軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百八十三話 技能ミーティング・3

対面に座っていたミサキは、何か思うところがあったのか、俺がライセンスを見始めると席を立って、隣に座ってきた。

「この方が見やすいですから。えへへ、他意はないですよ?」

何か嬉しそうに見えるのが他意のようにも思うのだが、細かいことは言わないでおく。

◆取得可能な技能◆

スキルレベル2

・エクストラターン:指定したパーティメンバーの行動を一度だけ代行することができる。

☆ポットリミット:対象が魔物の攻撃で致命的な被害を受けたとき、戦闘不能にならない範囲に軽減することができる。軽減した被害の半分を使用者が代理として受ける。一度の探索で一度しか使用できない。

スキルレベル1

・ロシアンルーレット1:敵味方問わず、当たった相手の体力を半分にする。

・ポーカーフェイス:相手に感情を読み取られなくなる。

・幸運予測1:良いことが起こる方向を少し感じ取る。

・コイントス:コインの裏表を味方に当てさせ、当たると運気が上がる。

・スモールベット:戦闘中に体力、魔力を他者に分け与える。勝利後に2倍回復する。

☆ダブルドロー:カード系武器で一度に2回攻撃ができる。

☆ギャンビット:コイントスで裏が出たとき、戦闘開始時に敵に先攻させる代わりに、敵の初回行動を通常攻撃に限定する。必要技能:コイントス

☆ピックロトリー:迷宮内で採取行動を行ったとき、希少素材の発見率が上昇する。

残りスキルポイント 3

「ほぁ~……って、私もちゃんとどれにしようか考えてたんですよ。でも、トリッキーなのばっかりで迷いまくりなんですよね」

「改めて『ギャンブラー』って職業は、奥が深いな。なかなか代わりの効かない技能ばかりじゃないか」

「あー、駄目です駄目です、そうやって褒められると私ってすぐ調子に乗っちゃうので。でももっと褒めてください」

ミサキはこちらに向けて小首をかしげる――頭を撫でてくれということか。甘やかしすぎなような気もするが、とりあえず軽くポンポンと撫でる。

「はぁ~……お兄さん、めっちゃソフトタッチですね。でもちょっと短すぎません?」

「ま、まあ慣れてないからな……」

「私に対してはそうかもしれませんけど。ね、テレジアさん」

「…………」

こちらをじっと見ていたテレジアが、蜥蜴マスクの頭の部分に手を当てている。なんとなく考えていることが伝わって、俺の方まで照れてしまう。

「コホン……脱線はそれくらいにしておいて。ミサキはどの技能が必須だと思う?」

「今持ってる技能だけでも、十分活かしきれてない気がするんですよね。さっき使っておけばよかったーって後から思ったりして。『マジックナンバー』も、取ったはいいけどまだ一度も使ってないんですよねー」

「まあ、パーティゲーム用みたいな技能だしな……仲間に命令できるっていうのは、使う場所は限られてくるだろうな」

ミサキはミサキで、探索のあとで色々と反省点を見つけたりしていたようだ。

彼女の技能はとりあえず使っておいて損はないという効果のものが多い。『ダイストリック』と『ラッキーセブン1』を組み合わせれば、確実に何か恩恵がある。

そのうちまたサイコロの目に関係する技能が出てきそうだが、現状では無いようだ。どれも使い所次第で効果を発揮しそうだが――『ポットリミット』は窮地において有効ではあっても、ミサキが怪我を負う点が難点となる。

「『ギャンビット』……これは使えそうだけど『コイントス』が必須になるし、先攻されるリスクがあるか」

「場合によってはぴったりハマりそうですよね。でもやっぱり、レベル2のスキルはこれだっていう風格がありますよねー……『ポットリミット』ってヤバくないです?」

ミサキが自分からその技能に触れる。取得する操作をしようと指を動かしてから、彼女は苦笑して止めた。

「そんな真面目な顔で見られてるとドキドキするじゃないですかー」

「その技能は、他のメンバーが致命傷を受けたときに庇う技能だ……だけど、ミサキも無事では済まないと思う」

体力を全て奪われるような打撃、その半分を代わりに受ける――それは、体力の高いメンバーをミサキがかばったとき、ミサキも命を落とす危険があるということだ。

「私って、全然痛い思いとか今までしてこなかったので。いえ、全員を巻き込んじゃうようなのをやられたときはもうすぐにパニックになっちゃってますけどね。そんな私でもですね、八番区でお兄ちゃんに羽根が刺さったときとかは、その痛さを半分分けてもらいたいなって思ったんですよね。だからこの技能が出てきたんじゃないかな……なんて、思ったりしてるんです」

