軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レヴィアタン侯爵邸にてその④

「他、当時いろいろあったようだが、それについても改めて聞かせてもらえるだろうか」

「ええ……そう、ですわね」

王妃殿下絡みの出来事で、レヴィアタン侯爵夫人が引っかかっていた出来事があったという。

それはレナ殿下が生まれる前後の話だった。

「王妃殿下は出産が始まったら、傍にいてほしい、とわたくしに命じておりました。しかしながら夜、陣痛があったと聞いて待機していたわたくしにキャロライン様が帰るように告げられて」

なんでも容態が思っていた以上に深刻で、国から侍医を呼ばなければいけないほどの危険な出産だったという。

「その後、産後の肥立ちが悪いとのことで、祖国から連れてきた侍女しか面会できませんでした」

それが長く続いた挙げ句、レヴィアタン侯爵夫人は針子の座から下ろされてしまったようだ。

「出産の影響で王妃殿下の精神状態が思わしくなく、その、侍女らに暴力を揮って危険だということで、わたくしはお役御免を言い渡されました」

人を遠ざけたのは、生まれた子どもが女児だったからに違いない。

「あの、レヴィアタン侯爵夫人、王妃殿下のお腹は、その、どのような感じでした? 大きかったとか、小さかったとか」

「お会いできたのは寝室で、いつもふわふわとした羽根布団を被られていたから、お腹についてはよく見えていなくて……。ごめんなさいね」

「いえいえ」

双子だったらお腹が大きかっただろうが、その辺の確認まではさすがにできなかったようだ。

もしかしたら双子だとわかっていて、ルームーン国側の侍女が隠していた可能性もある。

「その、王妃殿下の侍女の中で、同じ時期に妊娠されていた人も、いなかったですよね?」

「ええ、妊娠されているのは王妃殿下だけでした」

ならば、レナ殿下とエアが腹違いの姉弟だったというわけではないというわけだ。

「当時の侍女というのは?」

「もう国内にはいないとお聞きしました」

「そう、でしたか」

その侍女から話を聞き出すことができたらよかったのだが。

さすがにルームーン国にいるであろう人物と接触するのは難しい。

当時について思い出したからか、レヴィアタン侯爵夫人は少し悲しげな表情でいた。

「レヴィアタン侯爵夫人、突然聞き出すような真似をして、すまなかった」

「ヴィルフリートさん、お気になさらず」

「レヴィアタン侯爵夫人、ありがとうございました」

レヴィアタン侯爵夫人はにっこり微笑みながら、おいしいお茶とお菓子があるから持ってきますね、と言っていなくなる。きっと空気を察し、退室してくれたのだろう。

「妻の話を聞くに、レナハルト殿下が生まれた日に何かあったのは確実だな」

「ああ……。ただ、レナハルトとエアというのは確実なようだが……」

何か忘れているような気もするが、とにかく情報量が多く、混乱状態だった。

「レナ殿下とエアが双子だとして、何か事情があってキャロラインさんが連れ出し、下町で育てた、という可能性は?」

「ううむ、異国の貴族女性が下町で暮らすというのは、かなり難しいことのように思うのだが」

「しかしエアは、母親について浮世離れしていて、世間知らずだった、と話していまして」

もう少し、エアの母親についての情報を探りたい。

「唯一、素性について詳しく知っているのはミュラー男爵だったのですが」

私が行動を誤ったせいで、現在敵に回っていると言っても過言ではない。

「本当に、申し訳ありませんでした」

ヴィルからのお叱りは受けるつもりである。しっかり覚悟しておこう。

「まあ、過ぎてしまったことをあれこれ考えても仕方がない。これからについて考えたほうがいいだろう」

寛大なレヴィアタン侯爵に感謝したのは言うまでもない。

「ミュラー男爵については、こちらで調べておくゆえ」

そもそもミュラー男爵の素性については謎が多い。

現在は先代のミュラー男爵の養子となり、当主を名乗っている。

「まあ、やり手だな」

ミュラー男爵の代でミュラー商店は大きくなり、また爵位を叙勲したという。

そんな人物がなぜ、エアとエアの母親の暮らしを守っていたのか。

謎が謎を呼んでしまう。依然として、わからないことばかりだった。