軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

回復薬補充

インテリジェンスカードは当面持ったままにするということで、盗賊たちの遺留品の処分が決定した。

後は手首か。

「手首はどこかに捨ててくればいいか」

「迷宮に捨てれば十分です。すぐに消化してくれるでしょう」

セリーが捨て場所も教えてくれる。

迷宮に捨てるのか。

消化するから迷宮でもいいのだろうが。

餌を与えることになってもいいのだろうか。

いや。餌を与えないと魔物がどんどん外に出てくるのか。

適度に餌を与えておいた方が凶暴にならずにすむのだろう。

「では、これを捨てた後、朝食の買出しに行こう。強壮丸も使ったから買っておかないとな」

「強壮丸の原料はクーラタルの迷宮十三階層のフライトラップが残す遠志です。買うよりもクーラタルで狩をした方がいいと思います」

強壮丸の材料までセリーに教えられた。

滋養丸が十二階層だから、滋養丸と同じ値段の強壮丸の原料が近い階層で採れてもおかしくはない。

「ちなみに、強壮剤の原料は?」

「十三階層ボスのアニマルトラップが残します」

そういう風にできているのか。

狩で得られるなら買わなくてもいいか。

盗賊がいた小部屋はボス部屋に通じているだろう。

だからこそ、あの場所で待ち伏せをしていたのだ。

ハルバーの十二階層はほぼ走破したと考えていい。

それならクーラタルの十三階層に先に入っても問題はないか。

強壮丸や強壮剤を持たずに戦うことはどうか。

回復薬はいざというときの保険だ。

クーラタルの迷宮は地図を見て進めるから、すぐに走破できる。

少しの間なら、MP回復薬がなくてもリスクは小さいだろう。

MP回復薬だから、ボス戦で必要になることもない。

ボス戦ではどうせデュランダルを出すしな。

強壮丸がなくて困ることはないはずだ。

十三階層ボス戦まで入手できない強壮剤が問題だが、クーラタルの十三階層でも順調に戦えるようなら、ボスまで一気に倒してしまってもいい。

買い物の前にハルバーの十二階層に盗賊の手首を捨て、朝食を取った。

ハルバーの迷宮は、盗賊が待ち伏せしていたことなどまったくなかったかのように静かだった。

細かくチェックすれば血のりの一つくらいは残っていたかもしれないが。

薄暗いのでほとんど分からない。

朝食の後、装備品を売却し地図を持ってクーラタルの十二階層に入る。

「決意の指輪はセリーがつけろ」

「よろしいのですか」

「使わなきゃもったいないしな」

決意の指輪はセリーに装備させた。

俺とロクサーヌには身代わりのミサンガがある。

身代わりのミサンガはかなり有用な装備品だ。

今まで何度も魔物の攻撃を受けているが、発動はしていない。

相当大きなダメージを喰らうか危険な状態にならないと発動しないのだろう。

よほどの事態にならないと発動しないということは、逆にいえば発動するときは本当にやばい状態だというわけで、万が一を考えればとてもはずせない。

「ありがとうございます。伝世品かと思いましたが、新品同様ですね」

……聞かなかったことにしよう。

「ロクサーヌ、人はどうだ」

「さすがに十二階層までくると昼間でもかなり少なくなっています。これなら問題はないでしょう」

一階層や三階層のように人でごった返しているということはないようだ。

上の階層に行くにつれて、どうしたって入る人は少なくなる。

クーラタルの迷宮も十二階層までくれば早朝でなくとも平気らしい。

「では頼む」

ロクサーヌに頼んで人と会わないように進んでもらった。

魔法のこともあるが、ハルツ公領の迷宮以外で人に見られるのはまずい。

なるべく人に会わない方がいいだろう。

「この先がボス部屋ですね。人がいるかどうかはちょっと分かりません。少しにおいはしますが、もう突破した可能性があります」

「ありがとう。さすがはロクサーヌだな。ロクサーヌのおかげで誰にも会わずにここまでこれた」

「いえ。こちらこそありがとうございます」

さすがのロクサーヌも待機部屋に現在人がいるかどうかまでは分からないか。

扉もあるし、前のパーティーが終わればすぐに次のパーティーがボス部屋に入っていく。

現時点で人がいるかをにおいで判断するのは難しいだろう。

多少のリスクはしょうがない。

ハルツ公領の迷宮にもちゃんと入ってはいる。

公爵やゴスラーにばれても、むやみに責められることは多分ない。

クーラタルの迷宮も平行して攻略するようにしている、特定の素材がほしかった、などいくらでも言い訳は利く。

「ミリア。人がいるかどうか見てきてくれないか。いなければ合図を出せ。人がいたら、戻って来い」

