作品タイトル不明
キャロラインの告白②
「私はルームーン国にある、名前が知れ渡った名家に生まれたの」
ルームーン国での名のある名家――サーベルト大公家である。
王族で継承権第二位以下(第一位未満)の者達の大半が、その家名を名乗ると以前ジルヴィードが話していた。
ただ彼女は、この場でどこの家の出身であるかは口にしなかった。
「父は爵位を継承する長男ではなく、次男。恩恵はないに等しかったわ」
貴族の継承権は残酷なもので、爵位や財産を引き継げるのは長男だけなのだ。
次男以下は長男に何かあったときのための 予備(スペア) として扱われ、成人後は実家の支援などなく、自分で身を立てないといけない。
「私はいつも父が惨めに思えてならなかった」
そして自身も、長男を父親に持つ者との〝格差〟を感じていたという。
「ドレスに装身具、取り巻きにいたるまで、従姉妹とは天と地ほども扱いに差があったの」
このままでは父親と同じように、王族や貴族としての恩恵を得られないまま、見るに忍びない哀れな生活を送ることとなる。
常々キャロラインは思っていたという。
絶対に、ああはなりたくない。
幸いにも、次男以下に生まれてすぐにどん詰まりとなる男とは違い、キャロラインは女性だった。
家柄がよく、継承権を持つ長男に嫁いだら、惨めな思いをしなくても済む。
いい結婚相手を探すためには、父親に任せてはいけない。
自分でなんとかしなくては。
覚悟を決め、頼った相手はキャロラインの伯父サーベルト大公だった。
「伯父は私の不安な気持ちとやるせない感情を、理解してくれた。伯父も、同じだったから、と」
サーベルト大公という座に納まっていても、無念に思うことがあったという。
「伯父は次男だったの。長男に生まれたら今の地位より、もっと高みにいけたかもしれない……」
サーベルト大公の高みというのは、ルームーン国の玉座に違いない。
「伯父は、これから言うことを遂行したら、すばらしい縁談をもたらしてくれると言ったわ」
サーベルト大公はある計画を語った。
「隣国ソレーユ国の高い地位にあるお方に輿入れすることになった従姉の侍女として、同行するように命じられたわ」
キャロラインの言う従姉というのは王女アルテミスのことだろう。
地位のあるお方は国王陛下に違いない。
サーベルト大公が口にした計画というのは、ゾッとするほど恐ろしいものだった。
「伯父はこの国を侵攻したあと、その子を傀儡とし、摂政の座に納まるつもりだったみたい」
ジルヴィードが必死になって〝キャロラインの子〟を探していたのは、傀儡として利用するためだったようだ。
「ただ、計画を実行する前に、ありえない事態が起きたの」
それはサーベルト大公をも想像していなかったことのようだ。