軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75話 白いリッグル

「白いリッグルなんて珍しいわね」

普通のリッグルは、色の濃淡はあってもみんな綺麗なオレンジ色だ。

フィルの指す一羽だけが白い。

「普通のリッグルとは違うのかしら?」

レナリアの呟きを聞いたポール先生が、おや、という風にレナリアの視線の先を追う。

「うーん。あの子はお勧めしないかな」

困ったように言うポール先生に、レナリアはなぜだろうと不思議に思う。

確かに少し体が小さいが、小柄なレナリアにはぴったりだ。学園の牧場で生まれたリッグルならば、血統だってそう悪くはないはずだ。

「どうしてですか?」

レナリアの疑問に、ポール先生はレナリアに頭を下げたままのたくさんのリッグルを見る。

そのどれを選んでも、優秀なリッグルであるのは間違いない。

今まで何度もリッグル選びに同行してきたが、いつもは既に他のクラスの生徒たちが選んだ後だったから、これほど素質のあるリッグルの雛を目にする機会はなかった。

いつもは体が小さかったり、足が遅かったりと、少し素質の劣るリッグルばかりだったのだ。

レナリアがあの白いリッグルに目を留めたのは意外だが、せっかく優秀なリッグルをパートナーにできる絶好の機会なのだ。

ポール先生は、レナリアはもちろん、風クラスの生徒全員に最高の一羽を選んで欲しいと思っていた。

「白い個体は稀に生まれるけど、足が速くても羽が大きくならないんだよ。だから一、二年次は圧勝するけど、三年からは勝てなくなってしまうかな」

「まあ」

エレメンティアードでは三年生から空中戦が行われる。確かに羽の大きさは大切だ。

「今までに、羽が育つ可能性に賭けて白いリッグルをパートナーに選んだ生徒は何人かいるけど、どの子のリッグルも育たなかったから、そういう個体なんだと思うよ」

羽が育たないと聞いて驚いたが、それならばフィルがお勧めしてくるはずがない。

レナリアはフィルに説明を求めた。

「だからさ、リッグルは風魔法を使うから、風の魔素をたくさん集めないと羽が育たないんだよ。あの白い子は、凄く大きい翼になるから、たくさんの風の魔素が必要になるってわけ。でもそれほどの大きさの魔素を集められるのって、レナリアと契約したボクだけだと思うよ」

えっへん、と胸を張ったフィルは誇らしげだ。

褒めて欲しいと全身で言っているので、もちろんレナリアはそうする。

(凄いわ。じゃあフィルがいるから、私はあの子を選んだほうがいいのね)

「うん。その通り!」

「そのとーりー!」

更に胸を張るフィルの横で、チャムも真似をして胸を張る。

そしてコロンと後ろに転がった。後ろに反り過ぎたらしい。

てへっ、と舌を出して起き上がると、もう一度フィルの横に並んで胸を張る。

(二人とも、頼りにしてるわね)

精霊たちの可愛らしい様子に、レナリアは胸がほっこりとした。

「任せて!」

「任せてー!」

フィルの羽の色が喜びで虹色に、チャムの体が真っ赤になった。

「ポール先生、私はやっぱりあの子を選びたいと思います」

「……最低でも五年間は一緒に戦うパートナーだよ?」

途中でリッグルを交換することは許されていない。

リッグルが病気で死んだ場合などは例外として認められるが、頑丈で丈夫なリッグルは滅多に病気には罹らないのだ。

だから一度選んだら、六年生の個人戦まではずっと同じリッグルでエレメンティアードに参加しなくてはならない。

「はい。分かっています」

レナリアはきっぱりと断言すると、頭を下げ続けるリッグルの間を抜けて、端の方にいた小さなリッグルへと向かっていく。

レナリアが近づくと白いリッグルは顔を上げた。長いまつ毛の奥にある大きな黒い目に、小さなレナリアの姿が映る。

しばらく見つめ合った後、リッグルの雛はゆっくりと頭を下げた。

レナリアはそっとその頭をなでる。

ほわほわと柔らかい羽毛から、ほんのりと暖かさが伝わってきた。

「あなたの名前はラシェよ。古語で『白』という意味なの」

「キュルル」

レナリアがラシェと名づけたリッグルは、承知したとでもいうように高い声で鳴いた。

ぞろぞろとレナリアについてきたリッグルたちは、レナリアが他のリッグルを選んだのが分かったのか、ポール先生たちの方へと戻っていった。

なぜか一緒に集まってきていた成鳥たちは、それぞれ散らばっていく。

レナリアはみんなも相性の良いリッグルを選べるといいわと思いながら、同級生たちの様子を見る。

レナリアの時のように一人に集中しているわけではなく、数羽が一人の生徒に頭を下げている状態だ。

その中でもランスとマリーに頭を下げているリッグルが多い。

ランスはどのリッグルが一番強そうか真剣に悩んでいて、マリーはどの子を選べばいいのか分からずにおろおろしている。

ローズはポール先生の助言で一羽を選び、エリックは勘で選んだ。

エルマはエアリアルからの助言をどうすればいいのか悩み「ミア、いいと思うリッグルのところに落として!」と、ちぎった草を空に放り投げて、落ちた場所にいたリッグルを選んだ。

それを見たランスとマリーも同じようにエアリアルに助言を求め――。

そうして、風魔法クラスの全員が、無事に自分のリッグルを選び終わった。