軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百二十七話 間合い/新たな技能・1

宿舎に戻ると、今日は疲れているだろうとのことで、一部屋別の部屋を割り当ててもらえることになった。ソファで寝ても平気な体質ではあるが、ご厚情に甘えることにする。

「有り難いですが、急に手配していただいて大丈夫でしたか?」

「今夜ばかりは、居間で休んでいただくわけには参りませんし。今後もできればベッドでお休みいただければと思います」

ルイーザさんが部屋を手配してくれたのだが、彼女は元の部屋で寝ることになっている。

「では、そろそろ私は……」

そう言ってルイーザさんが部屋を出ていこうとしたとき、ちょうどドアが控えめにノックされた。

「――失礼します。お部屋はこちらでよろしいですか?」

「はい、お待ちしておりました」

「……?」

ルイーザさんがドアを開け、誰かが入ってくる――さっき別れたばかりのマリアさんがそこに立っていて、手には大きめの鞄を持っている。

「支援者の方々は別のお部屋を使われているのですが、そちらがあいにくいっぱいで……マリアさんにはこちらに来ていただきました」

「ああ、そうだったんですか」

「不束者ですが、よろしくお願いいたします」

マリアさんがかすかに微笑んだ――ように見えたが、すぐにいつもの様子に戻る。ルイーザさんはなぜか俺とマリアさんを見比べている。

「……あっ、も、申し訳ありません。それではまた明日、よろしくお願いいたしますね」

「はい、お疲れ様です。明日もよろしくお願いします」

ルイーザさんが何か気にしていたように見えたが――と考えて、一つ確認しておかなければと思い当たる。

「マリアさん、ここで大丈夫ですか? 俺とテレジアも一緒ですが」

「はい、私は問題ありません……」

マリアさんはそう言いつつ、廊下の途中にあるドアを見る。そこは使っていないが、それぞれの個室ごとについている浴室だ。

「……すみません、お風呂をお借りしても良いでしょうか?」

「はい、どうぞ自由に使ってください」

「ありがとうございます」

すぐに入るということではないようなので、マリアさんを居間に案内する。

「今日はもう休まれますか? もう少しゆっくりされますか」

「探索でレベルが上がったので、スキルの相談をしようかと思ってます。テレジア、ちょっと時間いいか?」

「…………」

こく、とテレジアが頷く。それを見たマリアさんはまたくすっと笑う――最初と比べると笑顔が見られるようになったというのは、気のせいではないようだ。

「それではお茶を淹れさせていただきますね」

部屋にどんな設備があるか見ていないのだが、マリアさんはこの短い時間でチェックしていたらしく、お茶を淹れに向かう。

テレジアはこちらに歩いてくると、ソファの隣に座った。俺はライセンスを操作し、テレジアの技能を表示する。

「ん……?」

ライセンスに、今までにない表示が出ている。

『▼イビルドミネイトが取得予定技能から削除されました』

『特殊技能取得要件を満たしました』

「…………」

「『猿王』にかけられた呪いを解いたから、新しい技能が増えた……ってことか」

テレジアは何も言わずに、切り替わった画面を指差す。新しい技能は4つある――そのうち一つが『特殊技能』ということのようだ。

◆習得した技能◆

ダブルスロー アサルトヒット リバースエンド

リザードスキン1 アクセルダッシュ シャドウステップ

リリーストラップ 受け流し リバースグリップ

指先術2 索敵拡張1 警戒1 罠感知1 無音歩行

◆取得可能な技能◆

スキルレベル3

リザードスキン2:亜人の固有技能。一定時間の間『変身』を行い、個人の特性に応じて属性耐性が大きく変化する。変身中は固有の攻撃技能を使用することができる。

スケープゴート:自分が対象となった攻撃や技能を、他者を対象に変更する。

Sクライムブレイク:自分よりカルマ値が高い相手に防御を無視した打撃を与え、『罰則』の状態異常を付与する。必要技能:リバースエンド 必要条件:呪縛解除

スキルレベル2

