軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タペータム

食材を買って、家に帰ってきた。

とりあえず風呂を沸かす。

最初が肝心だ。

禁猟を破って奴隷になったミリアは、主人との性行為を明示的に了承しているわけではない。

ロクサーヌやセリーとはその点が異なる。

とにもかくにも、まずはそこを突破しなければならない。

まあ、あくまで嫌というなら魚を取引材料に使えば大丈夫な気もするが。

あまりしこりが残る解決方法は好ましくない。

強制によらず、できればすんなりと了承してほしい。

それには一緒にお風呂に入るのが一つの手だろう。

後はなし崩しに。

一緒に入るのがだめだと言われても、主人の体を洗わせるくらいは命令しても問題ないはずだ。

後はごゆるりと。

よいではないか。よいではないか。

ええい、ご無体などと申すでない。

隣の部屋に布団も敷いてある。

こうして帯をくるくると。

こ、これはたまらん。

ええか。ええのんか。

「××××××××××」

ミリアが突然騒ぎ出した。

首をすくめて様子をうかがう。

ロクサーヌがなにやら説明していた。

ウォーターウォールで水を作ったから、魔法のことを騒いでいるのか。

びっくりした。

俺の思考がばれたかと思った。

「魔法も使えるなんて本当にすごいと言っています」

ミリアが尊敬の表情を向けてくる。

うん。

思考がばれたのではなくて本当によかった。

ミリアはしばらく騒いでいたが、やがて納得したらしい。

いつの間にかいなくなった。

丸投げ一任は楽だ。

何回か魔法を使ってから、キッチンに下りる。

ミリアもロクサーヌと一緒にキッチンにいた。

「鍋です。なべ」

「……なべ」

ブラヒム語を習っているらしい。

感心感心。

「ロクサーヌ、悪いな」

「いえ」

「ミリアもえらいぞ」

二人の頭をなで、ついでに耳もなでさせてもらう。

イヌミミとネコミミを同時に。

ロクサーヌのタレミミもすばらしいが、しっかりと立っているミリアのネコミミもまたいとおしい。

「××××××××××」

「ブラヒム語を覚えないと魚が食べられないと言っています」

別に脅したつもりはなかったのだが。

まあ結果オーライということで。

「そうか。また迷宮へ頼めるか」

「はい」

「ミリアも見学させてみるか」

「その方がいいでしょう」

ロクサーヌがミリアと何か話した。

ミリアがうなずく。

やる気は十分のようだ。

見学だが。

「私が火の番をしています」

セリーは残るらしいので、ロクサーヌとミリアに防具を渡した。

チェインメイル、革の帽子、革のグローブ、鉄の盾、木の盾。

鉄の盾と木の盾は、それぞれ一個ずつしか必要ないのにアイテムボックスの中で合計二列を占有している。

鉄の盾を買ったのは失敗だったか。

あるいは鉄の盾二つにするべきか。

金貨が一列減ったので使っている容量は変わりない。

「ミリアは見学だけしていればいいから、手は出すな」

ミリアに言い聞かせてから、ハルバーの迷宮に飛ぶ。

「こっちの方からはミノのにおいだけがします。においが濃いので一匹ではないでしょう。多分三匹くらいではないかと思います」

「さすがだな。じゃあそっちで」

ロクサーヌの案内でハルバーの十一階層を進んだ。

魔物に遭遇するにも時間はかかるから、一匹では効率が悪い。

