軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

331 祝いの品とレナード

「ねぇ、レナード。コーエン達の婚約式にお菓子を贈るのはいいかしら」

コーエンに小箱のお礼を言って先にアメリーのもとに返したあと、アデライーデはレナードに祝い品の相談を口にした。

「お菓子でございますか?」

「ええ、アルトに頼んで作ってもらおうかと思うんだけど…」

「よろしいのではないでしょうか。本来お互いの家が用意するものですが、アメリー嬢はこちらに血縁がなく菓子店に頼むと、先程おっしゃっていらしたので問題ないかと」

「良かったわ。アルトと相談するわ。あとね。結婚のお祝いなんだけど、ドレスの生地を一着分贈るのはどうかしら?」

「ドレスの生地ですか?」

「ええ、皇后様から贈られた物が沢山あるんだけど、そのうちの一つをお祝いにしようかと思うの」

皇后様からの御下賜品を下げ渡す。それ自体憚られることではない。

正妃から名誉男爵夫人への祝いの品としては過分すぎるとは思うが、将来二国の貴族となり活躍が期待されるシリングス卿の夫人に贈るのは先々の事を考えたら良い事だとレナードは判断した。

「よろしいかと。ただアデライーデ様もこれを機に数着、皇后様の贈り物からお仕立てになれば、なお一層よろしいかと思います」

「え?…」ドキリ

「贈られてからお仕立てなさってませんよね?」

「……………、…はぃ……」

「贈られた皇后様は、アデライーデ様が御召しになるのを楽しみにしてらっしゃると思いますが?」

「…………。ソウデスネ」

「では、テレサ様よりドレスのデザイナーをご紹介頂くよう手配しておきましょう」

「ハイ、ヨロシクオネガイシマス」

解せぬ。アメリーへの祝いなのに、自分もお仕立てせねばならぬとは…。でも、レナードのいう事ももっともではある。

アルヘルムからも、秋から毎月のようにドレスが贈られてくる。夜会に着ていくようなものではなく普段着のドレスであるが、そのドレスを着るのももったいない気がしている。ちゃんと着てはいるが…。

--体はひとつなのよ?

前世でも毎月服を買ってなかったわよ? 帝国から持ち込んだドレスも、まだまだ袖を通してない物もたくさんあるっていうのに。

しかし、アルヘルムに夫として贈らせて欲しいと言われたら断れない。それに、ドレスを定期的に作ることで流行を生み、産業を発展させるとは聞いてはいるが、自分は離宮に引きこもりである。頭ではわかっていても、気持ちがついていかない。

--とりあえず、ここは頷いてやり過ごすべきね。あとはなんとか誤魔化そう。

気を取り直して元の客間に戻ると、マリア達の興奮はまだ収まってなかったようで、コーエンを囲んで話に花が咲いていた。

「アデライーデ様、お聞きになりました? 披露宴は帝国でもバルクでも『瑠璃とクリスタル』で行われるそうですよ!」

「えぇ。マリア、さっき聞いたわ。素敵な披露宴になりそうね」

「絶対、素敵ですわ! 帝国でもそうですが、メラニア様が取り仕切られた『瑠璃とクリスタル』ですもの。今王宮でも貴族の間でもすごく話題なのですよ」

「今、国中の貴族家を順番にご招待しているそうですが、お披露目のご招待が終わったら、多分予約が取れないんじゃないかと言われてるんです」

「そこで披露宴なんて……、みんなが知ったらすごい事になりますわ」

「ねーー!」

マリア達の興奮は収まるところを知らないようだ。

「ところで、お祝いなんだけど。私からはアメリーのドレスの生地を贈らせて欲しいの。私の持っている物の中から好きなのを選ぶと良いわ。それに婚約式を村で行うなら、その時のお菓子やお料理ははこちらで用意させてね」

「「「え…」」」

しーーーん。

--え?

思いがけないみんなの反応に、アデライーデの方が面食らっていると、アメリーが恐れ多いといった顔で呟いた。

「そんな…お菓子をご用意頂くだけで身に余る光栄ですわ。その上アデライーデ様がお持ちの生地だなんて…。私には過ぎたものです」

「レナードからも良いって言われたわ。たくさんあるのだし、好きな生地で好きなドレスに仕立てて欲しいの。今からみんなで選ぶと良いわ」

「いえ…」

アメリーが遠慮の言葉を口にすると、レナードがこほんと咳払いをして会話に入ってきた。

「ノイラート嬢。せっかくのアデライーデ様の思し召しですのでご遠慮なさらずに。それに、アデライーデ様もこの機に、ドレスを数着お仕立てされるそうなので、ご一緒に選ばれるのもよろしいかと」

レナードが間髪入れず、差し込んでくる。

--むぅ…。今、それを言う?今の主役はアメリーなのよ!

余計な事をいうなとばかりに横目でレナードを軽く睨んだが、レナードは涼しい顔で言葉を続けた。

「マリア殿、確かアデライーデ様の夏のドレスは、まだバルクでお仕立てされてなかったですな?」

「ええ! ええ! 春も夏も!一着もですわ!」

事の成り行きをぽかんとした顔で見ていたマリアは、レナードの思惑を一瞬で理解しアデライーデに追い討ちをかける。

「私のお仕立ては、いつでも…」

「ご一緒に選ばれると、ノイラート嬢も少しは気楽に選ばれるのでは?」

--ぐぬぬぬぅ

去年の夏は暑いという理由で、庶民の服で通した 仇(かたき) をここで討たれてしまった。

レナードは、先程仕立ての約束したがアデライーデの事なので、のらりくらりと逃げるだろうと予測しマリアを抱き込んで先手を打ったのだ。

「アデライーデ様のお仕立てとご一緒になんて、一生の記念ですわね。アメリー様」

「ええ、滅多にない思い出になりますわ。アメリー様」

エマ達も激しい援護射撃をしてくる。

--くぅーー

「そ…それであれば、アデライーデ様のお仕立てのついで…ということであれば。謹んで頂きたいと思います」

顔を真赤にして礼をいうアメリーに、周りはニヤリと笑った。