ハイドヴァイパー:亜人の固有技能。隠れた状態で攻撃すると相手を足止めできる。

隠れる:敵に攻撃するまで全く気づかれなくなる。必要技能:無音歩行

ピックポケット2:相手に気づかれずに所持品を複数個盗めることがある。必要技能:ピックポケット1

罠感知2:罠を見抜く特殊な視界を手に入れる。必要技能:罠感知1

アンチボディ:毒などの状態異常を一定確率で無効化し、一定時間攻撃力と速度が上昇する。

ウェポンバイト:敵の武器攻撃を受け止め、成功すると武器を奪い取る。

☆アクセルゴースト:高速移動が可能になり、敏捷性に応じた回数だけ物理攻撃を無効化する。無効化した回数だけ反撃を行う。必要技能:アクセルダッシュ、シャドウステップ

スキルレベル1

ピックポケット1:相手に気づかれずに指定の所持品を盗めることがある。

縄抜け:拘束状態になっても脱出できる。

追い剥ぎ:敵が逃走しているときに攻撃が成功すると、素材などを奪い取る。

☆投具装備:特殊な投擲武器を使いこなせるようになる。

スキルポイント:5

スキルレベル3の欄にある『クライムブレイク』に『S』の表記がある――武具が持つ固有技能は『∪』の表記があったので、それとも異なる特殊な取得条件を持つ技能は、この表示になるということか。

「クライムブレイク……カルマが高い相手に対する攻撃か。場面によっては効果的だが……ん?」

テレジアはふるふると首を振っている。彼女のカルマは0なので『クライムブレイク』は効果を発揮できるはずだ――それより先に取るべき技能があるということか。

「この『アクセルゴースト』は良さそうなことが書いてあるな。テレジアがずっと使ってきた『アクセルダッシュ』の上位版みたいだ」

「…………」

テレジアは頷き、続けて『罠感知2』を指差す。

「できるだけ罠は看破できた方がいいってことか……それはそうだな。よし、『罠感知2』を取ろう」

再びテレジアは頷く。『クライムブレイク』の威力がどれほどかは知りたいが、まずは意見が一致した技能から取っていくべきだろう。

『アクセルゴースト』『罠感知2』を取得して、ポイントが1残った。スキルポイントはいくらあっても足りない――レベル10からは取得ポイントは4に増えると思うので、それが今から待ち遠しい。

「…………」

「ん? あっ……すみませんマリアさん、入ってきてもらって大丈夫ですよ」

「も、申し訳ありません……技能の取得は、機密情報だと思いますので」

お茶を持ってきてくれたマリアさんが、居間の入口のところで逡巡していた――つい集中してしまって待たせてしまった。

ハーブティの注がれたカップがテーブルに置かれる。熱いものが苦手なテレジアだが、よく冷まして少しずつ飲み始めた。

「私のレベルが上がることはそう無いと思いますが、もし上がった時は……ご相談してもいいでしょうか?」

「ええ、勿論。俺の判断が必ず正解とは言えないですが……」

「いえ、それはご謙遜かと」

マリアさんが即座に切り返してくる。彼女自身も自分の言ったことに驚いているようで、頬を赤くしつつ言葉を続けた。

「パーティの指揮を取られているだけあって、必要な技能をよく把握していらっしゃると思っていました。戦闘から離れて久しい私が言うことでもないですが……」

「何がどう噛み合うかは、やってみないと分からないっていうのはありますが。想定した範囲内の結果を出せると、達成感はありますね」

マリアさんは頷きつつ聞いてくれている――こちらをじっと見ているので、まだ何か話さなくてはという気にさせられるが、逆にお喋りな奴だと思われないだろうか。

「セレスさんやルカさんも強い人たちなので、もし可能ならレベル上げや維持のために一緒に迷宮に潜る……ってことも考えているんですが。もちろん安全は確保した上でです」

「その際は、私も参加させていただいても良いでしょうか?」

「マリアさんはレベルを維持するために『訓練探索』っていうのをしてたんですよね。それはどういったものなんですか?」

「戦闘で被害が出やすい魔物が出る迷宮は避けて、特定の迷宮に入って戦闘を行います。経験と貢献度は比例はしないのですが、戦闘に参加して有効打を与えるまではできなくても、貢献することでレベルの低下は防げますから」