それでも、リスクを下げるためにミリアを先行させた。

ミリアはゴスラーに会っていない。

「はい」

ロクサーヌが訳すと、ミリアが大きくうなずいて進んでいく。

扉が開き、ミリアが待機部屋を覗き込んだ。

ミリアはすぐに俺たちの方を向いて手招きする。

中に人などいないようだ。

三人で駆け寄る。

ミリアはさも重大な任務を達成したかのように胸を張った。

「ありがとう。えらいぞ、ミリア」

「××××××××××」

「さすがです」

別にそこまでの任務でもないと思うが。

「はい、です」

ミリアが喜んでいるみたいだからいいか。

中に入る。

待機部屋に人はいなかった。

「サラセニアのボスはネペンテスです。基本的にはサラセニアを強化した魔物です。ただし、十二階層からはボスの他にも魔物が出てきます。そちらにも気をつけた方がいいです」

セリーからブリーフィングを受ける。

今までのように正面をロクサーヌにまかせて後ろから殴っていればすむというわけにはいかないようだ。

いつまでもそんなに簡単ではないよな。

待機部屋に入るとボス部屋への扉がすぐに開いた。

四人で突入する。

煙が集まり、魔物が姿を現した。

一匹がネペンテス、もう一匹がサラセニアだ。

「ネペンテスの正面にロクサーヌ。セリーとミリアもボスの相手をしろ。俺は雑魚から片づける」

三人に指示を出し、俺がサラセニアの相手をする。

サラセニアはラッシュを連発して黙らせた。

すぐにネペンテス戦に加わる。

ネペンテスは、サラセニアよりもでかいつぼを持ったウツボカズラだ。

体も一回り大きい。

サラセニアと違って茶色くなっている頭のつぼが不気味だ。

いかにも光合成でなく他の生き物から養分をもらってます、という感じが。

別に食虫植物が光合成をしないわけではないし、迷宮の中の魔物だから緑のサラセニアだって光合成はしてなさそうだが。

(食虫植物がほしいのはアミノ酸を作るための窒素化合物だったりするので、デンプンは普通に光合成で作ったりする)

葉っぱを振り回してくるので、後ろから殴るとはいえ注意が必要だ。

しまったな。

ミリアには槍を持たせた方がよかったかもしれない。

レベルも上がっているし、大丈夫か。

一匹だけとなったネペンテスを四人でたこ殴りにする。

こうなってしまえば今までと同じ勝利のパターンだ。

ネペンテスはあっさりと倒れた。

煙となって消えていく。

「××××××××××」

ドロップアイテムを見る前に、ミリアが何か叫んだ。

「魚貯金、えっと。魔結晶があるそうです」

「魔結晶か」

「戦う前にはなかったと言っています。今できたのでしょう」

ロクサーヌが訳し、ミリアが黒魔結晶を渡してきた。

すごいな。

できた瞬間に分かるのか。

「さすがミリアだな」

「光ったのですぐに分かったそうです」

いや。黒魔結晶は光らないから。

「魔結晶だ。言ってみろ。魔結晶」

「魔結晶、です」

前のときは教えなかっただろうか。

魔結晶のブラヒム語を教え、黒魔結晶を受け取る。

セリーからドロップアイテムも受け取った。

半夏というらしい。

戦士をはずすついでに薬草採取士をつけ、生薬生成を試してみる。

手のひらの半夏が滋養剤三つに変わった。

やはり半夏も薬草らしい。

「やっぱり、おできになるのですね」

それを見てセリーが驚いている。

「だめなのか?」

「いえ。ネペンテスを倒せるほどの薬草採取士も最初のうちは半夏を自分では処理できず、売却するという話を聞いたことがあったので」

いやいや。

十三階層で強壮剤が作れるとセリーが教えてくれなかったか。

十三階層で強壮剤が作れるなら、十二階層で滋養剤もできるだろう。

「そ、そうか」

「もちろん、作れるだろうとは思っていました」

「さすがご主人様です」

「さすが、です」

どうも微妙にほめられた感じがせん。

俺の薬草採取士は現在Lv4だ。

この間滋養丸をいっぱい作ったとき、つけ替えるのが面倒でつけっぱなしにしたらすぐ上がってしまった。

ネペンテスを倒せるような薬草採取士がLv4ということはないだろう。

Lv4以上の薬草採取士でも滋養剤が作れないのだとしたら、滋養剤を作れるかどうかはレベルで決まっているのではない。

MP量に依存しているのではないだろうか。

俺のMP保有量は、魔法使いLv37に僧侶や英雄の分も上乗せされているだろうから、結構な量があるはずだ。

「ま、このくらいはな」

滋養剤と魔結晶をアイテムボックスに詰め、ボス部屋を後にした。

「クーラタル十三階層の魔物は、フライトラップです。基本的にサラセニアとそう大きく変わらないようです。水属性魔法を使い、通常攻撃では毒を受けることもあります。水魔法に耐性があり、弱点は火魔法です」

