作品タイトル不明
第21話 手を尽くしてみました
変化はすぐに訪れる。
あれほど牛モンスターに反応しなかった鑑定スキルだったのに、すぐさま牛モンスターに重なるように文字列が表示されていく。
『邪視スキル:クリムゾンベヒーモスを魅了中。魅了達成率2/100』
俺がその文字列を見つめる間にもじりじりと魅了達成率なる数値が増えていく。
「……魅了っ!? え、邪視って、攻撃スキルじゃないのかっ」
これは、完全に想定外だった。
邪視スキルは、てっきり攻撃か、せめて何か牛モンスターの妨害になる効果があるのではと、俺は期待していたのだ。
もちろん魅了でも、数値が100になれば牛モンスターはきっと攻撃を止めてくれそうではある。
たがしかし、それでは遅すぎるのだ。
アビちゃんの体は、今にも支配領域から押し出されてしまいそうなのだから。
今のままでは、絶対に魅了達成率の数字が100になるのは間に合わない。
──どうする。どうしたらいい? 魅了とやらをこれ以上続けるより、何か他の手を考えるか? いや、でも、他に何が……
牛モンスターもとい、クリムゾンベヒーモスというご大層な名前のモンスターの姿から一切視線を外さないよう、必死に覗き込みながら、俺は考え続ける。
──あ、もう一つだけ、出来ることがあるっ!
幸いなのかはわからないが、クリムゾンベヒーモスはもうその体の半分が俺の支配領域へと入りかけている。
たから、そのクリムゾンベヒーモスから目を離すことなく、それが可能だったのだ。
アビちゃんとクリムゾンベヒーモスがせめぎ合う、俺の支配領域に被さるように、新たな文字列が深淵を覗き込む俺の左目に映る。
『アクセス可能支配領域です。システムへの干渉を実行しますか。
《実行可能な干渉》
・支配領域拡張 綻びポイント【1】
・支配領域深化 綻びポイント【1】
・支配領域特性付与(強化) 綻びポイント【1】
・支配領域特性付与(弱化) 綻びポイント【1】
保有綻びポイント【1】』
そう、システムへのアクセスキーたるウロボロスリング。そこに綻びポイントが1、残っていたのだ。
──予想通りだっ! 支配領域にさらに干渉出来る。選択肢は、四つ……拡張ってのが無難そうだけど、それでどれぐらい広がるかで間に合うか決まってしまう──。深化というのはよくわからないな。特性付与ってのは強化と弱化があるのか。
ただもう、悠長に考える時間は残っていなかった。もうあと数秒でアビちゃんは完全に支配領域から押し出されてしまうだろう。
俺は完全に勘で選択すると、祈りを込めるようにして叫ぶのだった。
「──支配領域特性付与(弱化)、実行! 」