マリアさんは詳細に渡って話してくれる――支援者のレベルについて事情を詳しく聞けるのは貴重な機会なので、こちらとしても興味深い。

「レベル維持のための探索は恒常的に需要があるので、それを専門に行っている方もいます。ギルドから報酬も出ますので」

「なるほど……今さらなことなんですが、各区には戦闘から離れているような人たちも多くいますよね。子供はレベルを上げるのは難しいですし」

「一度到達した区で生活基盤を作られた方を、老齢などで下の区に移動させるということはありません。ただ犯罪行為に巻き込まれることはありますので、高レベルの探索者が家族を比較的安全な区に移動させるということは行われています」

ファルマさんのような技術を持つ人が8番区にいたのは、そういった事情によるものらしい。エイクやプラムがもし探索者を志すとしても、レベル1の魔物がいる場所から始めるのが最善だろう。

「……よろしければ、お話の続きは後ほどお願いしても良いですか?」

「すみません、長々と話してしまって」

「いえ、私もお伺いしたいことはございますので。それでは一度外させていただきます」

マリアさんが居間から出ていく――そこに、ちょうど来訪者がいたようで、玄関の方から声が聞こえてくる。

『こんばんわー、お兄ちゃんのスキル相談室はここですか?』

『ミサキちゃん、またそんなこと……』

『はい、こちらになります』

『ほら、マリアさんが乗ってくれたよスズちゃん』

そんなやり取りをしつつ、入ってきたのはミサキとスズナの二人だった。もう寝る準備をしていたのか、二人とも部屋着姿だ。

「……お兄ちゃん、『先にシャワー浴びてこいよ』とかやってませんよね?」

「ぶっ……げほっ、ごほっ。出し抜けにそういうことを言うんじゃない」

「あー良かったー、お兄ちゃんにはずっとそのままでいてほしいから」

「ミサキちゃん、一緒にいる私のことも少しだけは考えてくれると……」

「わっ、スズちゃん顔真っ赤。もー、お兄ちゃんも罪な人なんだから」

ミサキは俺の隣に遠慮なく座り、スズナは対面に座る――まだ赤面しているが、俺と目が合うと照れ笑いをする。

しかし言われてみれば、テレジアがいるとはいえマリアさんも同室で夜を過ごすというのは、他の部屋のメンバーからすると気になるところか――自分で言うのも何だが、俺に限って変な気は起こさないが。

◆◇◆

「ふぅ……」

マリアはシャワーを浴びながら、先ほどまでのことを振り返っていた。

アリヒトに腕輪を渡し、そして返してもらった。マリアはそうしてもらった時に、自分が彼に対して言ったことを思い出した。

――専属として料理人を勧誘するとは、そういうことです。お分かりですか?

日頃の自分とは違う、人の気持ちを測るような言い方だったと思う。

アリヒトたちのパーティに出会い、料理人としてサポートを担当することになった時には、まだこんな選択をするとは想像もしていなかった。

(……あの人たちを見ていると、現役だった頃のことを思い出す。それは決して、良いことではないと思ったのに)

アリヒトたちが無事に帰ってきたことを、マリアは心から喜んだ。

そうすることができただけで、もう十分だと思っていた。五番区はアリヒトたちにとって通り過ぎる場所で、自分もその中で出会った一人でしかない。

「……どうして、今だったんでしょうね」

探索者が飛び級をして上の区に来るということは、そうそう起こることではない。そんなパーティの食事を担当することになったことも、彼らの信頼を得られたことも、全てが数奇な巡り合わせだと思える。