例によってセリーから説明を受け、フライトラップと対峙する。

形も大きさもサラセニアと変わらない植物魔物だ。

ただし、一箇所だけ異なる。

頭がつぼではない。

ぱっくりと二つに割れて、何かを挟めるようになっていた。

サラセニアと同じく食虫植物か。

頭の動きに注意しながら、戦う。

火魔法五発で倒した。

「頭では攻撃してこなかったか」

「そうですね。ですが、油断は禁物です」

「上位種になれば、頭で挟み込む特殊攻撃もしてくるようです」

セリーによれば、あの頭で挟み込んでくるのは上位種のようだ。

とはいえ、ロクサーヌのいうとおり油断は禁物だろう。

サラセニアも消化液を上からかけてきたしな。

ミリアから遠志を受け取った。

薬草採取士はつけたままなので、受け取ってすぐに生薬生成を使う。

強壮丸が三つできた。

三つという点も滋養丸と一緒か。

「では、フライトラップとも戦えそうなので、数の多いところへ頼む」

ロクサーヌに頼んで、本格的に狩を開始する。

フライトラップもサラセニアも弱点は火魔法。

魔法五発なら、ほとんど問題なく戦えた。

杖を強化する前はもっと戦闘時間が長かったのだし。

「来ます」

戦っているときにロクサーヌが叫ぶ。

フライトラップの遠距離攻撃のようだ。

遠距離攻撃はロクサーヌが受けてくれる。

と思っていたら、避けやがった。

ロクサーヌの動いたところから水の弾が飛んでくる。

「あ、危ねえ」

なんとかぎりぎりで回避した。

やはりロクサーヌの後ろは危険だ。

「えっと。すみません。魔法は盾では受けられませんので」

「そうなのか」

「はい。威力を削ぐことはできますが、多少のダメージは通ってしまいます」

そういうことは早めに教えてほしかった。

ロクサーヌからは少し離れて位置することにしよう。

先頭にいるロクサーヌはなにかと標的になるだろう。

魔物とロクサーヌを結ぶ直線上にはいない方がいい。

水魔法は厄介だが、クーラタルの十三階層で狩を行う。

フライトラップLv13はデュランダルだと通常攻撃五回で倒れた。

十二階層でぎりぎり四回だったのだ。

これはしょうがないだろう。

デュランダルで戦うとき、セリーから決意の指輪を借りてみる。

はっきり分かる効果はなかった。

デュランダルの攻撃力五倍と決意の指輪の攻撃力上昇は重複しないようだ。

強壮丸を大量に作る。

セリーにも十個持たせた。

「強壮丸も集めたし、強壮剤もいっておくか」

「そうですね。それがいいと思います」

「いざというときの準備は万端に整えておくのが合理的です」

十三階層のボスに挑戦することに、ロクサーヌとセリーの賛同を得る。

だいぶ戦ってきたので、迷宮のありかたも少し分かってきた。

十二階層から二十二階層まで、出現する魔物のグループは同じだが、どの魔物がどの階層に出てくるかは迷宮ごとに違う。

クーラタルでは二十二階層に出てくる魔物も、他の迷宮では十二階層に出現することがある。

つまり、クーラタル二十二階層のボスも、他の迷宮では十二階層でボスをしていることがある、ということだ。

他の迷宮でその十二階層のボスを倒せるのなら、クーラタル二十二階層のボスとも十分に戦えるのではないだろうか。

レベルが上がるので、もちろんまったく同じ強さではない。

グリーンキャタピラーLv11のように。

それでも、同じ魔物だ。

そう極端に強くなるわけもない。

二十二階層までは、極度に警戒しなくてもいいだろう。

大きく強くなるのは、その上の二十三階層からだ。

クーラタルの迷宮は地図が完備されているので、進もうと思えばどんどんと進むことができる。

今までは、ベイルやハルバーで探索を行ってそれが終わるまで、次の階層に一足飛びに進むことはなかった。

しかし、少し上の階層に進んでもいいのではないだろうか。

「分かった。では案内してくれ」

「かしこまりました」

地図を見たロクサーヌの案内で、十三階層のボス部屋まで進んだ。

ミリアに見に行かせて誰もいなかったので、中に入る。

サラセニアを一匹と十三階層ボスのアニマルトラップを倒した。

「出てきたのはサラセニアだったな」

「ボスに付随して現れる魔物は、その階層に出てくる可能性のあるすべての魔物が当てはまるそうです」

アニマルトラップは、セリーが教えてくれたとおりフライトラップの強化版だった。

サラセニアが面倒だったが、おつきの者さえ速攻で倒せばこっちのものだ。

後は囲んでしまえば、デュランダルで後ろからぼこるだけだった。

セリーが陳皮を持ってくる。

これがアニマルトラップのドロップアイテムか。

生薬生成で強壮剤を三つ作成した。