軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24.働き者不在【王都視点】

アメリアが辺境で活躍していた頃。

王都では問題が起こっていた。

「どうするのですか? このペースでは次の期日に間に合いませんよ?」

「……申し訳ありません」

「謝罪の言葉になんて意味はありません。ちゃんと与えられた仕事を完遂してください。期日は変えませんから」

「……」

宮廷錬金術師の室長に説教されていたのは、アメリアの後任として宮廷に入ったリベラだった。

自信満々に余裕の笑みを浮かべていた彼女はどこへやら。

両目の下にはクマがくっきり見えて、ほとんど睡眠もとれていないことがわかる。

説教された彼女はとぼとぼと自身の研究室に向かった。

足取りは重く、ふらつきながら。

研究室の扉を開ける。

中は散乱した資料や素材でぐちゃぐちゃになっていた。

足の踏み場もない。

リベラは資料を踏むのもお構いなし中へ入る。

午後八時、明かりがともっているのは、彼女の研究室だけ。

「……なんで……こんな……」

こんなはずじゃなかった。

心の中で何度も言い訳をしている。

自分には才能があって、努力なんて大してしなくても成果を出せる。

他所からきた姉になんて負けない。

凄いんだ。

自分はもっと凄いんだと言い聞かせ……

何一つ、結果が伴わなかった。

「リベラ? まだ仕事をしていたのか?」

「カイウス……様」

そこへ婚約者のカイウスが姿を見せる。

彼の顔を見た途端、リベラの瞳からは涙が溢れ出る。

「どうした? なんて顔をしているんだ!」

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」

「なぜ謝るんだ? 何があった?」

「私は……勘違いしていました。私には何の力もありません。こんな仕事量を一人でなんて……そんなの私には無理です」

リベラは涙ながらに語る。

着任後、アメリアが進めていた研究やその他の仕事を引き継いだ。

彼女の後任として任命されたのだから、その仕事を引き継ぐのは当然だと。

リベラはこれを引き受けた。

姉に出来ていたことなら、自分はもっと上手くやれると考えて。

しかし、現実は正反対の結果を見せる。

アメリアが一日で終わらせる仕事を、リベラは五日かけて終わらせる。

並行して研究に手をつける?

そんな余裕も時間もないほど、ギリギリの日々を送っていた。

「五日? それほどの量を押し付けられたのか?」

「はい……でもお姉さまはそれを一日で終わらせていたんです。毎日、ずっと……」

「そ、そうなのか……」

カイウスは知らなかった。

アメリアが仕事に追われるようになり、他の女の尻を追いかけていたから。

仕事が終わらないのも、アメリアの実力不足だと勘違いしていたのだ。

リベラも同じ。

彼女も姉の優秀さを信じてはいなかった。

否、優秀さは知っていた。

だがそれ以上に、自分のほうが秘めたる才能を持っていると思っていたのだ。

二人とも、アメリアと深く関わりながら、彼女の力を理解していなかった。

故に、この結果を招いていたのだ。

「私はもう……働けません。働きたくありません。今すぐにでも辞めてしまいたい」

「っ、ま、待つんだリベラ。そう結論を急ぐな。私から室長に進言しておこう」

「カイウス様……」

「君はしばらく休んでから復帰するんだ。良いね?」

「……はい。申し訳ありません」

「良いんだよ。君は私の大切な婚約者なんだから」

そう言ってリベラを慰める。

しかし内心、カイウスは苛立ちを感じていた。

リベラを後任に指名し、アメリアを追放したのは彼の指示だ。

彼女はアメリア以上の宮廷付きに相応しい才能を持っているからと。

その結果上手くいっていないとなれば、彼の発言や行動そのものが間違いだったと周囲は思うだろう。

王国での立場にも関係する事態にもなりかねない。

翌日、彼は急ぎ室長に進言した。

リベラの仕事量を減らし、彼女に休養を取らせると。

それに対して室長の反応は冷ややかだった。

「そう言われましても……彼女を後任に推したのはカイウス様だったと思いますが」

「だからなんだというのだ? 私はあくまで任命しただけであって」

「前任よりも優秀だとおっしゃるから通したのですよ? 本来宮廷の任命権は王家の方々のみにあります。それを今回は特別に通したのに、この事態はあまりにも」

「っ……」

室長の発言は事実であり、カイウスに宮廷付きを任命する権限はない。

正式な試験を受ける以外で宮廷錬金術師になる方法は、室長からの推薦を受けること。

今回の場合、リベラを推薦するようにカイウスが室長に進言していた。

アメリアより優秀だからと。

「と、とにかく彼女はしばらく休養をとらせる。その間の仕事はそっちで回してくれ」

「はぁ……もうそうしていますよ。彼女に任せていては仕事が溜まる一方ですから」

最後に室長の嫌味を背に、カイウスは去っていく。

その後ろ姿はあまりにも小さく、激しく苛立っていた。

「くそっ、どうしてこうなった!」

理由は明らかだ。

彼にも、誰にも、何も見えていなかっただけ。

見ようとしなかっただけ。

しかしこれで終わりではない。

彼の破滅はここからが本番なのだから。

自分しか見えていない男は、過ちを繰り返し続ける。