マリアはシャワーを止めて、浴室の姿見を見る。ほとんど光を失ったその目には、自分の顔もぼんやりとしか映らない――それでも。

彼女はまだ見ぬ迷宮の奥に思いを馳せ、仲間たちと過ごしていた頃の自分を思い出すことができていた。

「(……どんな人なんでしょう、アトベ様は。声を聞く限り、私より少し年上くらいでしょうか……かなり近づけば、ぼんやりとくらいは見えるのですが)」

マリアは鏡にそっと近づくが、相当に接近しなければほとんど見えず、ふう、と息をついた。

「(支援者にしていただくとなった途端に、少し浮ついていますね……落ち着かないと、不審に思われてしまいます)」

もう一度シャワーの水を出して浴びつつ、マリアはやはり落ち着かずに、なかなか浴室から出る決心がつかないままだった。

◆◇◆

まずミサキのライセンスを見せてもらうと、今回も新たな技能が表示されていた。

◆ミサキの取得可能な新規技能◆

スキルレベル3

ラッキーセブン2:発動してから7カウント目の行動がクリティカルになり、以降クリティカル率が上昇する。クリティカルが発生しなかった時点で効果は終了する。必要技能:ラッキーセブン1

スキルレベル2

キャリーオーバー:同一階層内での戦闘でドロップが取得できなかった場合、次の戦闘で得られるドロップの希少度が上昇する。

スキルレベル1

エンターテイナー:観衆の注目を集める職業に関わる基礎技能。対応する装備品の性能を引き出すことができる。

残りスキルポイント:6

「私もポイントを3使う技が出てきたんですけど、これって結構すごいことが書いてません?」

「確かに……クリティカルが発生し続ける限り、全ての行動がクリティカルになるってことか。クリティカル率の上昇はどれくらいなんだろうな」

「いわゆる『ゾーン』に入っちゃうってコトですか? それともフィーバーモード?」

「どっちも合ってるんじゃないか。この表記だとミサキ自身の行動に効果があるってことだな」

いわゆる『確率変動』が起きて、クリティカルを連発するようになるが、外せば効果は切れる。魔力の消費量にもよるが、強力な切り札になりそうではある。

「ミサキちゃんの新しい技は、全部すごい効果ですよね……どんなふうか見てみたくなります」

スズナも俺と同じ感想のようで、書いてあることを読むなり感心しきりだーーミサキは照れて、自分の頬を手で挟んで変顔をしているが。

「『キャリーオーバー』で意図的に希少度を上げていくとどうなるかとか、試してみたくはなるが。スキルレベル1でも気になるのは『エンターテイナー』だな」

「お兄ちゃんもそう思いました? この『観衆の注目を集める職業』に何があるか分かれば、取っちゃってもいいかなって思うんですけど」

「ミサキは『ギャンブラー』だから、本来の主戦場はカジノとかだよな」

「カジノ……お客さんを楽しませるための、ショーをする人ってことでしょうか?」

俺もスズナに近い意見だが、やはりどの職業が含まれるのかまでは分からない。他の皆にも聞いたほうがいい案件だ。

「『エンターテイナー』の対象になる職業次第では、ミサキの装備の幅が広がる。場合によっては他のスキルを優先する必要があるかもしれないから……」

「了解です、 保留(ステイ) ですね。資料館で聞いてみるか、それともギルドの人に聞くか……」

「そうだな、まずルイーザさんに相談してみてくれ。次はスズナの技能を見ていこう」

「はい、お願いします」

◆スズナの取得可能な新規技能◆

スキルレベル2

霊験:遭遇した神霊の恩寵を受けることができる。恩寵の効果の持続期間は場合によって変化する。

式神術1:霊格を呼び出して使役できる。霊格を呼び出すには『式札』か霊格に縁のある物が必要となる。必要技能:言霊

スキルレベル1

舞踊の心得1:『踊り』に関係する装備品の性能を引き出すことができる。

「えっ、ちょっ、めっちゃカッコいいのがあるんですけど!」

「えっ……そ、それってどれのこと?」

「式神っていったらなんていうか、色々呼び出しちゃうやつだよね。あ、でも魔物の人たちを呼び出すのとはどう違うんですかね」

