軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

クッキーを食べよう!

粗熱が取れたクッキーは缶に詰め、余った生地で作った創作クッキーは試食会と称して紅茶と一緒にいただく。

「リザードクッキー、おいしいじゃん!」

「わたくしのキティクッキーはかわいく焼けておりますわよ」

ノアは花の形を作り、レナ殿下は馬の蹄をイメージしたクッキーを作ったようだ。

エルノフィーレ殿下は宝石型を作ったようだが、焼いているうちに変形したようで残念そうだった。

「宝石のようにきっちりとした形状の物は、型抜きが必要ですね」

「ええ、でも、味があっていいと思います」

私もジェムをイメージした丸形のクッキーを作ったのだが、焼いているうちに膨張したような形状になってしまった。ただ、ジェムはこういう形でいるときがあるよね、と思ってしまう。

リンデンブルク大公はお皿の上に置いたヴィルとノアをイメージした棒人間クッキーを眺めている。全体的に細いからか、堅焼きみたいな焼き色になっているようだ。

焼く前は直立した形でいたが、焼いたあとは小躍りしているような状態になっていた。思いのほかかわいらしく仕上がっている。

「理事長、召し上がらないのですか?」

「もったいなくて食べられない」

「でしたら、私のを食べてください」

「感謝する」

平たくなったジェムの形をしたクッキーをリンデンブルク大公は頬張る。

「おいしい」

「よ、よかったです!」

お口に合ったようで何よりである。

クッキーは次の休日に、エアとノア、アリーセが養育院に持って行ってくれるという。

私もいきたかったが、国王陛下の食事を作ったり、ヴィルの馬術大会の練習に付き合ったりといろいろすることがあるので、今回はお任せした。

◇◇◇

料理クラブの活動のあと、私はヴィルのもとへ向かった。

昨日、倒れたばかりなのに大丈夫なのかと思ったが、今日は魔石馬ビアンカのお世話をするだけだと聞いていたのだ。

魔石馬が収容されている馬舎でヴィルの姿を発見した。

「目眩がしたり、気分が悪くなったりしていないですか?」

「ああ、大丈夫だ。心配しなくていい」

今日は入念にお手入れをしたようで、ビアンカは上機嫌な様子を見せていた。

「これから食事の時間なのだが」

どこにも牧草などないな、と思っていたら、魔石馬の意外な食事が明らかとなる。

それは砕いた魔石だった。

革袋に入れられたものを餌箱に入れると、ビアンカは嬉しそうに食べ始める。

前歯で噛んでカリコリと音を鳴らしながら咀嚼しているようだった。

「魔石馬は普通の馬とは違うからな」

「勉強になります」

食べているうちに、ビアンカの額から生える魔石の角が輝きだした。

魔石から取り込んだ魔力が溜まっている証拠だという。

「馬術には馬の魔力も重要になるからな。大会までにしっかり貯めておかなくては」

「あの、魔石馬の馬術大会を見たことがないのですが、具体的にどのような競技なのですか?」

「魔法学校の大会では校庭で行う〝障害〟と〝 長距離競走(クロスカントリー) 〟の二種目になる」

障害は言葉の通り用意された障害物を魔法の補助と共に飛び越えるものだという。

長距離競走(クロスカントリー) は校内のコースを巡ってタイムを競う競技だとか。

「馬術大会当日は外からも保護者がやってきて、大いに盛り上がるそうだ」

話を聞いていると、なんだか楽しそうに思えてくる。

少し前までジルヴィードに脅されて、衆目の前でヴィルを手ひどく婚約破棄するように言われていたので、馬術大会についてあまり考えないようにしていたのだ。

エルノフィーレ殿下や校長先生、リンデンブルク大公のおかげで無事解決したので、安心して参加できる。

「そういえば、リンデンブルク大公から差し入れを預かっていたんです」

「父上から?」

「ええ、どうぞこちらを」

それはリンデンブルク大公が丹精込めて焼いたクッキーだった。

「なんだこの奇妙な形は?」

「ヴィル先輩をイメージしたクッキーみたいです」

「これを父上が作ったのか?」

頷くと信じがたい、という視線が向けられた。

「父はどういうつもりで私を作ったのか?」

「それは愛だと思いますよ」

再度、ヴィルは信じがたいという視線を向ける。

父親の愛を疑わないでほしい、と思ってしまった。