軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十四話 九つの星/新調

リョーコさんと一緒に、ルイーザさんに案内されて『緑の館』一階の奥に向かう。廊下の左右に扉が並んでおり、手前の方はただの木製の扉だが、奥の三つだけが違う材質で作られていて、黒っぽい色をしている。

俺のスリングと同じ黒檀だろうか。初級鑑定の巻物で材質も分かりそうだが、それよりも、扉に埋め込まれている石が、見覚えのある形をしていることが気になる。

(これは……何かの星座だったか。しかし、九つある……どういう意味なんだろう)

「こちらは、迷宮国の象徴とされている図形です。私も詳しい意味は、聞かされていないのですが……」

「ギルドの上層部の人たちなら、知っている……ということはありますか?」

「はい、おそらくは。私も七番区の職員に昇格しましたが、まだ機密に触れられるほどの権限はありません。この七番区にある、ギルドが管轄する資料館の司書という役職を与えていただきましたが」

そういえば、セラフィナさんが前に言っていた――奇数番号の区には、資料館があると。

「ルイーザさん、できればその資料館に一度行ってみたいんですが……」

「ええ、勿論大丈夫です。非番の時にということになりますが……今のところ受け持ちの冒険者さんも少ないですから、ご案内する時間は作れると思います。リョーコ様方はどうなさいますか?」

「よろしければ、ぜひ。私たちも、色々知りたいことがありますから」

「資料館の本は、個々人の職業専用のものもありますが、アトベ様の序列であればほぼ全て閲覧許可を出すことができます。秘匿資料の閲覧も可能ですよ」

にっこりと笑って言うルイーザさん――しかし『秘匿資料』というと、『企業秘密』とか『社外秘』という言葉を思い出して緊張してしまう。

「では、お部屋の中へどうぞ。私はお茶をお持ちしますね」

ルイーザさんは扉を開けて俺たちを中に招き入れる。俺とリョーコさんだけが残され、彼女はアンティークな風合いを感じさせるテーブルを見て目を輝かせつつ、どこに座るべきかと迷っているようだ。

「リョーコさん、こういう家具とかに興味があるんですか?」

「まあ……どうして分かったんですか? そうなんです、私、古い家具が好きで。八番区のギルドで序列が一位になったときも、とても雰囲気のあるお部屋に通していただいて……いつか自分の家を持てたら、こんな家具が欲しいと思っていたんです」

「そうだったんですか……俺はこういうのには疎いですが、確かに格調高いですよね」

軽く聞いてみた俺に、リョーコさんは饒舌に答えてくれる。

そう、彼女たちも七番区に上がったということは、八番区の序列一位を経験しているということだ。

そんな実力者でも、七番区では苦戦をしている――いや、『同盟』によって道を阻まれている。彼女たちが長く足止めをされないうちに、合流できてよかった。

「あ、あの。一つ、聞いてもいいですか? アトベさんは、この先……」

リョーコさんが言いかけた途中で、コンコンとドアがノックされる。俺が席を立って扉を開けると、ルイーザさんが入ってきて、テーブルの上にカップを置き、ティーポットからお茶を注ぐ。

「お待たせいたしました。では早速ですが、ご報告をお願いいたします。ライセンスを拝見させていただけますか?」

「はい、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

ライセンスをテーブルの上に差し出す――そして、ルイーザさんはいかにも緊張しているという様子で、胸に手を当てて深く呼吸をしたあと、 片眼鏡(モノクル) を使ってライセンスを覗いた。