「書いてあることを考えると、『式札』が必要みたいだな。霊格に縁がある物でもいい、か……」

「『霊能感知』でそういうものを見分けられるかもしれませんね」

まだ取得していない技能には、他にも『お祓い』『招魂』などがあるが、今回の新しい技能もどれも甲乙つけがたいものがある。

「『霊験』も場合によって役に立ちそうだし、難しいところだな」

「じゃあ、1ポイントの『舞踊の心得』は取っちゃっても良くないですか?」

「っ……ミ、ミサキちゃん、私、舞踊なんて得意じゃ……」

「そういえば『巫女舞』っていう技をまだ取ってなかったな。前に取った『神楽』も踊りに関係がありそうだし」

「あっ……そ、それは確かにそうですね。『神楽』はまだ使う機会がなかったですけど……」

「ということはやっぱり保留ですかね。『踊り』関係の装備が手に入ったら取ってみたいですよねー」

ミサキは無邪気な顔だが、スズナは俺の反応をうかがっているーー迂闊なことは口走れない。

「装備の更新は重要だからな。技能で装備の幅を広げられるなら、試す価値はある」

「そうですね……わかりました。そういった装備品が見つかったら、取ってみます」

「はふぅ……技のお試しができたらこんなに悩まないんですけどね。とはいえ、私たちのチームって今の時点でもつよつよですから? 旅団チームには負けないですよ」

「……何というか、ミサキを見てると……」

本当に、何も心配する必要はないんじゃないかと思えてくる。こんなムードメーカーであるミサキは、『エンターテイナー』を習得するにふさわしいーーなんて、今はまだ決められないが。

「お話の途中、失礼いたします。お風呂を頂きました」

「ああ、お疲れ様です。俺たちもちょうど話が終わったところです」

「じゃあ、私たちはお部屋に帰りますね。テレジアさん、また後でねー」

「お休みなさい、三人とも」

ミサキとスズナが連れ立って出ていく。テレジアはそれを見送ったあと、マリアさんの方をじっと見ているーー遅れて気付いたが、バスローブ姿で待たせてしまっている。

「す、すみません、俺は席を外しますね」

「……? いえ、大丈夫ですが」

「…………」

テレジアが無言でマリアさんに近づいていき、バスローブの前をしっかり正すーー視力がほとんど失われてしまったと言っていたマリアさんは、風呂上がりの自分の格好に頓着が無かった。

「も、申し訳ありません、お見苦しいところを……」

「いや、俺の方こそ本当に申し訳ない」

「いえ、私の方が……」

譲り合いになってしまったところを、テレジアが何か言いたげに俺とマリアさんを交互に見る。どうやら、間を取り成そうとしてくれているようだ。

「……アトベ様は、もうお休みになられますか?」

「あ、いや……いつもと言ってはなんですが、ソファで寝るのに慣れてますから、マリアさんは寝室を使ってください」

なるべく朗らかに言ったつもりだったが、マリアさんが止まっているーー怜悧な瞳に射抜かれ、容易に動くことができない。

マリアさんはスッと動き出し、あれよという間に目の前までやってくる。

「私は支援者であり、アトベ様は探索者なのですから。休息の優先度についてはしっかりと認識してください」

「は、はい……すみません、軽率でした」

「……よろしい。と言えるような立場ではないのですが」

マリアさんは満足そうに笑って、洗面所に向かう。どうやら髪を乾かしているようだ。

「…………」

「い、いや……そんなに見られてもだな……」

テレジアの物言いたげな様子に、深く反省せずにはいられないーーと、テレジアは何かに気づいたように、マスクの下の口が何かを言うように動く。

ミサキたちがいるときはテレジアは席を立っていたが、再び隣に座ってくる。何事かと少し考えたが、ライセンスを取り出して見せてみると、彼女はこくりと頷いた。

「俺の新しい技も見ておいた方がいいってことか」

『猿王』との戦闘中にスキルポイントを使ったため、選択できるものがあるかはわからないが、新しい技能を見ておくのは大事だ。

彼女も楽しみにしてくれているように見えるーーが、それは俺の贔屓目というやつだろうか。そんなこんなのうちにマリアさんが就寝着に着替えてこちらにやってきた。