軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3. 属性

それにしても、エターナルガーデンねぇ……あったかなぁそんなの。

うーん、攻略対象が義理の兄達……

……

あっ。

「しきにわ!!」

「え?」

「さぶタイトルのほうでおぼえてた!」

エターナルガーデン〜四季の庭で貴方と始める物語〜。

確かに 主人公(ヒロイン) の設定が第六王女とおんなじだわ!

名前は自分で入力するやつだけど、デフォルト名がルイーゼだったかも。

「ランべるとも、おとめゲームやるんだ」

「いや、僕は漫画を読んだだけ。完結はしてなかったから結末は知らないんだ」

それで私と結婚して物語をぶっ壊そうとしたのかー。

「話の中でヒロインは継母である王妃に辛く当たられてて、対象者達はそれを良く思ってなくて。……多分展開的に王妃は断罪されるか何かだと思うんだけど、僕は母にそんな目に遭ってほしくない。だって母は厳しい事も言うけど、そんな悪質な人じゃないし。だけど、物語の強制力が怖いんだ。母の性格がねじ曲げられたり、僕らの感情すらあの女に向くようになったら、って思うと恐怖しかない」

自分の感情が操られたりとか、思ってない言葉が自分の口からでたりするとか……

まるで演じるだけのキャラクターの中に入ってるみたいな感覚なのかな。

そんな自分が自分じゃなくなる感覚は、恐怖という言葉だけで簡単に表現出来ないはずだ。

自分の心を塗り替えられる、違う自分になる、そんなのはもう、死と同じ。

王妃様だって、そんなんじゃあ心を病んでも仕方ない。

四季の庭はノベルゲームだ。

前世の記憶だから細かい選択肢なんて覚えてないけど、今から選ぶ未来でシナリオから逸脱する事は出来る。

ただ、中身が成人してても私達はまだ子供。

大人の協力無しにはルートをぶっ壊す事は出来ない。

「……きょーりょくしゃがしつようね」

目をキラーンと光らせて言う。

ふふふ。なかなか悪女っぽいのでは?

そう思ってるのにランベルトは「かわいいがすぎるんだけど」って抱き着いて頬ずりしてくる。解せぬ。

「いや!おとめのていしょうのききだわ!」

「何?貞操のこと?いいよ、僕達どうせ結婚するんだし」

「いくなーい!はなっ、てっ!」

ええーい!

この万年発情王子め!!

顔を両手でぐいーっと押しやってるのに、悲しいかな5歳児の力ではどこ吹く風。ハハッと爽やかに笑うだけで私を抱きしめる腕は離れない。

いつの間に隣に来てたんだ。

「ふんぬぅ〜〜!」

「ちなみに泣いて人を呼ぼうとしたら口、塞ぐからねー?」

人差し指で唇をなぞられる。

そんなのイケメンしか許されない技…!

この王子、私を殺しにかかってるな?!

リアルで壁ドンすらされた事ない私に反撃する術はない。

どうしたらいいの、お母様…!

「うゔぁ…ら、ベルとぉ、やだぁ、やさしく、してよぅ……」

いくら中身にアラサーの記憶があっても、身体年齢に釣られて子供の感覚が強い。絶対的強者に対して悔しさにホロホロと泣けてくる。

「!!わ、わわわっ、かわ、いやっ!ゴメン!ごめんね?!辛い?苦しい?もうしないから!ね?」

ただ慰める為だけの優しい手。

頭をヨシヨシ撫でてくれる手はそんなに大きくないのに安心する。まぁ8歳だし。

はぁ……気持ちいい。

ねむ……

「らんべると…だっこ…」

「うん。いいよ」

チョロいと言うなかれ。

くすり、と笑われたような気がしたけど、目が8割方閉じてる私に確認するのは無理ってもんよ。

3つしか離れてないのに軽々と持ち上げられて膝に乗せられる。

え…なに……これは!

抱っこ、最高じゃない?

幼女に戻って何が良いかって、この抱っこだよ!

子供が何で抱っこをせがむか分かった気がする…!!これは気持ち良すぎ!

8歳の少年に抱っこさせて微睡む5歳児は尊さしかないのだろう、お兄ちゃんズが様子を見に来るまで私達は使用人達に遠目で見守られていた。

………ぅ……ぃ…

……リィ…

うーん……

何か遠くで聞こえる……ような……気がする……

でもまだ眠いんで寝かせて。

「おーい、マリエッタ。起きろー。そろそろ昼メシだぞー」

「んぅ……」

うう…まだ寝るんだってば…でもご飯…

睡眠を取るか、食欲を取るか。

どちらも三大欲求なので甲乙つけ難い。

「お前なー。殿下を枕にしてよくそこまで寝られるな。心臓強すぎじゃないか?」

えー?

殿下??

