軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106話 コミカライズ開始記念SS 聖主座国の教皇、ユリウス

ロイド・クラフトは鏡の前でため息をついた。

学園で禁止されている火魔法による攻撃で停学を受けているロイドは、聖主座国に戻り謹慎を余儀なくされていた。

大司教を務める父を始め、家族はみんな停学処分を受けたということで、ロイドを腫れ物のように扱った。

家族だけではない。

居丈高な態度ばかりをするロイドは、そもそも使用人たちからとても嫌われていたのだが、学園を停学になるという前代未聞の不祥事に、陰で笑われ敬遠されていた。

ロイドは鏡を見ながら頭に手をやる。

焼け焦げてちりちりになった髪の毛は、まだ新しく生えてきそうにない。

伯父のユリウスに頼んでエアリアルのシールドとやらを薄くしてもらったおかげで、焦げた髪を整えることはできるようになったが、これではみっともなくて外を歩けない。

といっても学園は停学になってしまっているので、外に出ることはないのだが。

「くそっ。たかがエアリアルのくせに」

将来聖職者になるというのに口汚くののしったロイドは、目の前の鏡に拳を当てる。

ユリウスによれば、エアリアルの作ったシールドによってロイドの髪を整えることも魔法を使うこともできなくなってしまったらしい。

エアリアルの仕業だとすれば、その犯人はレナリア・シェリダン――エアリアルの守護しか得られなかった無能の癖に、白いリッグルを聖女たるアンジェに譲らなかった愚かな少女しかいない。

エルトリア王家の血筋を引くから、無能の中では力が強いのかもしれない。

だが、エアリアルはしょせんエアリアルだ。

魔石に魔法紋を刻むしか能がない、落ちこぼれだ。

「ふん。まあいい。どうせもう関わることはないだろうからな」

停学が解けて学園に戻ったら、霧の聖女のことを調べなければならない。

まずは学園の図書館で調べてみるつもりだ。

「エレメンティアードに参加できないのは残念だが、どうせ怪我をしたやつの回復をするだけだからな。個人戦の決勝はレオナルド王子かアーサーだろうし、結果だけ聞けばいいか」

近年まれに見る接戦になるだろうと言われている試合を見れないのは惜しい気もするが、ロイドはそれほどエレメンティアードに興味はない。

結果だけ分かればそれで満足だ。

「それにしても、伯父上は相変わらずお美しいな」

男に美しいという表現はどうなのだろうと思いはするが、他に表現のしようがない。

教皇ユリウスは、まるで神がその手で作って降臨させた、精巧な芸術品ではないかと思うほど美しいのだ。

金糸を紡いだような輝く髪に白皙の額、冷たく感情を表さないアメジストの瞳に自分の姿を写して欲しいと言って、一体何人の信者がユリウスの前にその身を投げ出したことだろう。

崇拝者たちの視線を避けるように銀の仮面をつけるようになっても、ユリウスの美貌は損なわれなかった。

むしろ仮面からわずかに覗く 鼻梁(びりょう) や薄い唇が、かえって仮面の下に秘めた美貌を想像させ、崇拝者たちを増やしていく。

神に仕える敬虔な聖職者でなければ、魔性のものとして殺されていたかもしれない。

それほどに、ユリウスの美貌は常軌を逸していた。

「しかしあれほどの美貌を持つものが二人もいるとは夢にも思わなかった。初めて見た時は、伯父上が時を戻す魔法を見つけて若返ったのかと思ったくらいだ」

歳の離れた兄弟だといっても通用するくらい、ユリウスとセシルは似ている。

というよりも、同じ年であったならば、髪の色と瞳の色が違うだけで、まるで双子のようにそっくりだろう。

「ただ雰囲気は異なるな。伯父上のまとう誰にも侵されない神秘的な空気は、やはり高位のシャインの加護を得ているからだろう」

神の恩寵とでもいうべきユリウスの美貌とその神秘的な様子に、虜になるものは後を絶たない。

幼い頃からユリウスと接していてユリウスの顔に慣れているロイドですら、たまに見とれてしまうことがあるくらいだ。

けれどユリウスの素晴らしさはそれだけではない。

はるか昔に実在していた、死んだ人間すら甦らせることのできる、真の聖女がいたことを教えてくれたのだ。

ただ血筋だけで選ばれた聖女などとは違う。

それこそまさに信仰の対象となるべき、真の聖女だ。

そしてロイドは、真の聖女の存在を教えてくれたユリウスに頼りにされているのが誇らしい。

「きっと伯父上はアンジェを見たら驚かれるぞ」

いよいよ、真の聖女たるアンジェをユリウスにお披露目する時がきた。

ロイドと同じく、とてもひどい目に遭ったアンジェだが、ユリウスは治療してくれると快く約束してくれた。

ユリウスも一度アンジェに会ってみたいと言っていたし、ちょうど良い機会だ。

ただ少し不安もある。

アンジェが真の聖女と認定されたなら、ロイドは、その横には教皇となった自分が立つのがふさわしいと思っている。

親子ほども年が離れているから心配はないと思うが、ユリウスのあの美貌にアンジェが魅かれないとも限らない。

杞憂であればいいのだが……。

そう思いながら、学園から連れてきているアンジェに話をしようと、彼女の部屋に向かうことにした。