セリーは連れてきてないしミリアは見学なので、四匹では荷が重い。

毒消し丸を持っているセリーがいないからニートアントは危険。

というわがままな要求を入れての結果だ。

魔物はミノかエスケープゴートで二匹か三匹がベスト、ということになる。

本当に曖昧で勝手な要求だが、実際そうなのだからしょうがない。

ロクサーヌには感謝だ。

現れたミノ三匹を狩る。

最初にラッシュで一匹減らし、ミノの体当たりをかわして二匹めは通常攻撃で屠った。

三匹めはロクサーヌが正面に立って攻撃を余裕で回避しているので、横からやはり通常攻撃のみで倒す。

「××××××××××」

魔物が全滅すると、ミリアがなにやらロクサーヌに話しかけた。

興奮気味だ。

ロクサーヌの華麗な回避を目の当たりにしたのだろう。

ミリアがロクサーヌを尊敬したことは表情から分かる。

ミノの攻撃なら俺だってかわしたわけだが。

まあロクサーヌの回避を見たら興奮するのはしょうがない。

ロクサーヌのすごさに気づき目を輝かせるようなら戦士として素質がある、と前向きに考えておこう。

魔物を殲滅したのは俺なんだけどな。

しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。

そのデュランダルの性能のおかげだということを忘れるな。

ま、負け惜しみにもならん。

「もう一回ぐらい頼めるか」

「はい」

まだMPが全回復はしていない感じなので、もう少し狩を続けた。

「××××××××××」

次の獲物のところへ行く途中、ミリアが何かを言う。

洞窟の角を曲がったとき、すぐに腕を伸ばし、前を指差した。

魔結晶

魔結晶だ。

指差す先に何があるのかと鑑定してみると、魔結晶がある。

「魚貯金?、があるそうです」

「魔結晶か。すごい。よく見つけたな」

暗い迷宮の中、見ただけではほとんど分からない黒魔結晶だ。

迷宮に落ちているのは久しぶりに見た。

セリーによれば、上の階層へ行けばもっとあるということだったが。

買う必要なかったな。

「迷宮に入ってたくさん集めたら魚を食べさせると親から言われたそうです。だから魚貯金だと言っています」

ミリアと話をしたロクサーヌが教えてくれる。

魚好きは親公認なのか。

「なるほど。あれを見つけるとは、さすがミリアだな」

「ミリアは暗い中でもよくものが見えるそうです」

ミリアが誇らしげに胸を張った。

ネコは網膜の裏に光を反射する 反射板(タペータム) を持っている。

目が光ったり夜目が利くのはそのせいだ。

猫人族にもタペータムがあるのだろうか。

というか、今まで魔結晶をあまり見なかったのは、こいつらが掃除しているからではないだろうか。

俺も鑑定がなければ黒魔結晶を肉眼で見つけることは難しい。

角を曲がった瞬間にほぼノータイムで発見したミリアとでは勝負にならない。

他の猫人族もそうなのだとしたら、猫人族が歩いた後に魔結晶は残らないだろう。

「そうだったのか」

黒魔結晶を入手し、MPも回復して家に帰った。

「××××××××××」

「××××××××××」

家に帰ると、ロクサーヌとミリアがなにやら話し出す。

ロクサーヌが何か伝えながら体を大きく動かした。

ミリアに話しかけ、何度も体を振っている。

回避をレクチャーしてもらっているようだ。

ロクサーヌの指導が通じるとは思えないが。

ミリアに常識人としての共感を示すために、見守っておくか。

あれ?