「……ギャンブラーだからって、そんな賭けまではしなくていいんだぞ」

「はーん、私だってお兄ちゃんの盾になりたいんですからね! とか言って点数稼ぎしちゃったりして」

冗談めかせているが、ポイントを残しておいたら、ミサキは仲間が窮地に陥ったとき『ポットリミット』を取得して使うつもりなのだろう。

「ピンチに使える技能も大事だが、汎用性の高い技能を覚えるのも大事だと思うよ」

「はんようせい?」

「日頃から役立つ場面が多い技能っていうことだ」

テーブルに漢字を書くと、ミサキはああ、と手を打った。知らなかったわけではないようだが、ふと記憶から出てこないということはままある。

「汎用性、汎用性……えっと、じゃあこれって良さそうです? 『ピックロトリー』」

「ロトリーは確か、宝クジってことだな。素材を採取したときに当たりが見つかりやすくなるのか。確かに良さそうだ」

「これってあれですよね、トリュフを探すブタさんみたいな……」

「鼻が効くというよりは、いい素材がある場所を勘で見つけやすくなるんじゃないかな」

おおー、とミサキが感嘆の声を上げる。俺も推測で言っているので、その通りかはわからないが。

「装備を強化するために『真銀の砂』を取りに行こうと思っているから、『ピックロトリー』は役に立ちそうだな」

「分かりました、じゃあ取っちゃいまーす。えいっ! ……くんくん、お宝発見しました!」

「そんなベタなことをされてもだな……」

ミサキは俺の方に身を乗り出してきて、二の腕あたりに鼻先を近づけてくる。特に嗅がれても問題はないと思うが、誰かに見られたときの方が問題が――と考えたところで、テレジアと目が合う。

「…………」

「あ、テレジアさんがお兄ちゃんの匂いを嗅ぎたそうにこちらを見ている! 嗅がせてあげますか? はい!」

「選択の余地がないんだが……ミサキ、テンションをむやみに上げないようにな」

たしなめると、ミサキはぺろっと舌を出しておどけると、ソファから立ち上がった。

「メリッサさんは、今日は技能見られないんですか?」

「あとで貯蔵庫に行って様子を見てくるよ。今夜中に打ち合わせしておいた方がいいからな」

「了解道中膝栗毛! おやすみなさーい」

「ははは、おやすみ」

たまに思うのだが、ギャル語を使う女子はものすごく頭の回転が早いのではないだろうか。そう思う俺も年を取ったということなのか――と、複雑な気分になっている場合ではない。

「…………」

テレジアは立ち上がり、俺の座っているソファに移動してこようとして――なぜかソファの後ろを通って、回り込んできてから向かい側に座った。

「ん、どうした? 対面の方が話しやすいかな」

「…………」

テレジアは頷きを返す。そういうことなら俺も構わないが、一回こちらに来ようとしたようにも見えたのだが、それは気のせいだったか。

今のところ、呪印による体調の変化などは見られない。過剰に心配しても重荷になると分かっているが、常に思考の片隅にはそのことがある。

「じゃあ……テレジアの新しい技能を表示するよ」

こくり、とテレジアが再び頷く。俺はライセンスを操作して、俺とテレジアのどちらからも見られるように横向きに置いた。

スキルレベル3

×リザードスキン2:亜人の固有技能。一定時間の間『変身』を行い、個人の特性に応じて属性耐性が大きく変化する。変身中は固有の攻撃技能を使用することができる。

×スケープゴート:自分が対象となった攻撃や技能を、他者を対象に変更する。

スキルレベル2

ハイドヴァイパー:亜人の固有技能。隠れた状態で攻撃すると相手を足止めできる。

隠れる:敵に攻撃するまで全く気づかれなくなる。必要技能:無音歩行

ピックポケット2:相手に気づかれずに所持品を複数個盗めることがある。必要技能:ピックポケット1

罠感知2:罠を見抜く特殊な視界を手に入れる。必要技能:罠感知1

アンチボディ:毒などの状態異常を一定確率で無効化し、一定時間攻撃力と速度が上昇する。

ウェポンバイト:敵の武器攻撃を受け止め、成功すると武器を奪い取る。

☆リバースエンド:『受け流し』が成功したとき、反撃が必ず命中し威力が倍加する。必要技能:リバースグリップ

▼イビルドミネイト:『呪詛侵蝕』が完了したときに自動的に取得する。所属しているパーティから外れ、呪詛の使用者に従属する。進行度:8

スキルレベル1

ピックポケット1:相手に気づかれずに指定の所持品を盗めることがある。

縄抜け:拘束状態になっても脱出できる。

☆リバースグリップ:重量の軽い刃物を逆手に持つ。クリティカル確率が上昇する。二つ武器を装備すると攻撃力が上昇する。

☆追い剥ぎ:敵が逃走しているときに攻撃が成功すると、素材などを奪い取る。

スキルポイント:3(▼2)

