軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

山頂の宿泊施設にて

エアと二時間くらいお喋りをして、そのあと三時間ほど自習を行う。

途中、わからない部分があってエアとふたりで頭を抱えていたのだが、偶然にも休み時間中のヴィルから通信魔法が入ったので、教えてもらえた。

エアは通信魔法を初めて見たようで、こういうのがあるのか! と感激している様子だった。

なんの用事かと思っていたら、夜、晩餐会の予定が入るので、通信ができそうにない、という連絡だった。

問題ないと言ったら、ヴィルは少し不服そうな表情を浮かべる。

『こういうときは、晩餐会と私、どちらが大事なのか問い詰めるべきだ』

「いや、私よりも晩餐会のほうが大事ですよ」

『そんなことあるものか!』

しようもないことを言い出したので、勝手に通信を切った。

私達の会話を聞いたエアは驚いていた。

「リンデンブルク監督生長をあんなふうに雑に扱うのは、ミシャくらいだろうな」

「雑じゃなくって、本当のことを言っただけよ」

「そ、そうだけど」

夜、再度ヴィルから連絡がきて、ノアが興奮して眠れなくなるのではないか、と心配していたので晩餐会に感謝したのは言うまでもない。

昼食を食べる前にノアの様子を見に行ったが、頭からブランケットを被って寝入っている。寝かせておいたほうがいいだろうと思って、声をかけなかった。

レナ殿下も同様に、深く寝入っていたらしい。そのため、エアとふたりで昼食を食べることとなった。

ブッフェ形式の昼食は焼きたてのパンに豪勢な魚料理や肉料理が並び、野菜を使ったメニューも豊富に用意されていた。

ノアにも何か持っていってあげたいと思って食堂で働いている料理人に声をかけたら、サンドイッチと魔法瓶に入ったスープを用意してもらえた。

エアと別れたあと、部屋に戻ってノアに声をかける。

「ねえ、ノアさん。食堂でサンドイッチとスープを貰ってきたの。少しだけでも食べたほうがいいわ」

ノアは身じろぎ、すぐに起き上がる。

彼の様子を見てギョッとした。

目は血走っていて、目の下のくまは朝より濃くなっていたからだ。

「もしかして、眠れなかったの?」

私の問いかけに、ノアはこっくりと頷く。

「昼食は食べられそう?」

「スープだけだったら」

食堂で借りてきた深皿にスープを注ぎ、ノアへと差しだす。

ノアはゆっくりな動作で、スープを飲んでいた。

スープだけでも飲めたのでよしとしたいが、これでは体力が保たないだろう。

「ノアさん、パンをスープに浸したら、食べられない?」

こくりと頷いたので、小鳥が食べるようなサイズにサンドイッチのパンをちぎってスープの中に入れてあげる。

すると、非常にのろのろとした動きではあったが、食べることができた。

「ハムやチーズは難しいかもしれないけれど、葉っぱは?」

「食べる」

葉野菜をスープに入れるわけにはいかないので、ノアの口元に差しだす。すると、給餌された小鳥のように、ちまちま食べてくれた。

なんだかんだと食事の世話を焼いて、ハムとチーズ以外は完食できた。

「ミシャさん、ありがとう。少し元気になった」

「よかったわ」

やはり、どんな状況でも食事は大事なのだろう。

無理矢理食べさせて申し訳ない、と思ったが、元気になったと聞いて安堵する。

午後から眠れるように、安眠効果のあるカモミールとレモンバームのブレンド茶を淹れてみた。薬草茶はあまり飲まないというので、蜂蜜をたっぷり垂らす。

「……おいしい」

「よかった」

あとはひたすら無になって眠るようにアドバイスしたが、難しいと返されてしまう。

「眠れないとき、いつもはどうしていたの?」

「眠れないときは、眠らない」

「それはよくないわ。よーく、思い出してみて。幼少期にしていたことでもいいから」

そんな言葉をかけたら、何か思い当たる節があったようでハッとなる。

「よく、手を繋いでもらっていたような気がする。ミシャさん、少しだけ手を握っていてくれない?」

「手?」

「うん」

なんでも乳母がよく手を握ってくれたらしい。

乳母って、と思ったが、前世の年齢を含めたら、ノアの乳母でもおかしくない。

ここは彼のために、乳母のような包容力をもって、手を握ってあげよう。

そっとノアの手を握ると、ノアは安堵したような表情を浮かべて目を閉じる。

数分と経たずに、スースーと寝息を立てて眠り始めた。

「何よ、眠れるじゃない」

薬草茶も効果を発揮したのかもしれない。

ノアは愛らしい寝顔を見せながら、熟睡したのだった。

三十分ほど見守って、手を引き抜こうと思った。

けれどもノアは眠っているのに私の手をしっかり握っていて、なかなか放さない。

途中、ジェムが香油を持ってきて、これで滑らせてはどうだろうか? と無言の提案をしたのだが、他人の所有物を勝手に使うわけにはいかないので却下した。

結局、ノアは私の手を握ったまま、夕食の時間まで爆睡する。私もノアの布団に頭を預け、お昼寝をしてしまったのだった。

ノアはすっきりとした表情で目覚めるのと同時に、私に謝罪した。

「ミシャさん、ずっと手を握っていて、ごめんなさい」

「いいのよ」

睡眠をしっかり摂ったノアは元気になり、夕食も普通に食べられるようになった。

夜も眠れそうだと言うので、よかったよかった。

お風呂は事情を知っているホイップ先生の部屋で入るらしい。レナ殿下も同様に。

私は他のクラスメイト達と、大浴場を利用した。

他人とお風呂に入ることなんてないので照れてしまったのだが、他の人達は侍女達が入浴の手伝いをしてくれるようで慣れっこらしい。堂々としたものだった。

大浴場には石けんしかなく、クラスメイト達は髪と肌が荒れると 非難囂々(ひなんごうごう) であった。

私は自分の石けんを持ち込んでいたので、アリーセにこっそり貸してあげた。普通の石けんではないので、感謝されたのは言うまでもない。

入浴後、少し勉強をしてから就寝する。

ノアも普通に眠れているようで、明日こそは大丈夫そうだ。