軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思いがけない朝食

あのあとヴィルは一晩中私を看病したいなどと言ってくれたが、婚約者であれど異性と共に一夜を明かすのはどうかと思ったため、丁重にお断りさせていただいた。

翌朝、ヴィルの使いでやってきた魔法生物の鳩が、大丈夫だったか、と心配するような手紙を送ってくる。おかげさまで元気です、と返して届けてもらった。

朝食はどうしようか、と思っていたらレナ殿下はいつもよりかなり早くやってきた。

「ミシャ、もういいのか?」

「ええ。昨日、ヴィル先輩とジェムが看病してくれて、すっかり元気になったの」

そんな説明をすると、傍にいたジェムが誇らしげな様子で胸を張る。

ジェムの名前を言うのを忘れなくてよかった、と思った瞬間だった。

「それよりも――」

まだ太陽も昇っていないような時間帯なので、着替えていなければ朝食の用意もしていない。いったいどうしたのか、と聞くと朝食を持ってきてくれたという。

「もしかしたら食事を作る元気もないのではないか、と思って料理人に頼んで作ってもらったんだ」

いったいどこに料理を持っているのかと思いきや、レナ殿下は鞄から小さな包みを取りだす。手の平にちょこんと載るくらいの代物であった。

そういえば以前、レナ殿下は料理人の作る料理がボリュームがありすぎて太ってしまう、などと悩んでいたような。少なめに作ってくれと言った結果、あのサイズになったとか?

なんて考えていると、レナ殿下は食卓の上に包みを置く。

何やら呪文を唱えると包みがハラリと開いてテーブルクロスと化し、料理が飛びだしてきたではないか。

「わっ――!」

テーブルクロスになった包みには魔法陣が描かれている。呪文を読んでみると、収納魔法をアレンジしたものだとわかった。

「べ、便利ね!」

「そうだろう?」

テーブルには湯気があがった鍋とパン、それから朝食の定番であるオムレツにサラダ、ソーセージなどが載ったモーニングプレートが用意されている。

鍋の中身はビーフシチューのようだ。

「病人用に、軽いものを作ってほしいと言ったのにこれだ」

「でも、おいしそうだわ」

「食べられそうか?」

「ええ、もちろん」

寝間着のままだが、ありがたくいただくことにしよう。

ビーフシチューにはぷるぷる、やわらかになるまで煮込まれた牛肉がごろごろ入っていた。ジャガイモやニンジンなども大きくカットされていて食べ応えがある。

「とってもおいしいシチューだわ」

「そうだが、朝から食べるものではないだろう」

料理人はレナ殿下が大きく成長することを願い、これでもかとこってりした料理を用意してくれるようだ。

「たくさん食べても女性らしい部分が成長するばかりで、理想からかけ離れていくように思えるのだが……」

最近は背が伸びずに、体つきが丸くなっていくばかりだという。

「筋肉を増やすよう走り込みをしたり、乗馬で下半身を鍛えたりしているのだが、思うような体型になれなくて」

深刻な問題なのでなんと言葉を返していいものかわからなくなる。レナ殿下の言うとおり、入学してきた頃よりもずっと女性らしいシルエットになっているように見えるのだ。成長期なので、そろそろ男装に限界がきているのかもしれない。

「変な話をしてしまってすまない。気にしないでくれ」

「そんなことないわ。何かいい案がないか考えましょう。もしかしたらノアも同じような悩みを抱えているはずだから、話してみるのもいいかもしれないわ」

「ミシャ……ありがとう」

なんだかしんみりとした雰囲気になってしまった。

いろいろ問題は山積みだろうが、今は朝食を味わおう。

食材に感謝し、自慢の料理を堪能したのだった。

レナ殿下曰く、昨日、ホイップ先生を呼んでくれたのはエアだったらしい。私の顔色があまりにも悪いので、身振り手振りでアピールしてくれたそうだ。

感謝の印として、一週間熟成させていたパウンドケーキを渡そう。そんなことを思いつつ登校した。

「エア、おはよう!」

「ミシャ! もういいのか?」

「ええ、昨日ゆっくり休んだら、元気になったの」

「そっか。よかった」

ホイップ先生に報告してくれたことを感謝しながらパウンドケーキを渡すと、エアは喜んでくれた。

「ミシャは頑張り屋さんだからさ、知らない間に抱え込んで無理してんだよ。話すだけでも楽になるから、なんでも言ってくれよな。俺、深刻な話を聞いてもすぐに忘れてしまうから」

「エア、ありがとう」

私はなんていい友達がいるのか、とじーんと感動してしまった。

アリーセやノア、エルノフィーレ殿下もやってきて、もう平気なのかと聞いてくれる。

皆に心配をかけてしまったようだ。

もう元気だと主張しているうちに、ホームルームが始まる。

ホイップ先生がいつもの調子でやってきたのだが、その後ろから二名の男性が続いたのでギョッとした。

「みんな~、うちのクラスに副担任ができました~」

やってきたのはジルヴィードとルドルフ!!

どうしてそうなるんだ、と思わず頭を抱えてしまった。