軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.乾燥はみんなの天敵

秋という季節を好きな人は多い。

〇〇の秋と様々な物と関連付けられ、親しまれている。

夏の厳しい暑さも和らいで、寒い冬に移るための準備をする期間。

気候も比較的穏やかで、秋の夜風は程よく冷たく気持ち良い。

というのは常識の中の秋。

そんな常識なんて吹き飛ぶような。

異常に何重にもスパイスがふりかかった飛び切りの秋を、今……私は体験している。

「乾燥……だね」

「そう、乾燥だ」

街の中には水路が張り巡らせてある。

山から来る川の水が流れていて、生活に使われるだけでなく、畑にも利用される。

水は私たちの生活になくてはならない物の一つだ。

そんな水も、今はすっかり干からびている。

私とトーマ君は現状を確認するため街を歩いていた。

「凄いねこれ。まだ秋になって時間も経ってないのに」

「二日くらいか? 正確な日数はわからないけど、毎回こんなものだよ。洗濯物を乾かすにはバッチリなんだけどな」

「それくらいしか利点もないよね? これじゃ作物も育たないし、乾燥って身体にも良くないしさ」

「あ~ よく聞くよな。乾燥はお肌の大敵?」

「その程度じゃないよこれ……」

大気には一定量の水分が含まれている。

私たちの身体は、外からいろんな影響を受けるけど、湿度は特にわかりやすい。

水に濡れればしっとりするよね?

それがゼロになったらどうだろうか。

私たちの身体は大部分が水分で出来ているから、水分を失うことは文字通り致命的だ。

「お肌が荒れるとか、唇がさかむけるとか。そんな程度で済めば良いけど、これはさすがに凄まじいよ」

「よくわかるよ。毎年苦労させられる。この時期になると体調を崩す人も多いんだ。あれだけ暑かった夏場より、秋のほうが水分不足で倒れる人がたくさんいるくらいにね」

「仕方ないよ。私だってちょっとクラクラしてくるし」

「大丈夫か? 一旦屋敷へ戻ろう。肩を貸すよ」

「うん。ごめんね」

たかが乾燥と侮ってはいけない。

理解していたつもりでも、実際にこうして体感するのとは意味合いが違う。

私が今まさに感じているように、領民の方々はいつも苦しんでいる。

なんとかしなくちゃ。

トーマ君に付き添われて屋敷に戻る間、私は朦朧としつつある頭で考えていた。

◇◇◇

ごくごくごく。

コップ一杯の水を飲み干して、生き返った気分になる。

「はぁ……」

「大丈夫か?」

「うん。ごめんね心配かけて」

「別にこれくらい良いよ」

そう言ってトーマ君も水を一気に飲み干した。

平気そうに見えるけど、彼も渇きを感じていたみたいだ。

あれだけ乾燥していたら当然か。

「改めて凄い環境だよね。たった数日でこんなにも変わっちゃうなんてさ」

「そうだろ? これに慣れるとかないと思う」

「うん、無理だね。慣れられるなら困らなかっただろうけど」

「無理なものは無理だ。一年も過ごせば嫌でも痛感するよ。普通はもっと過ごしやすい場所に行きたいと思う」

トーマ君がこの地にやってきた頃より、少しずつ領民の人数は減っているらしい。

高齢の方が多くて、というのもあるけど、中には環境に耐えられなくて移住する人もいたそうだ。

悲しいけど仕方がない。

それほどに厳しくて、暮らしにくい環境なのだから。

「今でも残ってくれてる人は、心からこの場所が好きな人ばかりだ。出て行った人たちを責めるつもりは一切ないんだけどさ。それでも残ってくれた人を特別には思うし、応えたいよな」

「そうだね。みんなが笑顔になってくれると私も嬉しい」

「ありがとう。君はそう言ってくれると思ったよ」

「ふふっ、さてと! どうしようかな?」

秋に生じる問題、その根本は極度の乾燥にある。

水不足、作物が育たない。

身体の不調を訴える人も多くいる。

その全て、乾燥が原因だ。

気候そのものは比較的穏やかで、春や夏に比べたら過ごしやすい方だし。

乾燥さえなくなれば解決する。

わかってはいるのだけど……

「乾燥かー」

これが中々手ごわい相手だ。

乾燥しているのだから、水があれば良い。

その水が足りない。

この季節は雨が全く降らないらしい。

比喩じゃなくて全くだ。

一回も降らないのが普通だと聞く。

天の恵みとはよく言ったものだけど、文字通り恵まれない季節。

雨が降らなければ川の水も流れない。

山のほうでも乾燥の影響を受けていて、別の場所から水を補給するのは難しい。

「雨を降らせればいいんだけどな~ それはさすがに錬金術じゃ無理なんだよね。トーマ君の魔法ならどうかな?」

「雨を降らす魔法か? 出来なくはないけど、少なくとも俺には無理だな。技術以前に魔力量が足らない。天候を支配できる魔法使いなんて、俺は一人しか知らないな」

「いるの? そんなすごい人」

「ああ。俺やシュンに魔法を教えてくれた師匠がいるんだが、あの人なら天候だって操れるよ。もっとも、今どこで何をしているのかさっぱりわからないんだけどさ」

「そうなんだ……」

二人の魔法の師匠さん……か。

ちょっと会ってみたかったけど、居場所がわからないんじゃ仕方がないよね。

でもどうしようか。

雨を降らすのは魔法の領域で錬金術じゃ出来ない。

錬金術で出来るのは、物質を生み出したり分解したりすることだけ。

「うーん……」

「悩んでるならシズクに相談してみるか?」

「シズクに?」

「ああ。あいつは国外も行ってるし、俺たちの中で一番いろいろ経験してる。何か良い情報を持ってるかもしれないぞ?」

というトーマ君の意見に頷いて、私はシズクの元を訪ねた。