◆今回の探索による成果◆

・『牧羊神の寝床』1Fに侵入した 10ポイント

・『マドカ』のレベルが3になった 30ポイント

・『メリッサ』のレベルが4になった 40ポイント

・『グランドモール』を2体討伐した 100ポイント

・『★背反の甲蟲』を討伐した 1800ポイント

・サブパーティが『グランドモール』を1体討伐した 25ポイント

・パーティメンバーの信頼度が上がった 140ポイント

・サブパーティメンバーの信頼度が上がった 200ポイント

・合計13人で合同探索を行った 65ポイント

探索者貢献度 ・・・ 2410ポイント

七番区貢献度ランキング 255

「……あ、あの……また、報告の内容に『★』が見えるのですが……な、名前つきと、また遭遇されたのですか……?」

「は、はい。巨大な甲虫みたいな魔物が遠くを飛んでいて、最初は『フェイクビートル』かと思ったんですが……接近されるまで、名前つきとは俺たちも思いませんでした」

「ライセンスによって魔物が検知される範囲外から干渉した……ということですね。そんなことが可能だなんて……上の区にいる冒険者でも、なかなかできることではないと思います」

「すごいですよね……私たちも見ていてびっくりするばかりで。恥ずかしながら、ついていくのがやっとでした」

「ナツメ様のパーティは、主にグランドモールを二体倒されたのですね。背反の甲蟲との交戦を担当したのは、アトベ様方……そうなると、貢献度の配分はアトベ様方が大きくなりますね。メンバーの方々もそれぞれ序列が上がっていると思います。まずはアトベ様、早速二桁に手が届きそうですね……七番区に来てからここまで辿り着けない方も多いと言うのに、あなたは本当に……」

39ほど序列が上がっているので、またジャンプアップしたと言っていいのだろうか。そうすると、序列一位をリーダーとする集団の間に、まだ多くの探索者がいることになる。

「ここから序列を上げていくには、一度の探索でどれくらい貢献度を稼げばいいんでしょうか。撤退するかどうかを決めるときの判断基準として知っておきたいです」

「そうですね……アトベ様方より上位の探索者の方も、定期的に探索をして貢献度を維持、あるいは上積みされていますから。1000あれば序列はほぼ確実に上がると思います。500だと、現状維持ということもあるでしょう」

つまり俺の序列がここまで大きく上がったということは、貢献度をマイナスにせず維持することすら、ほとんどのパーティにとって難しいということでもある。

「私たちのパーティは、2548位から4人並んでいましたが、今回ご一緒させていただいたことで、名前つきを倒した分も900ほど貢献度が入りました。そのおかげで、序列も1983位まで上がっています」

「おめでとうございます。一度の探索で1000というのは、七番区でもとても優秀な成績と言えます。アトベ様方は、色々な条件が噛み合うと、さらに大きな貢献度を出されますが……まだ、エンジンを温めている段階で2410というのは、破格だと思います」

スタンピードの際は5060という数値が稼げたが、あれは非常時なので多くの魔物を倒せたということが大きい。普通はそこまで魔物が密集していることはないので、ルイーザさんが言うように貢献度1000でも稼ぐのは大変だということだろう。

(グランドモール一体で50……信頼度ボーナスがなければ、レベルアップによる加算なんかを加味しても20匹近く倒す必要がある。それじゃ、相当苦労するな)

そして雑魚を倒しまくって貢献度を稼ぐことも、今の魔物の生息密度ではできない。美味しい狩場には人が集まるし、独占しようとする輩も出てきて奪い合いになる。

かといって過疎状態の狩場には、敬遠される理由がある。この七番区でも、敬遠されている迷宮が多いと考えられる――八番区から昇格した人たちの多くが足止めを食らうのだから、俺たちのまだ知らないリスクがあると考えられる。

「……ルイーザさん、今の七番区の序列一位は、『同盟』というものを作って、狩場を独占していると聞いたんですが。ギルドとしては、その状況はどう見られてるんでしょうか」

「アトベ様もお伺いになりましたか。一階ロビーでの勧誘については、ギルドの規則に反してはおりませんが、勧誘が長引く場合は守備兵が監視する場合もあります。特に女性の多いパーティに対して、グレイという探索者の方が強く参加を呼び掛けることがあり、ギルドに苦情が寄せられたこともあります」

