軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

呆れた言い分

「ちょっとリジー! なんてことをするのよ!」

「それはこっちの台詞だよ! 学校を辞めるつもりなんてないのに!」

「だったら真面目に登校しなさいよ!」

「忙しくて暇がないって説明しただろう!?」

単なる夜遊びが学校を休む理由になるわけがない。

「というか、あなた、魔法への関心がないのにどうして辞めないのよ?」

「それは――ヴァイザー魔法学校の生徒だっていったら、みんなあたくしのことをすごいって言うからさ!」

「なっ!?」

受験をせずに入学したくせに、ヴァイザー魔法学校の生徒であることを自慢しているなんて。ただ皆からの尊敬を集めたいからこの先も在学したいと考えているようだ。

もうこれ以上、リジーに何を言っても無駄なのだろう。

「わかったわ」

「先生に言っといてくれよ。気が向いたら登校するってね」

「リジー、それは無理な話よ。もしもこの先在学を続けたいというのであれば、自分で学校にいって説明しなければならないわ」

「そんな面倒なことを、このあたくしがするわけないだろう? あんた、学年を牛耳っている役職にいるんだから、適当に言えばいいだけだろうが」

「そういうことはできないのよ」

「はは! 普段偉そうにしておいて、大したことのない立場だってわけだ」

おそらくこの退学届は魔法学校側の最大の譲歩なのだろう。自分で辞めたほうが、まだ聞こえはいいのだ。

けれども強制退学となれば、外聞も悪くなるに違いない。

退学を言い渡されても知らないからね、と言いたいのをぐっと我慢する。

今の万能感に溢れるリジーに何を言っても、理解なんてしてもらえないだろうから。

「そういえばミシャ、エルノフィーレ殿下はどうしているんだい?」

「どうもこうも、なんとか過ごされているわよ」

どうしてエルノフィーレ殿下の侍女であるリジーが、彼女の近況について聞いてくるのか。侍女であるリジー自身がしっかり把握していないといけないことなのに。

「エルノフィーレ殿下と必要以上に親しくなって、侍女の座を狙う輩なんていないだろうね?」

「気を遣ってエルノフィーレ殿下を支えている人達に対して、失礼な言い分に聞こえるんだけれど」

「だってそうだろう? エルノフィーレ殿下の侍女という立場は、偉いんだから」

「偉いのはエルノフィーレ殿下だけで、侍女は偉くなんてないのよ」

「あんたはエルノフィーレ殿下の侍女になったことがないから、そんなふうに言えるんだよ」

いったいリジーはこれまでどんな優遇を受けてきたのか。聞く気にもならない。

なんでもリジーはジルヴィードとの婚約が決定してから、一度もエルノフィーレ殿下に会っていないらしい。

「一日一回でもいいから、エルノフィーレ殿下と面会したらどう?」

「余計なお世話だよ。あたくしは忙しいんだから! エルノフィーレ殿下に会っている暇なんてないんだ!」

この発言を学校側に聞かせてやりたい。

「あんたの話なんて興味ないんだよ! 一刻も早くでていって――そうだ!」

リジーがにやり、と笑いながら私を見る。

「あたくしの部屋に無断で入って、ただじゃおかないってことを、よくわかってもらおうか」

「どうやって?」

「こうやるのさ!」

リジーは廊下にでて、大声で叫んだ。

「あたくしの部屋に不審者がいるよ!!」

「ちょっと、リジー!?」

その声に反応した騎士達がリジーの部屋へ駆けつける。

「ご令嬢、いかがなさいましたか!?」

「この女が、あたくしの部屋に勝手に押しかけてきたんだ!」

信じられない。こんなでっちあげをするなんて。

「女、入城許可証は持っているのか?」

「ええ」

私は国王陛下が発行してくれた入城許可証を騎士に提示する。

すると、騎士の顔色はみるみるうちに青くなった。

「あ――こちらは陛下の」

騎士達は深々と頭を下げ、「失礼しました!!」と言って下がっていった。

その様子をリジーは呆然と見ていたが、扉が閉まった音でハッとなった。

「なっ!? どうしてミシャを捕まえないんだい!?」

「私が国王陛下に入城を許可された存在だからよ」

「国王陛下だって!? どうしてそんなものを持っているんだ!?」

「私の話なんて興味ないんでしょう?」

「うるさい!」

そう言ってリジーは枕を投げつけたが、ジェムが透明の防御壁を作る。それだけでなく、枕を跳ね返した。

そのまま枕はリジーのほうへ飛んでいって顔にぼふっと当たる。

「あ、あんた、なんてことをするんだよ!」

「それはこっちの台詞よ」

私が投げ返したように見えたのだろう。

まあいい。これ以上何も話すことはないので、リジーの部屋をあとにする。

「逃げる気かい!?」

「私は不法侵入者なんでしょう? それにもう用事はないから」

そのまま退室したが、リジーがあとを追ってくることはなかった。