おかしい。

ミリアはいつまでも熱心に話を聞いていた。

そのうち、ロクサーヌに倣って体を振りはじめる。

ロクサーヌのレッスンについていけているようだ。

「ミリアはいい戦士になるかもしれません」

ミリアの動きをロクサーヌが満足げに見た。

「そ、そうか」

ひょっとして、ミリアもロクサーヌのお仲間ということなんだろうか。

獣人はみんなあんな感じとか。

あるいは、ブラヒム語じゃないからちゃんと表現できているのか。

俺と同様に驚いているセリーと視線をかわす。

セリーが首をかしげた。

セリーは常識人だ。

その場はセリーにまかせ、俺は風呂場に退避する。

風呂を沸かした。

沸いたお風呂にレモンを浮かべる。

残したレモンを二個持って、キッチンに入った。

キッチンでロクサーヌのスープを見る。

「何でしょう?」

「まだ味付けはしてないな。ちょっともらっていいか」

「はい」

ロクサーヌのスープは、肉と野菜を煮込んでいる段階だ。

これならブイヨンをもらえる。

「ミリアに搾らせたいけど、大丈夫かね」

「大丈夫です」

ロクサーヌが訳してくれた。

搾り器みたいなのは見たことがないので、レモンは手で搾らなければならない。

想像するだけで酸っぱそうだ。

「搾る、魚、かける、美味しい、オッケー?」

ミリアにレモンを渡し、カタコトで話しかける。

「はい」

「しぼーる」

「……しぼる」

ロクサーヌが訳すとうなずいたので、復唱させた。

「さかーな」

「魚」

魚だけすでにネイティブじゃないか。

「かけーる」

「かける」

「美味しい」

「おいしい」

なかなか順調に覚えてくれるみたいだ。

できれば、美味しい、ではなく、美味しいにゃ、と覚えさせたいが、俺がそれを教えるのもどうなのか。

ブラヒム語への翻訳が入るので無理そうな気もするし。

セリーの目も怖い。

ロクサーヌからもらったブイヨンにミリアが搾ったレモン果汁とワインを入れ、ひと煮立ちさせて塩とコショウで味を調える。

後は小麦粉をまぶした白身をオリーブオイルで焼いて、作ったレモンソースをかければ完成だ。

魚を焼いている間じゅう、ミリアはじっとにらんでいた。

「魚を焼く」

「魚を焼く」

「魚を食べる」

「魚を食べる」

せっかくなのでその時間もブラヒム語を教える。

魚に関連する言葉が覚えやすいだろう。

「魚を食べたい」

「魚を食べたい」

「魚を食べれば嬉しい」

「魚を食べれば嬉しい」

というか、俺自身のブラヒム語の勉強のような気もしてきた。

こんな構造になっていたのか。

夕食ができたので、食卓に並べる。

ミリアはロクサーヌの隣に座るようだ。

翻訳してもらうこともあるので当然だろう。

セリーもロクサーヌの隣だ。

向こうに三人、こちらに一人。

べ、別に寂しくなんかないんだからね。

「な、なんだ」

席でやさぐれていると、ミリアがじっとにらんできた。

「早く食べたいのだと思います」

「そうか」

ロクサーヌに促され、スープを配る。

食べていいと告げると、ミリアが白身のムニエルに飛びついた。

やや不器用にナイフを使い、乱暴に口の中へとかき込む。

「おいしい」

さっき教えたばかりのブラヒム語でほめてくれた。

嬉しそうだ。

しかしどうなんだろう。

ミリアのことだから魚なら何でも美味しいと答えるような気がする。

あるいは逆に、魚にはうるさいという可能性もあるが。

自分でもムニエルを取って食べてみた。

割と巧くできている。

ここまでできれば上出来だろう。

十分に美味しいといえる。

「そういえば、魚を生で食べることがあるか」

「えっと。ご主人様、獣人と獣は違いますので」

刺身があるか訊こうとしたら、ロクサーヌからたしなめられた。

だめなのか。

生ものを食べるのは獣ということなんだろう。

「悪い。そういう意味じゃないんだ」

「いいえ。こちらこそすみません」

普通の魚では寄生虫が怖い。

魔物が残す食材ならいけるかと思ったが、そうもいかないか。

まあ米も醤油もワサビもないのに刺身だけあってもな。

勢いよくかき込んだミリアがムニエルを完食する。

途端、はっきりと肩を落としてうなだれた。

おいしいといったのもお世辞ではないようだ。

「食べる?」

「食べる」

半分食べかけの皿を差し出すと、すぐにかっさらっていく。

魚に関しては遠慮がないらしい。

実にうれしそうな表情で魚をほおばった。

「××××××××××」

「ご主人様に購入してもらってよかったと言っています」

相変わらずやっすいな。

「××××××××××」

「一生、ご主人様に仕えるそうです」

一宿一飯の恩ならぬ魚を食べさせた恩だ。

ミリアはその後、ロクサーヌとセリーからも魚をもらった。

もらったというか分捕ったというか。

魚を食べようとするとものほしそうな目でにらまれたのではね。

ロクサーヌはなにやら説教したが、結局魚を渡していた。

「十分食べたか」

全員から魚をもらってご満悦のミリアに問いかける。

「××××××××××」

「こんなにいただけるとは思わなかったそうです」

「そうか」

こんなにといっても四切れだが。

「ミリアにはこの後食器を洗っておくように言います。私は装備品の手入れをしますので」

「分かった。それが終わったら、風呂に入るか」

アイテムボックスから蜜蝋を出し、ロクサーヌに渡した。

さりげなくミリアの様子を観察する。

「××××××××××」

「はい、お姉ちゃん」

ロクサーヌがなにやら命じると、ミリアが皿を持って立ち上がった。

他の皿も回収しだす。

風呂は?

風呂はどうなんだ。オッケーなのか? 一緒に入るのか?