グレイ――灰色の髪の、『フォーシーズンズ』を勧誘していた男。その名前が出て、リョーコさんの表情が明らかに曇る。

「……あの人たちが七番区の一位グループなんですよね。昇格したら、全員抜けていくんでしょうか」

「あまり他のパーティの情報を明かすことはできないのですが、彼らの活動は一位を目指す探索者の方全てに影響してきますので、差し障りのない範囲で説明させていただきます。まず彼らの同盟の名前ですが、『 自由を目指す同盟(ビヨンド・リバティ) 』と言います。団長は『ロランド・ヴォルン』、副団長は『ダニエラ・ヴォルン』という方です」

「ヴォルン……同じ名字ってことは、その二人は家族なんですか?」

「はい、ご結婚されています。ロランド氏は『 空挺師団(エアトループ) 』、ダニエラ氏は『 医師(ドクター) 』のジョブについています」

迷宮国入りしたときの職業は、何を書いても受理されるわけではない。つまり二人とも、前世で経験したか、適性のある職ということになる――元空挺師団というなら、初めからその肉体は鍛え上げられていただろう。

そして医師――まだ 治癒師(ヒーラー) の先生以外には 看護師(ナース) の人を見たくらいだったが、やはり迷宮国には、あらゆる経歴を持つ人が来ていると確認させられる。

「ロランド氏は八番区を短期間で抜けられましたが、七番区の序列1位になった時点で病気を患い、しばらく療養していました。奥様の治療もあって回復したのですが、二年の療養期間のうちに序列は最下位まで落ちてしまい、今は再び1位に復帰したところです。ブランクがあったとはいえ、現在もレベル7を維持していて、七番区では最高クラスの実力を持っています」

「それほどタフな人物でも、六番区に上がるのは容易なことじゃないんですね……」

「はい。昇格試験は、運も関わってきますので……七番区の迷宮でレベル6以上の『名前つき』を3体倒すこと、一ヶ月間でリーダーの貢献度が20000を超えることが昇格の条件なのです」

(貢献度はともかくとして……レベル6?)

俺と同時にリョーコさんも気づいたようで、戸惑ったようにこちらを見てくる。そして、彼女が代わりにルイーザさんに言ってくれた。

「ルイーザさん、今日遭遇した『名前つき』は、レベルが6だったんですが……私たちのパーティはあまり貢献できていませんが、昇格条件に数えても良いんでしょうか?」

「ええ、勿論です。おめでとうございます、あと二体で……いえ、簡単に言ってはいけませんね。名前つきと遭遇すること、そして倒すことの難しさを考えると……でも、アトベ様がたであれば、という気持ちでもおります」

俺たちの身を案じながら、ルイーザさんは不安な様子を見せまいということか、気丈な振る舞いをしてみせる。

六番区に上がるために急いだり、無理をしたりするつもりはない。しかし、ロランドという人物が『名前つき』に遭遇できずに焦っているとしたら――それは、少し気がかりではある。

「なるほど……そのロランドという人が貢献度を二万稼げるように皆でサポートしているってことですね」

「そのように考えられます。ロランド氏のパーティのみが六番区に上がったあと、貢献度を集中させるパーティを交代して、1パーティずつ上げていくということでしょう。そういったやり方は、よく行われていることではあります」

「勉強になりました。俺たちも、それに近いやり方をすることになると思います」

「っ……アトベさん、いいんですか? 私たち、まだ会ったばかりで、協力して探索していただけるだけでもとても助かっているのに、そこまでご迷惑をかけるわけには……」

リョーコさんが恐縮しきって、両手を振って遠慮する。その拍子にボアコートの前が開いて、下にある競泳水着姿が――と、改めて見るととても冷静になれない格好だ。

「あっ……す、すみません。こちらではファスナーがないので、ボタンだけで留めているんですが……留めていると煩わしいので、外していることが多くて……はしたなかったかしら」

