軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

危機的状況

まさかこのタイミングで先生がやってくるなんて。

すぐさま調理室の様子を見守っていたホイップ先生が叫ぶ。

『アイン先生、だめよお! ここは彼女達に任せて~~!』

そんなホイップ先生の叫びも、興奮状態のように見える先生には届かず。

「悪い妖精め! 覚悟!」

あろうことか、先生は拳を振り上げて突進してくる。

『ひい!!』

元使役妖精は私にぎゅっとしがみつき、目を閉じる。

守ってあげなければ。

とっさにそう判断し、元使役妖精を胸に抱く。

「なっ、リチュオル!?」

先生は勢いを削ぐことができず、そのまま突っ込んでくる。

奥歯を噛みしめ、元使役妖精を守るように背中を向ける。

大きな衝撃を覚悟していたが、痛みは襲ってこない。

「――?」

恐る恐る振り返ると、先生が天井から宙吊りになっていた。

「なっ、なんで!?」

そう叫んだあと、よくよく確認したら先生の足に細長く伸びたジェムが巻き付き、天井からぶら下がっている状態だということに気づいた。

「ジェムが、助けてくれたのね」

思わずノアのほうを見て言ったら、「そうみたい」と呆然としつつ言葉を返してくれた。

次の瞬間、勢いよくホイップ先生が調理室に入ってきた。

「アイン先生、待って~~! 早まらないでえ!」

ホイップ先生は大鷲の使い魔を連れてやってきたようだが、宙吊りになった先生を見てギョッとしていた。

「え、あの、アイン先生?」

「むが、むがが! もご!」

ジェムが先生の口に丸めた紙を詰め込んでいたようで、悲鳴すらあげることができなかったらしい。

一瞬の間にそこまでしていたなんて。ジェム、恐ろしい子……。

「その、ミシャにノア、大丈夫だったのかしらあ?」

「私達は平気です。それより、この子を保護したくって」

「ええ。話は聞いていたわ」

元使役妖精をホイップ先生に渡そうとしたものの、私にしがみついて離れようとしない。どうやらこのまま運んだほうがよさそうだ。

私達の代わりに、ホイップ先生が詳しい事情を説明してくれる。

「この元使役妖精は悪い子ではなかったみたいなの~。保護するから、乱暴はしないでねえ」

先生はこくこく頷く。事情を理解してもらえて、ホッと胸をなで下ろした。

「えーっと、ミシャ、アイン先生の顔色が悪くなっているから、下ろしてくれる~?」

「わかりました。ジェム、お願い。優しく下ろしてあげて」

そう頼むと、ジェムは先生を宙吊り状態から元に戻し、そっと床に着地させる。

「う、うう……!」

「あらあら、大丈夫~? 気持ち悪かったら、保健室に行ってねえ」

ホイップ先生は先生の介抱するわけでなく、私達を転移魔法で職員室へと連れていってくれた。

久しぶりな校長先生を前に、事情を説明し始める。

「というわけでえ、学校側の契約に問題があったようなの~」

「そうだったのか」

使役妖精の管理は魔法生物学の先生が管理しているという。詳しい調査をするようで、任せておくようにと言われた。

「今後は使役妖精ではなく、人を雇う予定だ」

すでに採用しているようで、明日からは使役妖精ではなく、人が清掃や備品の管理などを行うようだ。

「我々が使役妖精に長年甘えていたから、このような事態を招いてしまったようだ。迷惑をかけたな」

「いえ」

「謝罪は使役妖精にしたほうがいいのでは?」

ノアの鋭い指摘に、校長先生は「そうだな」と申し訳なさそうに言っていた。

その後、調査をしたところ、使役妖精を管理していたのは魔法生物学の先生の補助を務める 個人指導教師(テューター) だったらしい。

なんでも大量の業務を抱え込んでいた結果、使役妖精達の管理がおろそかになっていたという。

寝不足状態で契約を交わした結果、使役妖精達を酷使させる内容となっていたようだ。

魔法生物学の先生は減給、 個人指導教師(テューター) は一ヶ月の謹慎処分となった。

元使役妖精の煽動で逃げだした使役妖精の数は十体ほど。痩せ細って弱っている様子だったが、私のカステラを食べると元気いっぱいになった。

そんな彼らは今、ガーデン・プラントの温室で働いている。

カステラやお菓子などと引き換えに、授業で使う薬草の管理をしているのだ。

魔法の契約を交わしているわけでなく、彼らが望んで働いてくれている。

ホイップ先生が契約を持ちかけたものの、二度と縛られたくない、と言って断ったようだ。

リーダー格の元使役妖精は、私がチンチラと呼んだことが気に入ったようだ。自らチンチラだと名乗っている。

カステラが大好物となったようで、よくせがまれるのだ。

彼らのおかげで、私は温室の仕事を毎日しなくてもよくなった。

とは言っても、報酬であるお菓子作りをしなくてはならないのだが。

何はともあれ、平和になったのだ。