軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 パンパカパーン

パンパカパーン!

ヒューゴが斜めに傾いた毛玉を見て、その間の抜けた姿に愛を叫んだ(心の中で)しばらく後……。

ミーヤの頭の中に、どこかで聞いたような安っぽいファンファーレが鳴り響いた。

(なに、この音……ラッパ?)

続いて無機質な声が聞こえる。

《愛されポイントが貯まりました。何を生やしますか?》

(は、生やす? 愛されポイント?)

全く意味がわからない。

植物魔法が覚醒したのだろうか? 自分は魔法生物だったのだろうか?

* * *

物心ついた頃からミーヤは自分の正体がわからなくて、身の振り方に迷いがあった。

森の中には同族の一匹も見当たらないし、親毛玉や兄弟毛玉の記憶もない。

それは自分が、かつて人間だったことを思い出した今も変わらなかった。元人間。元小学生女子……では、今は?

転生するのも、時々人間の姿になるのも、それが普通なのかどうかわからない。動物に転生した元人間は、みんな時々人間になるのだろうか?

だが、魔法が使えるのは魅力的だと感じた。植物魔法ならば、おいしい果物や野菜を生やし放題だ。

(お、お花……?)

ミーヤは頭の中に聞こえた質問に対し、恐る恐る、そう答えてみた。ここは慎重になるべき場面だ。

なるべく無難で、毒にも薬にもならない黄色い小さな花を思い浮かべた。花の名前は知らない。

《どこに生やしますか? 選択して下さい》

身体の近くの地面を意識して「このへん?」と答える。ミーヤは毛玉なので「足もと」は存在しない。

何が起きるのかドキドキしながら待つ。ワクワクもする。本当に花が生えるのだろうか?

《地面に生やすことは出来ません。身体の部位で選択して下さい》

(身体に生やすものだった! お花ダメじゃん! 尻尾とか 角(ツノ) とか爪とか、そういうのだった!)

それならちゃんと説明して欲しい。ミーヤは理不尽さを感じながらも律儀に答える。

(えっ、あの! じゃあ、尻尾! 尻尾でお願いします!)

《選択の変更はできません》

理不尽だ。理不尽な上に融通が効かない。今でさえ正体不明の毛玉なのに、この上身体に花を生やして、どうしろと言うのだ。

(生やさなくて良いです!)

切実に、そう答える。そもそもこの声はなんなのだろう。……神さま?

《選択処理済みです。取り消しはできません》

ミーヤはよく説明を聞きもせずに答えたことを後悔した。

(……じゃあ、頭で良いです!)

ミーヤはさめざめと泣きながら、半ギレで答えた。どうせなら美味しい果物にすれば良かったとも思ったが、この小さな毛玉の身で頭に木が生えたら、身動きが出来なくなるだけでなく、養分になって干からびてしまう。

しばらく待つとポンッと間の抜けた音がして、頭のてっぺんに黄色い小さな花が咲いた。

水溜まりに自分の姿を映して、がっくりと肩を落とす。ミーヤはまん丸い毛玉なので、どこが肩なのかは自分でもわからないのだけれど。

まん丸い茶色い毛並みから、チョロリと茎が伸び、黄色い五枚の花びらが正面を向いて咲いている。根元には二枚の葉っぱ。子供が落書きで書きそうな花だ。森でも街でも道端でも、至るところに生えている。

どう見ても生存競争に勝てそうもない姿だ。迫力のカケラもない。もちろん花は何の役にも立たない。

ミーヤがすっかり途方に暮れていると、背後からガサリと枯れ葉を踏む音がした。

ピョンと跳ねて毛を逆立てて振り返ると、大きな手で口元を覆ったヒューゴが、タラリと鼻血を出して立っていた。

(へーか! 帰ったと思ってたのに、見ていたの?!)

ミーヤはまたガクガクと震えた。こんな変な生き物は、危険とみなされて討伐されてしまうかもしれない。

だが、ヒューゴは鼻血をキリリとした顔で、ワイルドに袖口で拭いながら言った。

「くっ……頭に花が……! しかも“ポンッ”と鳴ったぞ……っ。……いかん……笑うな……。くっ……なんて愛らしいんだ……」

笑いを堪えすぎて鼻血が出ている。真顔なのがちょっと怖い。

途端にさっき聞いたばかりのファンファーレが、再び大音量で鳴り響いた。

《愛されポイントが貯まりました》

ミーヤは瞬時に理解した。

(愛されポイント……! へーかがくれたんだ!)

ペットやモンスターのお世話したり、餌をあげたりして親密度を上げる。それが一定の数値に達すると、懐いてくれたり甘えてくれたりと、行動が変化する。たくさん構ってあげると成長したり、進化したりして姿が変わる。

ミーヤは、そんなゲームに心あたりがあった。

(わたし、へーかに育成されてる……?)

もしかして、この世界はペット育成ゲームなの? わたし、ゲーム転生しちゃったの……?!