軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67.必死過ぎませんか?

部屋の中は穏やかな雰囲気が続く。

他国の王子様、しかもよくない噂が多い人物と聞いて警戒していたけど、少なくとも悪い人ではなさそうだと思った。

悪態をつくトーマ君も見られたし、ちょっと得をした気分だ。

「で、結局何しにきたんだよ。昔話に花を咲かせに来たってわけでもないんだろ?」

「もちろんそうだが……なんだ? まだわかっていなかったのか?」

「生憎、お前のことは何年経っても理解できないよ」

「悲しいことを言わないでほしいのだよ。そういうお堅いところは本当に変わらないな。先代のほうがよっぽど察しが良かったぞ?」

「ほっといてくれ」

トーマ君はため息をこぼすと、テーブルからカップを手に取り中身を一気に飲み干す。

その仕草のどこかが面白かったのだろうか。

エドワード殿下はクスクスと笑っていた。

ムスッとするトーマ君。

気づいた殿下はごほんと咳ばらいを一回する。

「挨拶の時に言った通りだ。ここへ来た理由はお前ではなく、そこの錬金術師にあるのだよ」

「アメリアか」

殿下が私に視線を向ける。

目と目が合い、殿下はニヤっと笑みを浮かべた。

逸らすことも失礼になるからできない私は、彼の視線と真っすぐに向き合う。

何か返したほうがいいのだろうか?

そう思っていたら、トーマ君が殿下に問いかける。

「どうして他国のお前が彼女のことを知っているんだ?」

「噂だよ。こっちにも届いてきているのだ。あの恐ろしく住みにくい土地が、一人の錬金術師によって変わりつつあるとね」

噂……。

シズクが懸念していたのはこのことだったのだろうか。

私がこれまでやってきたこと、その全ては領地をよくするためで、トーマ君たちの力になりたかったから。

それ以外のことは深く考えていなかった。

私にできる最善を尽くしてきた。

結果として、少しずつだけど領地の環境は変わりつつある。

いいことだと思っていた。

少なくとも悪いことではないと。

ただ、その変化を外の人たちがどう見るのかなんて考えてもいなかった。

「最初に聞いた時はまさかと思ったのだよ。この地の過酷さはよく知っている。だからこそ真偽を確かめたくなったのだ」

「それでこっちに来たのか。アポもなしに」

「アポなど普段からないではないか」

「そうだったな。拒否しても勝手に来るだけだし」

トーマ君は皮肉交じりにそう言った。

察してはいたけど、どうやら初めてではないようだ。

殿下が唐突にここへやってくることは。

「それじゃ目的はもう果たせたわけだ」

「いいや、まだ半分なのだよ」

「半分って、真偽は確かめられただろ? 彼女の実績は本物だぞ。彼女の頑張りがあったおかげで、この地も変わりつつあるんだ」

「そのようだな。街にあった見知らぬ結晶……乾燥が目立つはずのこの時期で、それをまったく感じない。見事だ。これを一人の錬金術師が成し遂げたというのは奇跡といってもいい。なにせ戦後から続いていた大きな問題だからな」

殿下が私のことを褒めてくれているのがわかる。

認めてもらっているみたいで、悪い気分じゃない。

ただなぜか、トーマ君だけ不服そうな顔をしていたことが気になった。

殿下はさらに続ける。

「ここへ来るまでは半信半疑だったのだが、今は完全な興味へと変化している。ぜひともその力、この目で見てみたいのだよ」

「つまりは、彼女の錬金術を見たいのか?」

「そうだが、そうではない。錬金術なら俺も見たことがある。そこに興味はない。俺が興味を抱いているのはあくまでアメリア本人。俺が想像できないようなものを作れるのか否か。俺の元で確かめたいのだよ」

「……はぁ、そういうことか」

ため息をこぼしたトーマ君は何かに納得した様子だ。

私にはまだわからない。

ニヤリと笑みを浮かべた殿下は、私のほうへ指をさし、堂々と宣言する。

「トーマ。その錬金術師を俺にく――」

「ダメだ」

「くっ、まだ最後まで言っていないのだよ」

「言わなくてもさすがにわかる」

殿下の要求をトーマ君はキッパリと断った。

私を殿下の国に招き入れたい。

そういう勧誘だったみたいだけど、トーマ君が断固として拒否する。

「アメリアは俺たちにとって大切な存在だ。くれと言われてわかりました、なんて言うと思ったか?」

「ぐぅ……ならば貸し出しではどうだ?」

「ダメに決まっているだろ! そもそも彼女は物じゃないんだ」

「であれば当人の意思を確認させてもらおう」

そう言って殿下は私に視線を向ける。

「アメリアと言ったな? お前、うちに来る気はないか?」

「え、えっと……」

「好待遇は約束するぞ。望むなら俺の頼みさえ聞いてくれれば仕事もしなくていい」

「あ、それはちょっと困ります」

「な、なんだと?」

仕事せずダラダラ過ごすなんて私には無理だ。

この領地にきて、働いてきて自覚した。

前の職場の影響もあるけど、何もしてないと逆にソワソワするんだ。

「そういうわけだ。わかったら国へ帰れ」

「ま、待て! せっかく俺がはるばる来たのだぞ?」

「はるばるって距離でもないだろ」

「そ、それもそうだが……三日! 三日だけでいい!」

「日数の問題じゃないんだって」

殿下がトーマ君にかけ合う姿を見ながら思う。

この人はどうして、こんなにも必死に私を引き込もうとするのだろう?

もしかしたら、殿下の周りで何か問題でも起こっているのだろうか?

それを解決するために錬金術が必要になるのだとしたら……。

「あ、あの!」

「アメリア?」

「その、どうして私が必要なんですか?」

気になったから、私は二人の会話に入り込んだ。