軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

169 ハンサムな給仕と戦略会議

「こちらが、魚醤課のグスタフが持って帰ってきたオイルサーディンの瓶詰めです」

魚醤課のグスタフから報告書付きでアルヘルムのところまできた瓶詰めは、コルク栓の上から蝋を垂らして密封してあった。

握りこぶしくらいの大きさの透明な小瓶を手にとって見ると、鰯のフィレがスライスしたにんにくと赤唐辛子と一緒に食用油に漬けられていた。

ナッサウが、テーブルの横のワゴンでナイフを使い封を開け白いプレートにフィレを2つ乗せて、アルヘルムとタクシスの前に置いた。

アルヘルムは、フォークを手に取りオイルサーディンを口にすると「ふむ…」とタクシスに言う。

続けてナッサウは、一口大のガーリックトーストにオイルサーディンを載せたものと、庶民がよく食べるスライスした黒パンにスライスオニオンとオイルサーディンを乗せた皿を出してきた。

「うむ…美味い。ワインが欲しくなるな」

アルヘルムがそう言うのをわかっていたかのように、ナッサウはグラスを出し、ワインを注いだ。

「この魚はあまり食べた事がないが、庶民はよく口にするのか?」

「そうだな。報告書ではよく取れる魚だが傷みが早くメーアブルグ以外では塩漬け以外では食べられてないようだ。名前は鰯だ。価格も安い」

−−この魚がアルトの言っていた鰯か…。魚醤の材料だったな。

バルクでも庶民は比較的魚はよく食べられているようだが、メーアブルグ以外は塩漬けの魚が食べられていて、人気は白身魚の塩漬けだ。塩漬けにされた魚は樽に詰められて売られてその樽ごと魚屋の前に置かれると言う。

「作り方自体はさほど難しくはないようだ。これなら、加工場を作ればすぐに出荷できるな」

「そうだな…。瓶詰めなら保存も効くし輸出もできるだろう」

「アデライーデが今、このオイルサーディンを使った料理のレシピを帝国から呼んだ挿し絵画家に作らせているそうだ」

「帝国に出した商会は貴族街の中にあったな」

「あぁ、端の方だがな」

「そこで、食堂を作って料理を出せないかと書かれている。あんてなしょっぷ……?と言う名前の売り方らしい。店の一角でオイルサーディンや蜂蜜の瓶詰めを買えるようにすれば、食事を気に入った客が買って帰れるだろうとある」

この世界、食堂は食堂。商店は商店で別物だ。一緒にしたような売り方をするのは聞いたこともない。

「炭酸水の代わりに、秋からの輸出に間に合わせられると良いのだが…。くっ!もう少し早ければ…いや…まだ間に合うか…。いっそどこかの店を買い取って改装した方が早いか…。責任者は誰に…。」

タクシスがぶつぶつ言い始めた。

考え事をしているせいか、ワインを口にする速度が早い。オイルサーディンの瓶詰めは2つめが開けられていた。

「あと、カフェを別に作れるかともあるな。店の内装や食器は女性好みにして、そこの給仕には若いハンサムな男を入れろとある…。顔はバリエーションを持たせて…???」

「買取だな…。今から食堂とカフェを2軒も無理だ。1階はカフェで2階が食堂だ」

「しかし人材はどうする。給仕は帝国で集めるとして、束ねる者はバルクの人間でないと困る。それに料理人はバルクから出さねば…」

「陛下。よろしいでしょうか」

今まで黙って給仕をしてきたナッサウが、アルヘルムに発言してもいいかと許可を求めてきた。

「ナッサウ、何かあるか」

「帝国での食堂とカフェの給仕長には王宮の給仕の中から出しましょう。バルクの名を冠するのですからそれなりの者を選びませんと…。料理人も料理長にお申し付けになれば妥当な者を選んでくれましょう」

「うむ…それで良いのか」

「もちろんでございます。それに帝国で、アデライーデ様の嫁ぎ先であるバルクが醜態を晒す訳には参りませんから」

「うむ、人選は料理長とお前に任せよう」

「ありがとうございます」

「ところで、タクシス。ガラスの方はどうなった」

「やはりまだグラスには難しいようだな。形にはなってるらしいが、納得のいくものができないようだ。しかし、その代わりにシャンデリアの方は見通しが立ちそうだ。宝石職人達が頑張って小型のサンプルを作っている。もう少しすれば完成らしい」

「完成すれば、先ずは離宮に運んでくれ。アデライーデに見せてやりたい」

「そうだな。なんと言っても宝飾ガラスの生みの親だからな。」

「まだ成年前なのだから、その言い方はどうかな」

アルヘルムは苦笑しながら黒パンとオイルサーディンを頬張った。

「そうか?多産で喜ばしい事だぞ。お陰で屋敷に帰れないくらい忙しいがな」

「しょうがないな。シャンデリアが出来たらお前の屋敷に付けるといい。メラニアが喜ぶだろう。特別に無料だ」

「それはうちで、シャンデリアの披露をしろということか?」

「無料だからな」

アルヘルムはにやりと笑った。

タクシスの屋敷に先につけさせ、貴族達に披露させ購買意欲を刺激するつもりらしい。メラニアは宰相夫人として社交界に顔が広く知られている。その人脈を使って披露すれば、またたく間にシャンデリアは広がるはずだ。

「王宮にはどうするんだ」

「最初は、貴賓室や謁見室からだな。大型のものができたら大広間につけよう。だが先に小型のものを帝国のカフェにもつけようか。いい宣伝になるしな」

「やれやれ、当面は夜会続きだな。3交代の職人達が羨ましいよ」

そう言うと、アルヘルムとタクシスはナプキンで口をふき執務室へ戻って行った。