「い、いや、そんなことは。こちらこそすみません」

コートを留める、動物の角のような素材でできたボタンは全開にされている。町中を歩くときは前を留めていたが、室内ですかさず外すとは――何というか、意外に大胆だ。

「アトベ様は、そういった水着がお好き……困ったわ、こういうのって町のお店で手に入るのかしら……」

ルイーザさんが手帳にメモを取っているが、俺はどう言えばいいのだろうか。水着に反応するたび、周囲の女性に勘違いをされている気がする。

そのうち何か大変なことにならないだろうかと案じるが、俺のために皆が水着を装備して見せてくれるなどと、そんなことはないだろう。日々探索、その中に水遊びをする余地など入りそうにない。『落陽の浜辺』などという、いかにも水着が適していそうな迷宮の名前が出てはいるが。

「そうなると、俺も水着を用意すべきですかね……」

「っ……ア、アトベ様、聞こえてしまいましたか。すみません、私ったら……」

「アトベさん、水泳の経験はおありですか? その、私で良ければ、コーチングでしたら嗜んでいますので……」

とても魅力的な提案だが、迷宮の中で水場があったとして、泳いでいるヒマなどあるのだろうか。

――安全に泳げる場所があれば泳ぐのかと言われれば、否定はできない。ひたすらストイックに迷宮に潜るだけでなく、息抜きも確かに必要だ。

しかし、ルイーザさん、リョーコさん――そして五十嵐さんという、普通に服を着ていても視線の向けどころに困る人が水着で揃ったら、俺は落ち着いていられるだろうか。

「アトベ様……どうされましたか? そうですよね、ギルド職員の私が、プライベートのご用事でご一緒するというのは問題が……」

「い、いや……それは全く問題ないですが。機会があれば、ぜひご一緒したいです。俺も転生する前、仕事の合間の息抜きに、ジムのプールを借りて泳いでいたので」

「それでしたら、基礎はもう身についていそうですね……じゃあ、私は応用編を教えてあげます。ビート板の代わりになるものも探さなきゃ……ふふっ」

ただ楽しそうにしているだけなのに、何か妙に色気があるのはなぜなのか。ルイーザさんとリョーコさんは、最初の対立ムードはどこに行ってしまったのか、今は和やかに笑いあっていた。確かに話せば仲良くなれるだろうと楽観視していたが、これほどに打ち解けるのが早いとは。

「では……もしよろしければ、機会のあるときにご一緒させていただけましたら嬉しいです」

「は、はい。ところでルイーザさん、水中に入ることが必須の迷宮ってあったりするんでしょうか?」

「はい、ございます。しかし水中に入れる探索者の方はとても少ないので、まだ手付かずの迷宮が多いのが現状です。そういったところを専門で探索される方もいらっしゃいますが」

『潜水士』なんていう職業の人もいるんだろうか。いつか沖縄でダイビングをすることが夢だった俺としては、水中に入る準備さえできれば興味を惹かれるところだ。

◆◇◆

ルイーザさんは仕事を終えてから食事の席に合流するとのことで、いったん別れるときに七番区の『箱屋』について教えてもらった。

赤い箱が三つ、木製の箱が二つ。八番区で入手したものも楽しみではあるが、新しい区の箱はさらに期待が高まる――『背反の甲蟲』の手強さから考えても、魔法の装備の一つ二つは入っていそうだ。

「私たちは、箱を開ける機会がほとんどなくて……それも普通の箱だったので、どんな箱屋さんでも開けられると言われました」

「箱にも開ける難度の違いがありますからね。八番区では、凄腕の箱屋さんにお願いしていたんですが」

「そうなんですね、今までも箱を見つけて……本当に凄いです。私達、一度見つけたときは飛び上がって喜んで……中から出てきたのは、ほとんどお金だったんですが。魔石が一つ出てきて、それでカエデちゃんの靴を強化できたんです」

