軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

邂逅

再びヴィルと私は横たわり、手を繋いだ状態で目を閉じる。

時折、私の顔を覗きにくるリスのふわふわとした毛並みが頬に触れるのが心地よい。

会話などなかったが気まずさはなく、ただただのんびりとした時間が過ぎていった。

そんな中で、魔法学校の敷地内に魔導通信が響き渡る。

『――全校生徒に告ぐ! これより講堂で全校集会を行うので、迅速に集まるように!』

どうやらルームーンの第二王女のお披露目式を行うらしい。

「邪魔が入ったな」

「そういうの、誰かに聞かれたら大変なことになりますよ」

「問題ない。ここにはリスしかいないからな」

「たしかにそうですね」

ただ、今後は発言に気をつけたほうがいいだろう。ささいな一言が、国家間の問題に発展する可能性があるから。

そんな私の心配をヴィルは見抜いたのだろう。まっすぐな瞳を向けつつ、「相手に弱みを見せるつもりはない」と宣言してくれた。

「仕方ない。久しぶりに参加するか」

「そういえば、入学式にはいなかったですよね?」

「人の多い集まりは無理して参加しなくてもいい、と校長から言われているからな」

なんでもヴィルが参加すると上級生が酷く緊張したり下級生が萎縮したりすることが多々あったようで、式典を始めとする人の集まりへの参加が免除されているようだ。

「今日はいいのですか?」

「監督生となったミシャの晴れ舞台を、この目に焼き付けておきたいから」

私の晴れ舞台ではなく、王女殿下のお披露目である。

これに関しては深掘りせずに、スルーしておいた。

「そろそろ講堂に移動したほうがよさそうですね」

「ああ、そうだな」

私は立ち上がり、監督生のローブに袖を通す。

ここで着るとは思っていなかったのか、ヴィルは驚いた表情で私を見ていた。

「講堂になんか着ていったら、これでもかと注目を浴びるだろうに」

「ヴィル先輩と一緒に行っただけで、ある程度視線を集めてしまうので、それならばいっそのこと、監督生に任命されたんだとアピールするのも手だな、と思いました」

どうせ目立つのであれば、一度にひとりでも多くの人達に周知しておいたほうが楽だろう。

曲がっていた襟を直すと、監督生の証である、金細工にぶら下がったチェーンが揺れる。

ヴィルの物と比べたら細工は簡素だが、充分過ぎるくらいの輝きを放っていた。

「ヴィル先輩、どうですか?」

「よく似合っている」

「ありがとうございます。ホッとしました」

ローブの細部のデザインは違えども、ざっくりとした形は同じである。まるでヴィルとお揃いを着ているかのように見えるのだ。

皆、どんな反応を示すのか。ドキドキだった。

「ミシャ、行こうか」

「はい!」

ヴィルが知っている秘密の通路を通って、講堂まで向かった。

幸い、途中までは誰ともすれ違わなかったのだが、講堂に近づくにつれて生徒が多くなる。

講堂に入ると、皆、ヴィルが全校集会に参加することに驚いていた。

続いて隣にいる私が監督生のローブを着ていたので、さらにざわざわと騒がしくなる。

ヴィルは一学年の席まで私を送り届け、「またあとで」と言葉を残して三学年の席のほうへと歩いていった。

皆の視線が針のようにぐさぐさ突き刺さる。

呆然とするクラスメイト達の前を通過し、エアの隣に腰を下ろした。

エアはすぐに話しかけてきた。

「おいミシャ、ついに監督生に任命されたんだな! おめでとう!」

「ありがとう」

ついにと言われてしまうと、待望感があるので不思議だ。

なんでもエアは私がいつか監督生に選ばれるだろう、と信じて疑わなかったようだ。

「そういうふうに期待してくれるの、エアだけだと思う」

「そんなことないって。みんな、ミシャの本当の実力について、気づいていると思う」

「そう?」

「ああ! 自信を持てよ」

前の席にいたアリーセとも目が合った。キラキラした瞳を向けつつ小さく拍手してくれたので、笑みを浮かべ手を振って応える。

ノアはこちらに見向きもせず、ピンと背筋を張って座っていた。これからルームーンの第二王女がやってくるので、私なんかに構っている余裕などないのだろう。

レナ殿下もノア同様、まっすぐ前を見つめていた。

チャイムが鳴るのと同時に、校長先生が講堂の舞台へ登場し、生徒に向かってにっこりと微笑みかける。

「今日はみなさんに、すばらしいお知らせがあります」

いったい何事か、と皆の注目が集まる。

校長先生は懐に入れていた封筒を開封し、中にあった紙を開く。

一礼したのちに、それを読み上げた。

「ルームーンの第二王女、エルノフィーレ殿下が、我が校への留学が決定し、本日転入されました!」

生徒達の拍手が鳴り響く中で、舞台袖から金髪に緑色の瞳の女性が登場する。

あれがルームーンの第二王女、エルノフィーレ殿下だという。

楚々とした雰囲気の美人であった。

その次の瞬間、続けてやってきた女性を見て、私は仰天する。

灰がかった髪を三つ編みにし、キリリとつり上がった目をした女性の姿は、見覚えがありすぎた。

――リジー!!

彼女は私の従姉で、かつて婚約者だった男ルドルフと愛を育み、彼の子を妊娠した女性だった。