軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

教室にて

教室に行くと、学習机にお道具箱のような物体が置かれている。

それぞれ名前が書かれており、端っこの先頭にはレナ・フォン・ヴィーゲルトと書かれていた。どうやら席順は男女混合で、成績順に並んでいるようだ。

私達の席はどこか、と探していたら、成績優秀者からもっとも遠い窓側に発見する。

私は一番先頭だった。

「おー、ミシャの後ろか」

なんと、私達の成績はごくごく近いものだったらしい。

改めて、よろしくお願いします、とお互いに頭を下げたのだった。

席に腰を下ろしたのと同時に、アリーセがやってくる。

クラス発表早々、取り巻きのご令嬢を従えての登場であった。

「アリーセ様、どうやら席は成績順のようですわ」

「まあ、アリーセ様はレナ様のお次のようですわね」

アリーセは家柄がすばらしいだけでなく、成績優秀者でもあったらしい。

加えて容姿端麗なものだから、羨ましくなってしまう。

注目していたら睨まれてしまうので、私はエアと一緒にお道具箱の中身を拝見しよう。

「うわー、すげえ」

「どうしたの?」

「この箱、手をかざして、魔力を読み取らないと開かないみたいなんだ」

「それはすごいわね」

そういえば、入学申込書に魔力を登録した書類を提出するように、とあった。

魔力の質や元素について把握しておきたいだけかと考えていたのに、まさかこんなところで使われるなんて思いもしなかった。

エアがしていたように、私もお道具箱に手をかざす。

すると、箱の表面に魔法陣が浮かび上がり、カチリ、という解錠するような音が聞こえた。

ドキドキしながら蓋を開くと――そこにはさまざまな品が入っていた。

まず目に付いたのは、校章が金のインクで箔押しされた生徒手帳。

最初のページを開くと、金色の文字が浮かび上がる。そこにはこの人物がヴァイザー魔法学校の生徒であることを証明する、という内容が書かれていた。

「すげーな」

「エア、これにも魔力を読み取る機能が付いているみたい」

「もしかして、他人の生徒手帳を開いたら、この文字は浮かび上がらないとか?」

「やってみましょう」

エアと生徒手帳を交換し、同時に開いてみる。

すると、先ほどの金の文字は浮かばす、代わりに赤字で〝この手帳を拾った者は、すみやかに騎士隊に届けるか、ヴァイザー魔法学校に送るように〟という警告のような文面が浮かび上がった。

「やっぱりそうだったんだ」

「さすがよね」

生徒手帳から魔法仕掛けだなんて、わくわくしてしまう。

次のページから校則がぎっしり書かれていた。

そこら辺はパラパラと流し読みし、最後のページに行き着く。

「これは」

「おお……」

驚いたことに、生徒手帳の最後のページには、防犯用の魔法巻物が挟まれてあった。

全部で五枚ほどあるだろうか。

ヴァイザー魔法学校へ繋がる転移魔法が二枚、水、風、火属性の攻撃魔法がそれぞれ一枚ずつ。

尚、防犯以外に魔法巻物を使った場合は、即退学処分とする、と書かれてあった。

「防犯用に高価な魔法巻物を生徒全員に持たせるなんて、ここまでする必要があるのかよ」

「あるわよ。魔法使いの卵なんて、悪い人から見たら金の卵でしょうから」

魔法学校の生徒が誘拐され、裏社会で取り引きされていた、なんて事件も過去にあった気がする。

制服でその辺をのこのこ歩いていたら、目を付けられて犯罪に巻き込まれるかもしれない。

そのため、外出時には私服で出かけるように、という校則もあるのだ。

「エアも、その、気をつけておいてね」

「ああ、わかった」

下町出身のエアに、あそこは危険だから、なんてことは言えなかった。

他に、羽根ペンやインク、レポート用の羊皮紙、本をまとめる革ベルトなど、学校生活に必要な文房具が収められていた。

眺めているだけで、ドキドキしてしまうような一式である。

一番底に、購買部の割引券が入っていた。

エアと一緒に喜んでいたら、近くの席の女子生徒にくすくす笑われてしまう。

「こんなので喜ぶのなんて、俺達ぐらいなんだろうな」

「たぶんね」

今は貴族令嬢だが、前世は庶民だった。

割引、という言葉にはテンションが上がってしまうのである。

「そういえば、エアは奨学金制度を使って入学したの?」

「いいや、違う。 自費生(フォリナー) だ」

「そうだったんだ」

「なんか、母ちゃんの知り合いにとんでもねー金持ちのおじさんがいたみたいでさ。おじさんは俺を養子に迎えたい、だなんて言っていたんだが、貴族社会で上手くやっていく自信がなくてさ。そんなことを言ったら、魔法学校で社交を学べるとか言いだして」

エアには思いがけない裏事情があったようだ。

「おじさん曰く、下町出身の生徒は何人もいるからー、なんて話していたのに、ぜんぜんいねーじゃねえかって思って」

「たしかに」

魔法書一冊購入するのもお金がかかる魔法を、毎日食べる物を得るのも一苦労する下町の者達が学べるわけがないのだ。

「エアはどうやって魔法を習ったの?」

「母ちゃんの寝言だな」

「またまた、独特な勉強方法をしていたんだ」

母親の寝言をきっかけにこっそり魔法を試すようになったエアは、ちょっとした火魔法であれば扱えるようになったようだ。

「今でもそうだぜ。小さな火しか出せないんだ」

「魔法の基礎を学んだら、もっとすごい魔法が使えるようになるよ」

「そうだといいな」

話が途切れたタイミングで鐘が鳴る。ホームルームの時間らしい。

担任であるホイップ先生がやってきて、にっこり微笑んだのだった。