「へえ、靴をですか……なるほど。あの強烈な速度の踏み込みは、靴につけた魔石の力でもあったわけですね」

そんなことを話しながら、ライセンスの表示を確認して、皆の待っている場所に向かう――すると。

仲間たちの現在地は『緑の館』から少し歩いたところにある、店の並んだ通りの一角。そこにある『ブティック・コルレオーネ』と表示されていた。シオンは店内に入れないようで、お座りをして留守番をしている――俺の姿を見ると一度だけ小さく吠え、尻尾をパタパタと振るので、頭を撫でてやる。

「ブティックってことは、みんな中で買い物してるんですかね」

「あ……すみません、アトベさん。私も買いたいものがあるので、少し行ってきますね。あの子たちを見つけたら、手早く買い物をして戻ります」

「はい、行ってらっしゃい……ん?」

店の前で待っているつもりだったが、奥のカウンターの中にいた店員らしき中性的な人物――化粧をしているが、たぶん男性だ――が出てきて、俺に話しかけてきた。

「あら、いらっしゃい。メンズも置いてるけど、見ていく? アタシがどこに出しても恥ずかしくないようにコーディネイトしてあげるわよ」

「い、いえ……あの、こちらの店員さんですか?」

「ええ、店主のコルレオーネよ。心配しなくても、あのコたちには女性店員をお世話につけてあるから。アタシは男を着飾らせることにしか興味がないの」

「は、ははは……俺はまあ、あまり格好には気を使わないので……うわっ!」

いきなりガシッと肩を掴まれる。ごく短く髪を切っており、体格が完全に男なので、コルレオーネさんに迫られるとかなり怖いものがある。

「……知らぬは本人ばかりなり、ね。あのコたちも大変だわ」

「え……な、何のことですか?」

「なんでもないわ。お金、持ってるんでしょ? 今のと近い型のスーツを売ってあげる。着てくれる人が見つかってよかったわ、迷宮国じゃ無骨な鎧なんかを着てる人ばかりだしね。できる男はスーツよ、そう思わない?」

濃い人物だが、ずっと着替えがなく、一枚でやってきていたスーツのスペアを作ってくれる店と、思いがけず巡り合うことができた。みんなも必要な服を買い揃えているのだろうから、俺もお言葉に甘えて、スーツを新調させてもらうとしよう。

「えっ……キョ、キョウカさん、なんですかそれ、頭にかぶれちゃうじゃないですか」

「っ……あ、あんまり大きい声出さないの。イブキちゃんとはあまり変わらないでしょう?」

「そ、そんなことないですよ、キョウカさんには敵わないです、あはは……」

「気が散るから、そういう話は控えめにして。落ち着いて選べないわ」

「エリーさんのように、できるだけ動きを阻害しないものを使用すべきです。カエデ、あまり派手なものは選ぶべきではありません」

「わっ……う、うち、別に派手なのなんか見てへんよ。そんな、誰に見せるわけでもあらへんし……ほ、ほんまやからね?」

「……別に阻害しないものを選んでるつもりじゃないけど。アンナ、あまり私を観察しないでね」

スーツの試着室に入ると、店の中の会話がどこからか聞こえてきてしまう。耳を澄まさなくても、さらに他のメンバーの会話まで聞こえてきた。

「うーん、可愛いのがあんまり……あ、これいいかも。スズちゃんはどう?」

「私はどうしてかわからないけど、普通の下着はつけられないから……あっ、ちゃんと私が使えるものも売ってる。良かった……」

「テレジアさんは……つけない? だめよ、型崩れしちゃうでしょう。でも、このスーツがぴったりしてるから大丈夫かしら……」

「…………」

職業によって装備できるものに差が――と想像しかけて、俺は頭を振る。そして試着室から出たときに皆と鉢合わせしないように祈りながら、新しいネクタイを締めた。