軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.完成した物がこちらに

夕日が沈むまでの短い時間。

私とトーマ君は少し急ぎ足で森を歩き、目的の薬草を採取していく。

ついでに役立ちそうな草や花、木の根なんかも手に入れる。

「このくらいで大丈夫かな」

「ん、もういいのか?」

「うん必要なものは一応揃ってるから。あとは研究室で増やすよ」

話しながら最後に採取した薬草をカバンにしまう。

閉まってボタンをパチンと付けたところで、トーマ君が難しい顔をして言う。

「なぁアメリア、さっき言ってた薬草園のことだけどさ。うちじゃ当分難しいと思うぞ?」

「今すぐは考えてないよ。やることいっぱいあるし」

「いやそうじゃなくて環境の話だ。ここは知っての通り不安定な気候だからな。安定して植物を育てるのは難しいぞ」

「ああ、そのことなら大丈夫。ちゃんと考えてるから」

私だってお馬鹿さんじゃないからね。

環境の厳しさも体感したし、植物とか作物が育ちにくいって言うのもわかってるよ。

森で採取した薬草たちも、たぶん運よく成長できただけだし。

あまり数が多くないのがその証拠だ。

「成長促進薬って聞いたことないかな? 植物の成長を急激に早める薬なんだけど」

「そんなものあるのか。聞いたことなかったな」

「そう? これは普通に出回って……あーでもそっか。手にする機会は少ないかも? 促進薬は便利だけど、作物に使うと味が凄く悪くなるんだよ」

「不味くなるのか。それじゃ野菜とかには使えないな」

トーマ君の言う通り。

そもそも促進薬は最初、植物を急成長させてそのまま枯れさせるために開発されたんだ。

後から除草剤が生まれたから使わなくなったらしい。

らしいと言うのも五十年くらい昔の話だから、私は直接知らない。

もちろん作り方は知っている。

「帰ったらすぐ作るつもりなんだけど、興味あるなら見ていく?」

「そうだな。興味はあるけど、アメリアも帰ったらちゃんと休もうか?」

「あ……」

そういえば帰ったら定時でした。

新しい職場は定時になったら無理に仕事をしなくて良い素晴らしい環境です。

◇◇◇

翌日。

暑さと寝苦しさで早朝に目覚めて、普段より少し早く仕事を始めることにした。

昨日採取した素材は倉庫に保管してある。

倉庫は地下にあるから、地上よりも多少涼しいんだ。

必要な素材を倉庫から取り出し、研究室へ持ち出す道中。

「アメリア」

「トーマ君、おはよう」

「おはよう。もう仕事を始めるのか? まだ朝食も食べてないだろ」

「使う素材だけ移動するだけだよ。ちゃんとご飯は食べるから安心して」

トーマ君の顔に、ちゃんと食べてから仕事を始めろ、と書いてあった。

時々思うけど、トーマ君って意外と表情に出やすいよね。

あと心配の仕方がちょっと過保護だと思うんだ。

「トーマ君はこんな朝早くに何してたの?」

「ただの見回りだよ」

「見回り?」

「そっ。仕事大好きな誰かさんが、無理して朝から頑張ってないかなーってね」

むぅ、それって私のこと言ってるよね?

あきらかに顔がにやけてるし。

「テキトー言っちゃって」

「別に全部でまかせじゃないぞ? 元から俺は早起きなんだ。昨日のこともあったし気になってたんだよ。ほら、促進剤だっけ」

「ああ、今から作ろうか?」

「朝食を食べてからな」

「はい……」

本当に徹底してるよね。

嫌がらせとかじゃなく純粋な優しさだから、普通に嬉しいのだけど。

彼には甘えても大丈夫だって思えるから特に。

その後朝食を済ませてから、二人で研究室に足を運ぶ。

昨日のうちに準備しておいたプランターと土、それに採取した薬草。

薬草はそのまま使うわけじゃない。

「今からこれを種に変えます」

「なるほど?」

「よーく見ててねー」

紙に錬成陣を描いて、その上に薬草を置く。

そのまま錬金術を発動。

光に包まれた直後、薬草は数粒の黒くて丸い種に変化していた。

「はい完成!」

「おおー。ちなみに質問して良い?」

「なに?」

「今のは何をしたの? 種ってそんな簡単に出来たっけ?」

なるほど、良い質問ですね!

とか言ってみたかったけど恥ずかしいからやめた。

私は咳ばらいをしてから普通に答える。

「おほんっ。錬金術で薬草の構成を作り変えたんだよ。成分とか色々理解してれば、形や状態を変えることもできるんだ。本来種から育たない植物も種に変えられるんだよ?」

「へぇ~ 錬金術ってそんなこともできたのか。聞けば聞くほど万能って感じがするな」

「万能さは魔法のほうが上だよ。でも物を作り変えたりすることに関しては随一だからね。そのためにもたくさん勉強が必要なんだ」

「努力ありきの実力ってことか。よくわかったよ」

「あ、今の別に頑張ってますアピールじゃないからね?」

「わかってるって」

トーマ君は笑いながら言う。

意図せずそんな風に捉えられたら恥ずかしい。

それじゃまるで褒められたいって思ってるみたいだ……ちょっとは思ってるかも。

「じゃ、さっそく見せてくれるか?」

「うん。成長促進薬なんだけど、前に倉庫を確認した時に素材が揃ってたんだ」

「だから最初から余裕を見せてたわけか」

「そう。で、その成長促進薬なんだけどね?」

ゴソゴソゴソ。

散らかった棚の中から一本の瓶を取り出す。

中身は黄色い液体である。

「完成したものがこちらです」

「……あるのかよ」

「うん。この間一本だけ作ったのを忘れてました」

「忘れるか普通……」

意外と忘れるんだよ?

とりあえず作っとこうって感覚で作っただけだからね。