軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

119話 土の精霊・ノーム爆誕

「小型のペンの製作というのはいいね。じゃあそれでやってみようか。魔石は木か、土の属性がいいね」

ポール先生は小さい魔石ならたくさんあるよと言って、教室の一角にある鍵のかかった棚へ向かう。

引き出しの中からは、ジャラジャラと小粒の魔石がたくさん出てきた。

「ペンに使うインクは、草や鉱石から採ることが多いんだ。だから木か土の属性の魔石を選んで作ってみようか」

ポール先生はその中から緑と茶色の魔石を選ぶと、教壇の上へ置く。

「まずは発案者のレナリアさんから選んでごらん」

「分かりました」

レナリアは立ち上がって教壇へ向かうと、じっくりと魔石を見る。

どれも小粒だけれど、比較的色が濃く、質の良い魔石だ。

(フィル、どの魔石がいいかしら?)

「緑のやつかなぁ。ボク、土の属性とはあんまり相性が良くないんだよね。魔素を集めるくらいだったら簡単だけど、魔法紋を刻む手助けは下手かもしれない」

確かに風と土はあまり接点がなさそうだ。

でも……とレナリアは考える。

レナリアの場合は魔力が多すぎて失敗することが多い。

ならばうっかりするとたくさんの魔力を流してしまう、相性の良い魔石よりも、フィルとは相性が良くない土の魔石を選べば、失敗も少なくなるのではないだろうか。

少なくとも、魔力を流し過ぎないように神経をとがらせる必要はない。

そう思ってレナリアは茶色い魔石をじっと見た。

魔石は、力のある魔物を倒した時に落とすか、魔素の濃い場所に自然に発生するかのどちらかだが、自然に発生するものは稀少で、内包する魔力が多く純度も高い。

さすがに自然にできた魔石はないようだが、レナリアが見る限り、ポール先生が選んで持ってきたのはなかなか良い魔石のように見える。

加工されておらず楕円形のままの魔石は、どれを選べばいいか迷ってしまう。

(ねえ、フィル。木の魔石だと魔法紋を刻む時に魔力をこめすぎてしまいそうだから、土の魔石にしようと思うんだけど、どれがいいかしら)

「ああ、そっか。レナリアの魔力だと魔石を粉々にしちゃいそうだもんね。そうだなぁ……」

フィルはパタパタと飛んで、教壇の上の魔石を選びながら魔石を吟味する。

チャムもフィルを見習って、魔石の横で首を傾げたり匂いをかいだりしている。

(チャム、何か匂いがするの?)

気になったレナリアが尋ねると、チャムはしっぽをピンと伸ばした。

「ううんー。おいしい匂いはしなーい」

(そ、そう……)

どうやらチャムは食べられるかどうかを確認していたらしい。

だが魔石は食べ物ではない。

チャムは魔石の間をぴょんぴょん跳ねていたが、卵のような魔石の上で「あれー?」と首を傾げた。

「チャム、どうし――うげっ」

立ち止まったチャムの元へ飛んできたフィルは、チャムの視線の先にある魔石を見て、蛙が踏みつぶされたような声を上げる。

レナリアもどうしたのだろうかと見てみるが、特に変わった魔石には見えない。

「なんでこんなとこに、こんなのがあるんだよ。レナリア、これは絶対に触っちゃ――」

(え……?)

よく見てみようとレナリアが魔石を指でつまむと、凄い勢いで魔力が指先から魔石に流れていく。

「うわぁぁぁ。レナリア、すぐ離して!」

(ええっ?)

フィルの焦ったような声に驚いたレナリアはすぐに魔石を離そうとしたが、なぜか魔石は指から離れない。

(フィル、離れないの。どうしよう)

「ああああああ。最悪だぁぁぁ」

頭を抱えるフィルに、何かとんでもないことが起きているのかと、レナリアは怖くなった。

だがチャムはのほほんと、魔石を指でつついて笑っている。

「あー。生まれるよー」

(生まれる???)

目を瞬いたレナリアの目の前で、魔石からポンと何かが飛び出した。

銀色の塊は、ぽわぽわしていて、タンポポの綿毛のようにも見える。

驚きながらも、もしかしてエアリアルだろうかとよく見ると、綿毛がレナリアに向かってきた。

チャムよりも少し小さい綿毛は、よく見ると小さなウサギだった。耳と鼻と足の先だけが少しだけ黒い。

ウサギは鼻をヒクヒクさせて、レナリアの匂いを嗅いでいる。

(フィル、この子は一体……)

「原始の土の精霊だよ。なんでこんなとこで眠ってたんだ……」

(原始の精霊?)

「ほぼ魔素の塊だから、言葉は通じない……はずだけど、レナリアの魔力で孵ったからどうなるんだろう」

(魔素の塊ってどういうこと? このウサギはノームなの? 孵るって?)

フィルを質問攻めにするレナリアの耳に、エルマがポール先生を呼ぶ声が聞こえた。

「せんせー。ちょっと窓を開けてもいいですか?」

「少し暑くなってきたね。どうぞ」

教室を見回したポール先生の許可を受けて、エルマが教室の窓を少し開けた。

するとレナリアの目の前のウサギが、耳をピンと立てて直立する。

そして再び鼻をひくひくと動かして、窓のほうを見る。

それからぴょんぴょんと飛び跳ねて、窓の外へと行ってしまった。

「しまった。逃げた! チャム、追いかけるぞ」

「分かったー。かけっこー!」

「遊びじゃないからな」

「お仕事ー!」

慌ただしくフィルとチャムがウサギを追いかけて行ってしまう。

残されたレナリアは、何がなんだか分からずに、魔石を手に取ったまま呆然としていた。