軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ルドルフの母君

もう数年会っていないものの、見間違えるはずもない。ルドルフの母親キャロラインはかなり美人だったのだ。年頃は四十代半ばくらいだっただろうか?

けれどもこうして美男美女の肖像画が並ぶ中でも、まったく劣っていなかった。

私の動揺にヴィルはいち早く気付いたようだ。

耳元でそっと「どうした?」と聞いてくる。

ルドルフの母キャロラインに似ている肖像画を発見したと告げると、目を見張る。

けれどもそれは一瞬のことで、驚きを顔に出すことはなかった。

さすがヴィルである。潜入中は表情管理が完璧なのだ。

「どなたをご指名なさいますか? そうそうたるメンバーが集まってるのですが」

舞台女優に現役の絵画モデル、大貴族の愛人に人気のバレリーナ、バレリーノなど、普段簡単に会えないような人々がマッサージをしてくれるようだ。

ヴィルがヒソヒソと私の耳元で囁く。

「ええ、ええ、ええ、なるほど」

恥ずかしがり屋さんで他人と喋ることができない設定を活かし、私はルドルフの母キャロラインについて質問を投げかける。

「あの、あちらの女性はどなたなのでしょうか?」

「こちらは……ああ、彼女は会員制の高級宿に務めていた人気ナンバーワンのお方ですよ」

会員制の高級宿――王都にある、ごくごく一部の選ばれた者しか出入りできない、とっておきの場所だという。

まさかそんなところに潜伏していたなんて……。いくら探しても、見つけることができないわけである。

その高級宿でツィルド伯爵と繋がり、豪華客船で働く流れになったのか。

「お嬢様は彼女よりも、こちらの男性陣のほうがよいのでは?」

指し示されたのは、男性の肖像画が並ぶ壁。

見目麗しい男性陣の中に、ルドルフはいないようだった。

親子でまとめて潜伏していたらよかったのだが。

まあ、ここで会えるのは一人だけだ。もしかしたらルドルフの居場所も把握しているかもしれない。ひとまずここでは、ルドルフの母キャロラインであるか確認した上で、話を聞きたかった。

ヴィル扮するルシーお嬢様から話を聞く振りをし、一芝居打つ。

「お嬢様はそちらの殿方よりも、先ほどの女性とお会いしたいそうです」

「しかしここは、極上の心地良さを提供する場でして」

そう言ってくると思っていた。

同性を調査するときに使えばいいと、話し合っていた理由を告げる。

「あちらのお方が、お嬢様の亡くなった母君にそっくりでして」

「ああ、そうだったのですね」

あっさり騙されてくれた。すぐに呼んできてくれるという。

ドキドキしながら待つ。

もしかしたらそっくりさんである可能性もあるからだ。

待つこと五分。

奥の部屋から一人の女性が現れた。

その女性は――間違いない。

ルドルフの母、キャロラインだった。