軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63話 暫定王太子の改革案

「最強の鎖を手に入れる段取りはできましたが……」

ユベール様が言う鎖とは王太子妃の 宝冠(ティアラ) のことです。

「しかしこのままでは私たちの結婚は再来年になってしまいます」

「ええ、再来年ですわね」

私たちの結婚が再来年に行われることを、ユベール様はまるで延期されているかのように言いましたが、普通の予定です。

来年、ヴェルニエ公爵の戴冠式が行われた後に、ユベール様の立太子式が行われます。

私はすでにユベール様と婚約しておりますので、学院を卒業したら王太子ユベール殿下と結婚をします。

学院の卒業後に結婚することは、ごく一般的なことです。

卒業後に社交をして結婚相手を見つけるお方もいらっしゃいますので、卒業後にすぐに結婚するのはむしろ手際が良い部類です。

学院は三年制。

私もユベール様も現在は学院の二年生。

学院の三年生の勉強を終えてから卒業となりますので、結婚は再来年です。

何の遅延もない、順当な成り行きです。

「それで私は考えたのです。結婚を早める方法を」

「結婚を早める方法?」

「はい」

「どんな方法ですの?」

冗談なのか本気なのか解らないユベール様の話に、私がそう質問をすると、ユベール様は怪しい微笑を浮かべました。

「卒業を早めれば良いのです」

「?」

私は首を傾げました。

学院は三年制ですから、早めるも何もありません。

「二年で卒業すれば、私の立太子式を行った後すぐに結婚ができます」

「学院は三年制ですわ」

「試験で卒業資格が得られる制度を作ります。卒業資格試験に合格したら一年生でも二年生でも卒業できるようにすれば良いのです」

「……!」

これは……画期的な案です。

王立貴族学院は、入学試験がある平民の学校とは違い、身分のある者なら誰でも入学できます。

だから生徒の学力はまちまちで、学力の差が激しいのです。

「学院は勉強を教える場所ですから、すでに勉強ができる生徒には不要のものです。学院卒業程度の学力がある者は、最初から入学する必要すらありません。ですが、学院を卒業できる学力があると示すために、皆、学院に三年間通っています。しかし実力を示すために卒業資格を得ることだけが目的ならば、試験により学院の卒業資格を与える制度を作れば効率が良いでしょう」

ユベール様は自信満々に説明をしました。

「試験で卒業資格を得られるなら、実力のある者は皆、試験を受けるでしょう。三年かけて学院を卒業した者よりも、早く卒業した分だけ優秀さを示せますから」

「たしかにそれは名案ですわ」

私は感心していまいました。

今の学院の試験問題は、簡単な基本問題と、難解な応用問題が混在していますが。

それは生徒たちの学力にあまりにも大きな開きがあることに起因しています。

卒業資格試験が実施されれば。

学力が高い者は、優秀さを示せますし、時間を無駄にすることなくさっさと次のステージに進めます。

また学力が高い生徒が学院から抜けることによって、学力があまり高くない生徒たちに的を絞った授業も可能となります。

優秀な生徒が抜ければ、王立貴族学院の全体学力は落ちることとなるでしょう。

しかし卒業資格を人質として優秀な生徒たちを縛ることによって学院の水準を維持している状態は、そもそも健全とは言えません。

これが平民にも実施されれば、学院に通う経済力がない者でも、自主学習の機会さえあれば頭一つで卒業資格を得る者が登場する可能性もあります。

「ですが、そういった新しい制度を作るには時間がかかるのではないかしら」

「いえ、今年中に実施します」

「いくらなんでも今年は無理ではないでしょうか」

私がそう疑問を呈すると、ユベール様はきりっとしたお顔で答えました。

「王命を使います」

「……」

「こういうときのための権力です。私たちの結婚を早めるために、王命を使い、卒業資格試験制度を今年中に成立させます。すでに父の了承は得ています。父は暫定国王ですので王命が使えます」

「ヴェルニエ公爵夫人は何と?」

「母も賛成してくれています。母はむしろこの案に乗り気で、卒業資格試験があれば自分もさっさと卒業できたのにと羨ましがっています」

ユベール様はにっこりと微笑むと言いました。

「フェリシア嬢なら当然、合格ですよね」

「え、ええ、合格を目指して頑張ります……」

「私も必ず合格します。二人で合格して、そして早く結婚しましょう!」