作品タイトル不明
ミシャの祝福
「少し落ち着いたほうがよいかと。わたくしめが紅茶をお淹れしますね」
「いえ、私が……」
「大丈夫。顔色がとても悪いので、座っていてくださいね」
ヴィルに話しかけないよう、紅茶を淹れる作業を手伝うように頼んだ。
「ルシーお嬢様、一緒に紅茶を淹れましょう」
「そんな、お嬢様に淹れてもらうなんて悪いわ」
「いいえ、大丈夫です。ルシーお嬢様はお母様へ、よく紅茶を淹れていたのですよ。今はもう叶わなくて……ううっ!」
泣き真似まですれば、それ以上キャロラインが止めることはなかった。
部屋の隅には紅茶を淹れるための茶器が置かれたワゴンがある。
そこにある茶器はなんだか怪しい。
睡眠薬を盛られた前科があるので信用ならない。
鑑定で調べてみたところ、ここにある茶器はなんの仕掛けもないもののようだ。
ヴィルも確認したようで、大丈夫だと言わんばかりにこくりと頷いている。
魔石ポットでお湯を沸かし、茶葉をポットに入れて湯を注ぐ。
茶葉が開くのを待つ間、カップに湯を注いで温めておく。
こうすることによって、注いだ紅茶が冷えるのを防止し、最後までおいしくいただけるのだ。
私の祝福を確実に付与させるために、ヴィルは手を動かす振りをして、実際は何もしていない。
手伝う振りがとても上手だった。
蒸らす時間が終わったので、紅茶をカップに注ぐ。
鑑定で確認したら、しっかり私の祝福が付与されていた。
「お待たせしました」
「え、ええ、ありがとう」
ヴィルが運び、キャロラインへソーサーごとカップを手渡す。
「ああ、ルシーお嬢様、よかったですねえ。お母様との思い出が、甦りますねえ」
ここで飲まないと許さない。そんな感情を込めつつ、ハンカチで涙を拭う振りをする。
ヴィルがにこにこしながらキャロラインを見つめていた。
双方からの圧力に抗えなかったからか、キャロラインは紅茶を飲んでくれた。
「まあ、おいしい! ルシーさんと言ったかしら。あなた、紅茶を淹れるのが上手なのね」
「ええ、ええ、そうなんです! ルシーお嬢様は光栄だとおっしゃっています」
キャロラインは喉が渇いていたのだろう。あっという間に紅茶を飲み干した。
「もう一杯いかがでしょうか? とルシーお嬢様が聞いております」
「ええ、いただくわ」
キャロラインは二杯目の紅茶も、あっという間に飲み干した。
これで、しっかり祝福が効いた状態になっているだろう。
問題は、キャロラインの口封じに効果があるのかどうか、である。
「不思議ね。なんだか解放されたように、気分がスッとしているの」
「おやおや、そうでしたか」
効果があったのか、なかったのか。
その発言だけではわからない。
ここから先が本題である。
「そういえば、先ほどルームーン国、という言葉に反応されていたようですが――?」
キャロラインは目を見開き、反応を示した。