ようやく何とか目を開ければ、エル兄様と第三王子のフェルナン様に見下ろされていた。

キラキライケメン王子様だけど、この人も腹黒系なんだろうか。大変だなお兄様。

「マリィ、駄目だよ?いくら兄上がイケメンでもそんなに見つめないで」

起こされた私はランベルトにぎゅ〜っとされる。えーやだ…嫉妬?可愛いとこあるじゃん。

「ちがう。マリィはランベルトのおかおのほうがこのみ」

「!」

「え」

「ブフォッ」

うーん。

難しい言い回しは口がまわらないからなぁ。この言い方だと失礼すぎるよねー。

「ちょっと、エルドアン?そこ笑う所?」

「いやー、学園であんなにモテモテのフェルナン様が、ふ、ふらっ、振られるなん、っ……ぶわははははは!」

笑いが止まらないお兄様に、第三王子がゲンコツをこめかみに当てて笑顔でグリグリしてる。わぁ、痛そー。

「ランのほうがおめめのあお、こくてキレイなの。きらきらのおほしさま、みえる」

ランベルトの瞳もフェルナン様も同じ青なんだけど、ランベルトの方が色が濃い。フェルナン様はちょっと緑がかった青なのよね。

あと、ランベルトの瞳を覗き込むと吸い込まれるような、宇宙というか、星空みたいな光が見えるんだ。それが好き。

「へ〜!マリエッタ嬢には〝星の光〟が見えるんだ?」

な に そ の パ ワ ー ワ ー ド 。

びっくりしてランベルトを見れば彼も知らなかったのか首を横に振っている。

本人が知らないって、物語に関わりあるの?

それとも、後半に出てくる重要案件?!

「なんかね、うちの王族って先祖に竜がいたらしくてさ。竜ってほら、執着が強くて宝物を大事にするって言うでしょ?それが運命の相手が見つかると、瞳にキラキラした光が浮かび上がって番だって教えてくれるみたい」

「運命ってホントですか!?僕と、マリエッタが?!」

食い気味に第三王子に尋ねるランベルト。勿論マリィちゃんの手はしっかり握られていますとも。

「父様も瞳に星があるでしょ?あれは、母様と出逢った時かららしいよ。まぁ父様曰く、運命というか、自分の心がコレと決めた相手に対してそうなるんだ、って事らしいんだけ―――って、聞いてるの?ラン」

いえ、途中から私のほっぺにちゅっちゅしまくってて聞いてないと思います。

私はチベットスナギツネみたいな顔でこの状況を甘んじて受けてる訳ですが、そろそろ止めてもらえませんかね…?

「そっかぁ。ふふ、僕の唯一なんだ。マリィは僕の番なんだって。でも誰かに盗られないように印をつけたり出来ないかなぁ。うーん」

怖い事言ってるし。

てか竜って。

昨日のお友達会、大人しく会場にいて壁の花になっとけば良かった…何で途中退場とか目立つ真似をしたかなぁ私。

ヤブをつついて蛇が出るんじゃなくて、まさかの 王族(竜) とは。

しかも竜って、番第一主義だし獲物に対して執着強いし宝物は大事大事にねぐらに隠してるとかいう、小説でオイシイ設定の生き物じゃない?

この世界でも適応してる?

四季の庭(シキニワ) 、何ルートやってたかなぁ?

……あれ?

私ってば、何か恋愛ルートじゃなく何でか第二王女の話に進んでいた気がするぞ。

百合ルートじゃなく、確か第二王女も本当は王弟の子供だった、って話で、確かここが唯一平和な終わり方だったし、第六王女も救われてた気がする。 真の結末(トゥルーエンド) ってやつね。

でも、そこでも竜やら星の光とかは出て来なかったはずだけどなー?

「キャサリンとルイーゼのしまいえんどか…」

何の気なしに呟いた言葉に反応したのはランベルトとフェルナン様だった。

途端にピリつく空気に、失言した事に気付くが後の祭り。

フェルナン様がエル兄様に目配せすると、兄様は手でサッと合図して使用人を下がらせる。殿下達がいるから全く無人にはならないけど(兄の他にも護衛さんいるし)、会話が聞こえない位には離れてもらったようだ。

「ランから聞いた―――訳じゃ無さそうだね。何故二人が姉妹だと?」

ひっ!

ニコニコしてるけど目が笑ってない!

やっぱり腹黒系だ!!

知らず震える手でランベルトの服をギュッと掴む。

実は私には前世の記憶があって、その世界ではこちらがゲームの世界になっていて、そのシナリオの中で二人は異母姉妹だと分かるんですよ〜はぁと。

―――なんて言えるわけないでしょおおぉぉぉ?!

マジで泣いちゃう1分前。

圧に屈しそうな私は、頼れるのは貴方だけ♡(はぁと)な感じでランベルトにひっついた。

「あ〜、そうだ。うん、僕が言っちゃったかも?マリィは賢いから、僕がペロッと言っちゃった事、覚えてたんだよね。ゴメンね、兄上が怖い事して」

頭にいっぱいちゅっちゅされてるけど、今を逃れられるなら何でも耐えられる!

あ、でももうちょっと加減して下さい。

兄のこっちを見る目が死んでるんで。

「ラン……それは流石に無理があるよ、っていうか、甘やかし過ぎじゃあ………マリエッタ嬢はそれでいいのかい?……あーはい、分かった、分かったから止めてあげて彼女が昇天しそう」

フェルナン様の指示でエル兄様によって強制的にランベルトから離された私は、ようやっと息をつくことが出来た。

「……しょうがない。マリエッタ嬢はランの〝星〟だとして、その他の事は今は置いておこう」

そう聞いてあからさまにホッとした私を見て、フェルナン様は意地悪そうな微笑みを浮かべる。

何ですかその悪人顔は。

マリィちゃんは何も知らないってば!

「ただ、この件は両親に報告しなきゃいけないから王宮に行くよ?」

帰る(・・) 、じゃなく、 行く(・・) 、ですか。

私にもついて来い、って事ですね……

絶望に染まる私の顔を見て満足するフェルナン様。

そんな私を心配して「大丈夫だからね?」と手を握ってくれるランベルト。

嗚呼……どSな腹黒は 第三王子(そっち) でしたか……

攻略対象の属性が被る訳無かった!