軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法の雪

通常、自然発生した雪には純粋な魔力が微量に含まれるだけなのだが、魔法で人工的に作られた雪には魔力に 澱(おり) のような物を感じるのだという。

「澱、ですか。では、私が魔法で作った雪も澱まみれだったわけですね」

「ええ、そうよ」

はっきり笑みを浮かべながら肯定されると複雑な気持ちになるが、自然発生した物に比べたら魔法の雪なんて汚れみたいなものなのかもしれない。

窓の外で吹雪のように吹き荒れる雪を見ても、普通の雪との違いなんてまったくわからない。

「こういうのってすぐにわかるものなんですか?」

「ええ、すぐにわかるわ。普通の雪はしんしんと静かに降るのだけれど、魔法の雪はこう、ザーザーみたいな異音? 雑音? とにかく耳障りなのよ~」

澱に加えて耳障りだと。知りたくなかった事実が今日の雪のせいでどんどん明らかになっていく。

「ただそれは普通の人にはわからないと思うわあ」

自然と共に生きてきたエルフ族の中でも、上位存在であるハイエルフのホイップ先生だからこそすぐに気づけたという。

「あ、でも、アイン先生もわりとすぐ雪が危険なものだと気づいたみたいなんですけれど」

「ああ、あの人は野生の勘よお。不思議よねえ。私の次に雪が普通の物ではないと気づいたみたいだから~」

「そ、そうだったのですね」

第六感みたいなものなのだろうか?

アイン先生のおかげで私達のクラスは酷い雪に晒されることなく、無事に避難できたのだ。

なんでももうひとつ、自然の雪と魔法の雪の違いがあるという。

「見て、これよお」

ホイップ先生は立ち上がり、窓に付着した雪を指差す。

「普通の雪は美しい六花模様ができるんだけれど、魔法の雪はぐちゃぐちゃで、適当な形で降っているのよ」

「あ、本当ですね」

自然の雪は美しい形をしているのに、魔法の雪はまるで形を成していない。喩えるならば埃とか、糸くずの塊とか、そんな感じだ。

「この魔法の雪は酷い形だけれど、ミシャ、あなたが作った雪は 蜜蜂の巣(ハニカム) みたいな、整列されたような美しい形をしていたわ」

「そ、そうだったのですね」

「ええ。まあでも、澱と雑音は感じたけれど」

とにかく、ホイップ先生にとっては自然の雪と魔法の雪は一目瞭然だという。

「それでその、魔法の雪についてなのですが、展開させたのは私ではありません」

「わかっているわよお」

これほどの雪を降らせるレベルの魔法が校内で展開されたら、ホイップ先生もすぐにわかるという。

「正しい位置はわからないけれど、ざっくり王都内で展開された魔法だというのはわかるわ」

「そ、そうなのですね」

「雪魔法は制御が難しいから、普通の魔法使いは使おうとは思わないのよねえ」

「え、ええ」

以前、購買部の店員さんも雪属性持ちは大変珍しい、と言っていたのを思い出す。

「私達の親族の中でも、私と叔父以外に、雪属性を持っている人はいませんから」

「そうなのよ!」

なんでも魔法省に所属する国家魔法師の中ですら、雪属性を持つ者はいないという。

「えーーーー、つまり、この王都内で雪魔法を使えるかもしれないのは、私と叔父のみ、ということですか?」

「そうなるわねえ」

思わず頭を抱え込んでしまう。

「叔父は酔っ払って、雪魔法を展開させてしまったのでしょうか?」

「その可能性は低いと思うわあ。だってこの雪魔法、きっちり正しく制御されているように見えるもの~」

吹雪から暴風雪のようになっているが、正しく制御された魔法だとホイップ先生は言う。

「その、叔父にこのような大魔法を展開させる能力はないと思うのですが」

「ええ、そうなのよお。あの子、成績が信じられないくらい悪くてねえ」

魔法学校時代の叔父について、ホイップ先生は残されていた当時の記録を読んだらしい。

「悪かったのは成績だけじゃなかったのよお。とにかく素行が悪くて、問題行動繰り返し、挙げ句の果てに退学処分になったのよねえ」

初級の雪魔法ですら、まともに展開できていなかったという。

「だから、あの人には無理なのよお」

「だったら誰がこの雪を降らせたのですか?」

「うーーーん、協力者がいたら、できるかもしれないわねえ」

叔父を魔法の媒質とし、魔法に精通している者が術を展開させたら雪を降らせることができるかもしれないようだ。

「でもそれって、人間魔石みたいなものですよね」

「そう! そうなのよ!」

叔父は魔力を大量に消費し、最悪の場合死んでしまう。そんな危険な魔法なのだ。

「それがわからないほど、おばかさんではないわよねえ」

「いいえ、もしかしたら大ばか者の可能性もありうると思います」

お金でも積まれたら、叔父は喜んで人間魔石になることを応じるだろう。

ホイップ先生と共に盛大なため息を吐いてしまったのは言うまでもない。