軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リジーの復讐

〝レディ・バイオレット〟のお店でドレスを購入し、ヴィルとノアの食事会に同席するというイベントをなんとかクリアして、ホッと胸をなで下ろす。

リジーは朝、顔を合わせるなり私に怒鳴り込んできた。

「ちょっとミシャ! あんたのせいで昨日、とんでもない目に遭ったんだけれど!」

「あら、ごめんなさいね」

「どう落とし前を付けてくれるんだい!?」

激しく怒るあまり、言葉遣いが荒くなっている。せっかくエルノフィーレ殿下の侍女として言葉遣いを習ったというのに意味がないではないか。

それよりも、こうやって人前で怒鳴り込むこと自体、貴族令嬢らしくない。

というか、教室にエルノフィーレ殿下の姿がないけれどいったいどうしたのか?

「あんた、キョロキョロして、あたくしの話を聞いているの!?」

「いえ、エルノフィーレ殿下はどこにいらっしゃるのか、と思って」

「まだ来ていないよ」

「え!?」

なんでも朝一番に私への怒りをぶつけるため、ひとりでやってきたようだ。

侍女というのは言葉のとおり、主人の傍に侍る存在である。それすらできないなんて、と呆れてしまった。

「そんなのどうでもいい! 今は昨日のことについて、弁償してほしいんだ!」

「弁償? どうして?」

「昨日は〝レディ・バイオレット〟のドレスを買えるはずだったのに、あんたのせいで出禁になってしまったからだよ!」

「いや~~~~……」

ドレスを購入できるのはエルノフィーレ殿下だけで、リジーにはもともとその権利すらなかった。お店でもレディ・バイオレットにはっきりそう言われていたはずだ。

それを覚えていないなんて、信じられない気持ちになる。

「ちなみに弁償って、何をするの?」

興味本位で聞いてしまう。きっととんでもないものを要求するに決まっているのだが。

「そんなの言わなくてもわかるだろう? あんたがあたくしの代わりに〝レディ・バイオレット〟のお店にいって、あたくしのドレスを買ってくるんだよ!」

「え~~~~、それはちょっと無理だわ」

「つべこべいっていないで、やるんだよ!」

リジーの怒りは収まらないようだ。どうしたものか、と思っていたら、教室の扉が勢いよく開く。やってきたのはアリーセとノア、それからホイップ先生だった。

「ホイップ先生、ミシャさんとリジーがケンカしています」

「早く止めてくださいませ!」

なんと、アリーセとノアがホイップ先生を連れてきてくれたようだ。

「あらあら、どうしたのお?」

思いがけない第三者の登場により、リジーの表情がパッと明るくなる。

「先生! 酷いんだ! ミシャったら、あたくしが〝レディ・バイオレット〟のお店でドレスを選んでいるときに邪魔をしてきて」

「まあまあ、そうだったのねえ」

「自分の罪をあたくしになすりつけて、出禁にされたんだ!」

「わかったわあ」

リジーは私がホイップ先生に叱られるのをわくわくした様子で見つめていた。

けれども彼女の期待していた事態にはならなかった。

「それでミシャ、今度はあなたの主張を聞かせていただけるかしらあ?」

「ちょ、ちょっと先生! どうしてミシャの話なんか聞くんだ!?」

「ケンカは双方の話を聞かなければならないのよお」

「どうして!?」

「どちらかが嘘をついているかもしれないでしょう~?」

さすがホイップ先生である。こういうとき、生徒の話をきちんと聞いてくれるのだ。

私はしっかりと昨日の状況について伝える。

「昨日、リジーはエルノフィーレ殿下のお付きとして〝レディ・バイオレット〟のお店にやってきました。そのさい、個室に案内されたのはエルノフィーレ殿下だけで、彼女はお店に残ったんです。そこに私とノア、アリーセがやってきました」

リジーが店員に対して横暴な態度を取り、ドレスを購入できる権利なんてないのに試着したいと言い始め、できないと言われたらわめき散らしたことを報告した。

それにリジーは反論する。

「そんなの嘘だ! デタラメに決まっている!」

そんなリジーの言葉に、アリーセとノアが反論した。

「ミシャが正しいです。わたくし、その場にいましたから!」

「僕もしっかり見て、聞いていた!」

ふたりはリジーを見ずに、ホイップ先生への報告として訴えている。

いくらリジーがわめいても、無視を決め込んでいた。

「なっ! こいつらはミシャの友達だから、庇っているんだ!」

「わかったわあ」

ホイップ先生がそう言うと、リジーは表情を明るくする。

「わかってくれたのかい!?」

「ええ。どちらの証言が正しいかは、〝レディ・バイオレット〟のお店に問い合わせをするからあ」

想定外の展開になり、リジーは焦った表情を浮かべる。

「いやでも、ミシャが裏金を握らせて、真実をねじ曲げているかもしれないし」

「そんなことはないわあ。だって、〝レディ・バイオレット〟のお店は王室が愛した清廉潔白なお店ですもの。そんな卑怯な取り引きなんてするはずがないから、安心してねえ」

ホイップ先生はにっこり微笑むと、教室からでていった。

その後、リジーは具合が悪くなったと言って早退する。

なんというか、わかりやすい人だ、と呆れてしまった。