植え替えをしたばかりといった庭が見えた。きっとアデライーデの為にガーディナー達が頑張ったのであろう。

しばらくすると、マリアが続き部屋から戻ってきた。

キッチンとお風呂とレストルームの使用方法の説明を受け確認をしてきたらしい。

「お風呂とレストルームは新しいものでした。お輿入れに合わせて改装された様子ですわ」

マリアは感心していた。

「それに…続き部屋には事前に届けられていた細々した日用品が収められていました。ちゃんと目録付きで何処にあるのかもかかれていて…マイヤー夫人って仕事が丁寧で…見習わないといけないですね」

そう話していたら3人のメイド達がティーワゴンでお茶を運んできた。

「ねぇ、マリア。貴女も座って」

「いえ!とんでもございません。アデライーデ様と同席するなど…」

「ね。お願い」

アデライーデは、胸の前で手を組みあざとかわいい攻撃を繰り出す。

「む……ふぅ… はい……」

「ね、ここよ」

ソファの横を指定し、妙な緊張しているマリアを座らせる。

そして、さっきからことの成り行きを見て固まっているメイド達にふたり分のお茶をお願いするとメイド達は、丁寧にお茶を入れ二人の前にティーカップを置いた。

メイド達は紅茶を出すと、そっとティーワゴンの脇に控えた。

そして、目をうっすら閉じ耳に集中する…

「マリア、ここまで付いてきてくれて本当にありがとう。とっても嬉しかったわ。でもね、もし少しでも後悔したりしているなら今からでも遅くないのよ」

「何をおっしゃっているんですか。ずっとお仕えしますと申し上げたではありませんか」

「ありがとう。じゃあね、お願いがあるの」

「………手を前で組まないでください…」

「え?だめなの?」

「はい…何でもはいと言いそうになるので…」

「聞いてもらえるなら、手を組んだ方が……」

「……こほん! お願いとは何でしょうか?」

マリアは咳払いをし、アデライーデが手を組むのを阻止した。

「もうここは帝国じゃないのよ。一緒にお食事をしたりお茶をしたりしたいわ」

「アデライーデ様は、ご結婚なさるのですよ。アルヘルム様とこれからお食事やお茶をされると思いますが…」

「もちろん、そうだと思うけどお忙しい事もあると思うの。そんな時は1人より2人でのお茶や食事の方が楽しいとおもうわ。ね?お願い」

--そう…陛下達と食事をして気がついたわ。

美味しい食事だけど…1人での食事よりおしゃべりしながらの食事の方が美味しいって事を思い出したわ。

それに…マリアはいつ食事しているんだろうって思っていたのよね。

侍女の食事は基本、毒味を兼ねて主のものと同じものを事前に食べる。

アデライーデ1人分でも数人分と多めに運ばれてくるので、支度前に一口ずつ全種類毒味をし、お片付けの合間や自室に戻ってから自分の食事を口にしていたのだ。

「でも、そうしたらアデライーデ様のお食事のお世話は…」

「メイドさん達にお願いできないかしら…」

そう言われて、メイド達がビクリと顔を上げる。

「私には、彼女たちの指揮権はありませんので後でマイヤー夫人に相談してみますね」

「そうね。マイヤー夫人に相談するのがいいわね。もしそうなったら、皆さん、よろしくね」

アデライーデがメイド達ににっこり微笑むと、メイド達はおずおずとスカートをつまみお辞儀をした。

「じゃ、マリアとの初めてのお茶会を始めましょうか」

「緊張しますわ」

「すぐに慣れるわよ。お茶を飲むだけですもの」

出された紅茶には、砂糖と蜂蜜が添えられている。

アデライーデは蜂蜜を手に取り、マリアに勧めた。

「この国のお茶はお砂糖より、蜂蜜があって美味しかったわ。マリアも蜂蜜を入れて飲んでみて」

「さようでございますか?蜂蜜を入れるのは初めてです」

マリアは、渡された蜂蜜の入っている片口を受け取りティーカップに注ぐと紅茶に口をつけた。

「本当に美味しいですわ。砂糖とはまた違った味わいですのね」

「ね。お父様達にもお手紙で勧めてみるわ」

マリアとの初めてのお茶会はメイド達に見守られつつ、耳をダンボにされつつ和やかに過ぎていった。