「……っ!」

その表示を見たとき、胸にこみ上げてくる怒りをどうすることもできなかった。

『赫灼たる猿侯』の呪詛は、探索者にとって最も重要なスキルにまで干渉し、そして自由を奪おうとしている。

テレジアの技能を確認するまで、その事実に気づかずにいた俺は、外から見ただけで彼女の様子が変わっていないと安堵していた。

「…………」

テレジアは『イビルドミネイト』の項目には触れず、スキルレベル3のスキルについている『×』を指し示す。

「エリーティアの技能にも同じ表示が出ていた。呪いがかかっていると、取得できる技能に制限がかかるみたいだ」

テレジアはそのままライセンスを見ていたが、こちらを見てこくりと頷く。

そして彼女は、『リバースグリップ』『リバースエンド』の技能を続けて指さした。

今も攻撃系の技能は充実している。スキルポイントの自由が効かない状態で、本来なら取得を急ぐことはない――それでも、彼女は攻撃役としての自分を強化しようとしている。

すぐに言葉が喉から出てこなかった。ありがとうとか、テレジアの意見に賛成だとか、どれも綺麗ごとのようにしか思えなかった。

「…………」

「……ああ。テレジアは『猿侯』の後ろを取ってくれたし、『ハイドアンドシーク』が修復できれば、もう一度裏に回って『アサルトヒット』との重複を狙うこともできる。『バタフライリング』で発動する『蝶の舞』も……」

テレジアは新しい装備を手に入れたり、技能を覚えればそれを活かす立ち回りをしてくれる。どうすれば技能を活かせるのかを、俺が事前に細かく言う必要はない。

そう分かっていても、言わずにいられなかった。それが自分の弱さだとも分かっていた。

「…………」

テレジアはもう一度頷くと、二つの技能を取得する。攻撃役としての役割を果たすとすでに決めていたのだろう。

『猿侯』の持つような危険な技能を防ぐような技能。命を落とす危険を遠ざける、防御に使う技能。テレジアがそういったものを取得できればとばかり思っていた。

「……攻撃は最大の防御とも言う。そういうことだな、テレジア」

「…………」

テレジアの口元に、かすかな笑みが浮かぶ。ほんの一瞬だけ見えては消えてしまうその感情は、亜人であるがゆえに抑えつけられているのだろうか。

「あとは、俺自身の技能を考えないとな。テレジアは何か飲むか?」

休むようにと言っても、きっとテレジアは俺が起きている限り眠らないだろう。

しかしテレジアは今度は頷かず、そのままでいる。今は必要ないということなら、と俺は技能の検討を始めようとする。

◆取得可能な技能◆

スキルレベル

☆◆×○※3:詳細不明の技能

☆隼の眼:後列にいるときに状況把握能力がさらに向上し、射撃能力が向上する。使用者が敵の弱点を突いたとき『オーバータイム』が発生する。必要技能:鷹の眼

スキルレベル2

バックスリップ:前にいる相手の速度を短時間だけ上回って行動できる。

バックオーダー:自分の魔力が足りないときに、仲間から分け与えてもらうことができる。

アシストドール:前にいる味方の作ったゴーレムなどを強化できる。

バックドア:撤退時に敵の情報を常時取得できるようになる。必要技能:バックスタンド

☆支援回復2:前にいる仲間全員に、自分に対する回復効果を適用する。体力、魔力のみを回復することができる。30秒に一度使用することができる。必要技能:支援回復1

☆支援高揚2:前にいる仲間の士気が徐々に上昇するようになる。パーティの士気限界値が上昇する。必要技能:支援高揚1

スキルレベル1

支援魔法1:前にいる仲間の魔法を、50%の消費魔力・威力で重ねがけする。

支援回避1:前にいる仲間がまれに『絶対回避』を発動する。

支援招集1:近くにいるパーティを後方支援として招集する。

後ろの正面:魔力を5ポイント消費し、一定時間後方まで視界が広がる。

バックパス:攻撃を後ろに受け流す。後ろに対象がいる場合にしか発動できない。

バックドラフト:後ろから攻撃されたとき、自動的に反撃する。

☆タクティカルリロード:射撃武器に次弾を装填する速度が向上し、前回の射撃で使用した魔力が回復する。取得条件:射撃武器で魔力を使う技能を頻回使用すること、特定の職業であること

残りスキルポイント:5

(技能の詳細が不明……『3』がついてるが、これをそのまま数字として受け取っていいのか? これも表示がおかしいのか……?)

