軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〝レディ・バイオレット〟へ

放課後になり、外出許可をもらった私達は街へ向かう。

ジェムはお留守番かと思いきや、細長く伸びて私の腕に巻き付く。

ノアがギョッとしていたものの、ジェムはお構いなしだった。

アリーセが予約してくれていた街行きの馬車に乗ると、あっさり校外に出ることができた。

「えっ、警告とかでないの!? 前に空を飛んで街にいこうとしたら、警告が表示されて驚いたんだけれど」

この件についてはアリーセが解説してくれた。

「街へ向かう馬車は先生の許可がありませんと乗れないので、校門を通るさいはお咎めなくいけるのかもしれません」

「というかミシャさん、空を飛んで校外にいったことがあるんだ」

「ええ、ホリデーのときにギリギリまで学校に残っていたら馬車がなくなってしまって」

「まあ、そうでしたのね。そういうときは先生に申請したら、馬車をだしていただけますのよ」

「し、知らなかった……!」

ちなみにこれは生徒手帳に書いてあるらしい。最初から最後まできちんと読んだと思っていたのに、うっかり見落としていたようだ。

今一度、生徒手帳を確認する。

「なんかさ、生徒に便利な学校生活を送らせないために、わざとまどろっこしく書いているよね」

「本当に。言い回しが硬くて眠気を誘うような、読み飛ばしたくなるような文章だわ」

ただこれをしっかり読んでおかないと、学校生活を送る中で損をしそうだ。あとでゆっくり読ませていただこう。

皆でたわいもない会話をしているうちに、〝レディ・バイオレット〟のお店に到着した。

美しい白亜の外観に、うっとりしてしまう。

馬車を降りると、すぐ前に立派な馬車が停まっているのに気づく。

めざといノアが馬車の校章を指差した。

「あ、あれ、うちの学校の馬車だ」

「あら、本当ですわね。あの車体はたしか、貴賓が利用する特別仕様車ですわ」

「そ、そうなんだ」

いったい誰が? と思った瞬間に馬車が開く。

堂々とした足取りで降りてきたのは――リジーだった。

すぐにリジーは私達に気づくと、にんまりと笑った。

「ミシャじゃない!」

あとからエルノフィーレ殿下が降りてきているのに、リジーは気にも留めずに私に話しかけてくる。

「ミシャ、ここがどこかわかっているの?」

「〝レディ・バイオレット〟のお店でしょう?」

「そう! 王族御用達、その辺の雑草みたいな女が近づくことなんてできない、特別な超高級店なの!」

おそらくエルノフィーレ殿下のドレスを選ぶためにやってきたのだろう。リジーはそのおまけだ。まるで自分が招待を受けたかのような物言いに呆れてしまう。

「ミシャが入れるようなお店ではないの。ミシャは下町通りにある、ボロ服店がお似合いよ。そこにしなさいな」

出会って数十秒でよくもここまで好き勝手に言えるものだ。

リジーは馬車から降りてきたノアに気づくと、脱兎のごとくエルノフィーレ殿下の背後に隠れる。

大きな口を利くのであれば、ノアとも舌戦を繰り広げてほしかったのだが。

エルノフィーレ殿下は私達に気づくと、優雅に会釈してくれた。

さすが大国の王女様である。どこかの誰かさんとは違って、マナーに精通しているのだ。

リジーは勝ち誇ったような表情で入店していた。

エルノフィーレ殿下がいるのならば私達はあとにしたほうがいいのか。

そう思ったものの、ノアは問題ないという。

「どうせああいう貴賓は個室で買い物をするだろうから、店内にはいないよ」

「たしかに、そうでしょうね」

「だったら遠慮なく入りましょう」

わくわくしながら入店すると、水晶輝くシャンデリアと、美しいドレスの数々にうっとりしてしまう。夢見心地でいたのに、一瞬で現実に引き戻される。

なぜかと言えば、金髪碧眼の美人店員に向かってわめき散らすリジーの姿を発見してしまったから。

「どうしてあたくしは別室に入れないんだ! このあたくしが誰だかわかっているの!? エルノフィーレ殿下の筆頭侍女で、ツィルド伯爵の娘なんだ!」

せっかくきれいな言葉遣いを心がけていたのに、素がでていた。

店員さんも困り果てている。

「エルノフィーレ殿下はその、ゆっくりお選びになりたいとおっしゃっておりまして」

「このあたくしが選んでやると言っているのに?」

「申し訳ありません」

すっかり機嫌をそこねたリジーだったが、別の店員がお茶とお菓子を用意してくれたようで、常連顔で用意された椅子に座っていた。

その様子をノアとアリーセは呆れた様子で見ていた。

「なんていうか、あそこまで傍若無人に振る舞えるのはある意味才能かも」

「わたくしもそう思います」

私はひたすら彼女が従姉だったという事実が恥ずかしい。誰か嘘だと言ってくれ、と思った。

そんなリジーは私に気づくと、にっこり微笑みかけてくる。嫌な予感しかしなかった。