軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第030話 儲けるぞー

俺達は冷たいお茶と温かいスープを飲みながらアンジェラが作ってくれたサンドイッチを食べる。

「確かにピクニックだな」

「たまには良いでしょ」

確かにな。

あまりこういう機会もないし。

「俺も定期的に出た方が良いんだろうな。もう30歳だし、そろそろヤバいかもしれん」

まだお腹周りは大丈夫だが、組合や町内会の飲み会ではそういう衰えの話題も少なくない。

「何? フルフェイス・マスクマンはまだ別の地に旅立たないの?」

「いや、普通にエリックとしてだよ。冒険者登録はしないが、たまにこうやって付き合うってこと」

さすがに冒険者登録まではしなくていいだろう。

ギルドに所属するとギルドが身分を証明してくれるから他所の町に行った時とかに審査がスムーズになったりする。

ただ、俺は魔道具屋の店長であり、当然、商業ギルドに所属しているのでそれで十分なのだ。

はっきり言えば、冒険者より商人の方が信頼は上。

「ふーん……じゃあ、良いことを教えてあげるけど、メアリー達はそろそろ次の段階に行こうとしているわよ。この森のもうちょっと奥に行くか、西の川の方に行こうか作戦会議中」

まあ、あいつらの実力を考えたらそれでも良いかもな。

正直、この辺の魔物は相手にならないだろうし。

「フルフェイス・マスクマンはもうちょっと町にいると思う」

見に行こ。

「はいはい……」

俺達は昼食を食べ終えてもしゃべり続け、午後からはたまに小屋周辺で採取をするくらいでずっとここで過ごしていた。

何人かの冒険者達が通り過ぎるのを見たし、あのガキ共も真面目に働いているようだった。

そんな中、馬に乗った軍人が3人ほど通り過ぎたのが見えた。

スピードも出ていたし、急いでそうだった。

「何、あれ?」

アンジェラがお菓子を摘まみながら首を傾げる。

「早馬か?」

この街道を進んでいくと、山に着くが、街道はそこから山を迂回し、東の地域に行ける。

もちろん、町も多いし、大きい港町なんかもある。

「何だろうね。もう帰る? 多分、15時は過ぎていると思うよ」

そうしようかなと思っていると、知り合いが見えた。

「おい、ギルマス、エリックとアンジェラだぜ」

「あん? のんきにデートしてやがんな」

ジェイク坊やと冒険者ギルドのギルドマスターであるロジャーだ。

「何だよ」

「私達は仕事で忙しいの」

そうだ、そうだ。

「菓子食いながら何言ってんだよ」

「ジェイク、うっさい」

まあ、どう見ても遊んでいるようにしか見えないだろうな。

でも、休憩中なだけでちょっとは採取もした。

「ロジャー、何かあったのか?」

ギルマスってあまり外に出なくないか?

「ホント、のんきだな。山師から報告があって、奥で火が出ているんだとよ」

火?

「火事か? 場所は?」

「かなり奧らしいからここからじゃわからん」

さっきの兵士は確認に行ったのか。

「この前、雨降ったよな? 人為的なもんか?」

「その辺を調査するんだ。規模によるが、お前ら魔法使いにも出てもらうかもしれない」

水魔法でどうにかできるかはわからないが、こういう時に役に立つのが魔法使いだからな。

「それは仕方がないな」

「まあね」

町に関わることだ。

面倒とか言ってられない。

「調査やら何やらで騒がしくなると思うから帰った方が良いぞ」

「そうするわ」

頷くと、ロジャーとジェイク坊やが森の奥に向かった。

「帰りましょうか」

「そうだな」

俺達は来た道を引き返し、後ろをチラッと見る。

「見えないわね」

「相当、奥かもしれないな。それこそ山の方だ。多分、そこまでのことじゃないだろう」

山火事なんてたまにあることだ。

これがひどくなるのは雨がまったく降らず、乾燥しきった時だが、この前、降っていたし、惨事になることはないだろう。

「だと良いけどね」

俺達は何人もの冒険者や兵士、さらには猟師や山師なんかとすれ違いながら森を抜けた。

「野次馬か?」

「そんなもんでしょうね。まあ、皆、気になるんでしょう」

冒険者のガキ共に対し、邪魔だけはするなよと思いながら歩いていき、町に戻る。

そして、冒険者ギルドに向かった。

ギルドはたむろっているガキ共がおらず、受付にヴィオラがいるだけだった。

「やっぱり全員行ったか」

すれ違う顔ぶれを見て、そうじゃないかと思っていた。

「ったく……」

俺達は呆れながらもヴィオラのもとに向かった。

「2人共、おかえりなさい。火が出たことは聞きました?」

ヴィオラが心配そうな顔で聞いてくる。

「ああ。ジェイクとロジャーに会ったから聞いた」

「どんな感じですかね?」

「見える範囲ではないし、相当、奥だろうと思う」

そう言うと、ヴィオラがほっとした表情になる。

「だったら大丈夫そうですね。山師の方が言うには明日か明後日には雨が降るらしいんですよ」

この世界に天気予報なんてないが、山師や猟師なんかは経験的にそれがわかる。

「西の方に雲が見えるし、俺もそう思う。多分、明日には降るな」

俺もゲリラ戦をしていた暗部なので少しわかる。

「でしたら火が町に来ることもないでしょうね」

「ああ。まあ、そもそもそこまで乾燥してないし、大規模な山火事になることはない。しかし、雷でも落ちたのかね?」

逆に言うと、乾燥してないから火が出ることもないんだが。

「どうでしょう? その辺はこれから調査でしょうね。ギルドも忙しくなります」

「そうか。森の奥に行くなら良い商品があるぞ。1日以上も氷が溶けない水筒だ」

「何ですか、それ?」

「まあ、試してみろ。昨日の夜に氷を入れたお茶だ」

水筒とコップを取り出し、お茶を入れると、ヴィオラに渡す。

「これはどうも……美味しいですね。というか、本当に冷たいです。すごいですね」

ヴィオラはお茶を飲み、驚いた顔になった。

「だろ? これから暑くなるし、肉体労働で疲れた後には冷たい水分が大事だ。しかも、温かいスープもそのままだから冬でも重宝する。そんな魔法のような水筒がなんと5000ミルド!」

「やすーい!」

良い客だ。

「外じゃなくてもここでも使えるぞ」

「1つ売ってくださいよ。お弁当に温かいスープが欲しいです」

「いいぞ。じゃあ、赤いのな」

商品用の赤い水筒をカウンターに置いた。

「こっちが温かい用でこっちが冷たい用ですか?」

ヴィオラが水筒を見比べる。

「あ、いや、そういうわけじゃない。見分けるために色を分けただけで構造は一緒だし、どっちも同じものだ。これは保温だから冷たいのも温かいのも変わらない」

「なるほど。そういうことですか。じゃあ、これ、買います」

ヴィオラが財布を取り出し、5000ミルドをカウンターに置いた。

「まいど。他の連中にもウチで売ってるぞって宣伝してくれ」

「わかりました。任せておいてください」

よしよし。

その後、アンジェラが本日の成果を精算し、家に帰った。