詳細不明な技能を取ってみることはできるが、今は確実に効果のわかる技能を優先した方が良さそうだ。

『隼の眼』も是非取りたいが、『オーバータイム』がどういうものなのかが分からないと踏み切れない。技能を試験的に取得できたら、一度使って試すこともできるのだが。

戦闘中に、俺の攻撃行動と合わせて魔力を回復できる『タクティカルリロード』。これと一緒に『支援回復2』を取ることで、戦闘中に魔力が枯渇する危険が大幅に減るのではないだろうか。

『支援高揚2』はおそらく士気が最大値に達するまでの時間も短くなるだろうし、限界値が増えることによる良い効果もあるかもしれない。しかし『支援高揚1』でも、事前に準備をしておけば士気解放は使える。

『支援魔法1』『支援回避1』も、取れば役に立つだろうと分かっている。他の技能も――しかし、多数の未取得技能がある中で、土壇場で必要なものを選べるのか。

「…………」

「ん……?」

集中していたので、目の前のテレジアがいなくなっていることに気がつかなかった。

また部屋の隅に行ってしまったのかと振り返ろうとして、肩に手を置かれる。

「…………」

「……すまない、怖い顔してたかな」

テレジアが気遣ってくれたように思い、そう言った。表情や仕草を見なければ、テレジアの考えは読み取れない。

「……すぅ……」

首の後ろに、くすぐったいような吐息がかかる。

息を吹きかけられたとか、そういうことじゃない。テレジアが首の後ろあたりに顔を近づけて、何かをしている。

もしミサキが言っていた通りのことを、テレジアが考えていたのなら。今、彼女がしたことは――。

「え、ええと。風呂には入ったけど、それは少し……」

「…………」

テレジアは何も答えない。いつもなら逃げていってしまうところなのに、俺が座ったまま振り返っても、その場から動かずにいる。

蜥蜴のマスクから見える口元。それが何かを言おうとして動き、けれど音にはならない。

「……っ」

急にテレジアが慌てたように頭を下げる。

いつも一緒に風呂に入ろうとして、俺の言うことを聞かない。そんな彼女が、今頭を下げているのは何のためなのか。

俺はもっと、自分の考えていることを伝えなければならない。ソファから立ち上がっても、テレジアはまだ頭を下げたままだ。

「謝らなくてもいいんだ。そういうことで、遠慮しないでいい」

「…………」

テレジアはすぐには動かなかった。恐る恐るという様子で頭を上げると、テレジアは自分の胸に手を当てる。

蜥蜴のマスクに手を置いて撫でてやると、テレジアは思い出したように赤くなっていく。それでもじっとしたまま、テレジアは胸に当てた手を下ろし、俺のシャツに触れた。

シャツをつまむようにしたままで、テレジアは俺を見上げる。俺が手を離しても、テレジアは手を離さない。

「今日はテレジアもゆっくり休むんだ。俺が見てるからな」

「……っ」

テレジアは首を振る。何も言わなかったら、今日も俺が寝ているうちに見張ってくれていて、自分が眠る時間を減らしていただろう。

「こう見えても徹夜には強いからな。そんなこと言ってて寝落ちしたら、格好がつかないか」

「…………」

もう一度、テレジアの口元に微笑みが浮かぶ。今度のそれは、すぐに消えてしまうことはなかった。

俺たちのパーティには、回復を専門とする職業が欠けている。『支援回復』やポーションだけではカバーしきれていない――現状でこの問題に全く対処しないことは、やはり考えられない。実際に、スズナの魔力が枯渇して行動不能になりかかるという窮地もあった。

『支援回復2』と『タクティカルリロード』を取得する。俺のレベルが『猿侯』との戦いまでにさらに上がることは考えにくいため、土壇場で取得するとしてもスキルレベル2までになる。

「…………」

「……テレジア、そろそろいいかな」

ずっと俺の服を離さないままなので、控えめに言ってみたのだが――今度は服ではなく、腕をそっと引っ張られて、ソファに座らされる。

「…………」

今度は、後ろから肩を揉まれる。ぎゅっ、ぎゅっと握るような変わったやり方だが、それゆえに落ち着くものがあった。

何か、さっきと同じくらい近くにテレジアの気配をすぐ後ろに感じる。ミサキの影響か、それともずっとそうしたいと思ってくれていたのか。

どちらかは分からないが、今は何かを言うことも野暮に思えて、もう少しだけこのままでいることにした。