どっちなんだ。

ハイかイエス、どっちなんだ。

「皿」

「皿」

「ナイフ」

「ナイフ」

ミリアに食器を渡しながら、ブラヒム語も教える。

分からない。

ロクサーヌが風呂に入る話もしたのか、食器を洗えと命じただけなのか。

結構長く話していたので、風呂の話もしたはずだ。

あるいは、洗い方を細かく命じただけかもしれない。

「洗う」

「洗う」

「皿を洗う」

「皿を洗う」

「後でミリアも洗う」

「?」

通じねえ。

それは通じないのか。拒否なのか。

「××××××××××」

ロクサーヌが何ごとか伝えると、ミリアはそのまま食卓を出て行った。

いや、だからどっちなのかと。

セリーに鍛冶をさせながら、気もそぞろだ。

「××××××××××」

ミリアはすぐに戻ってきた。

ロクサーヌと話し、俺の顔を見る。

やっぱり風呂はだめなのか?

「石鹸が珍しいみたいです」

ミリアがキッチンに行くと、ロクサーヌが教えてくれた。

脅かすなよ。

しばらくすると、ミリアが今度は全裸で戻ってくる。

いや、全裸で。

確かに全裸だ。

「××××××××××」

「お風呂が楽しみだそうです」

洗い物を終えて服を脱いできたのか。

一緒に風呂に入るのはオッケーということだな。

「××××××××××」

「水に入るのは得意だと言っています」

そういう問題なのか?

「××××××××××」

「魚がいれば捕まえるそうです」

風呂に魚はいないけどな。

何かちょっと勘違いしているような気がする。

ミリアが曇りのない目で俺を見た。

ピュア百パーセントの純粋な目だ。

あー。うん。

これは心にくるな。

責められてはいないのに責められている感じだ。

不埒な発想が責められている。

よこしまな下心が責められている。

欲望に濁った俺の目が責められている。

ミリアはしなやかな肢体を惜しげもなくさらしていた。

思ったとおり、結構胸はあるな。

いや。そんな目で見てはいけない。

セリーも羨ましそうにはしていない。

体のラインが美しいカーブを描いている。

可愛らしいお尻の上部からは尻尾も伸びていた。

獣人だからロクサーヌと同様尻尾があるのか。

「おお。尻尾だ」

「××××××××××」

「私たち狼人族の尻尾と違って、動かせるそうです」

筆のようなロクサーヌのふわふわの尻尾と違って、ミリアの尻尾は先まで同じ太さの一本の尾だ。

あれなら確かに動かせそうな気がする。

「尻尾」

「尻尾」

「動く」

「動く」

ミリアが尻尾を振った。

尻尾を振るのはいいが、俺の目の前で一緒に腰も振られる。

こ、これは。

俺の方に尻尾を伸ばしてきたので、手で触れた。

しっかりと芯のある尻尾だ。

これなら動かせるだろう。

後楽園遊園地で僕と握手。

「すみません。お待たせしました」

「じゃあ風呂に入るか」

装備品の整備も終わったようだ。

二階に行く。

ロクサーヌもセリーも脱ぐのは二階に行ってかららしい。

張りあって脱いだりはしないようだ。

二階で服を脱ぐ。

横でロクサーヌも脱いだ。

ロクサーヌが服を脱ぐと、たわわな白い果実が転がり出る。

まさにぽろっとこぼれ出た。

さ、さすがはロクサーヌだ。

ミリアといえどロクサーヌの迫力には及ばない。

一頭地を抜く存在だ。

張りあう必要などないということか。

四人で風呂場に入る。

俺一人に全裸の美女が三人だ。

風呂場に入ると、セリーが湯加減を見た。

かき回しながら少し水を足している。

俺はその間にロクサーヌを洗った。

こぼれ出る瞬間を見せつけられたのでは。

いや、違う。

何ごとも順番が大切だ。

「洗う」

「洗う」

洗いながらミリアにブラヒム語を教える。

教えてみて分かった。

皿を洗うと体を洗うでは、洗うというブラヒム語が違うのか。

それは通じないわけだ。

「しっかり洗う」

「しっかり洗う」

「丁寧に洗う」

「丁寧に洗う」

ミリアにブラヒム語を教えながら、ロクサーヌを洗う。

柔らかで弾力があって揉み心地のよいそれを、しっかり且つ丁寧に洗った。

次にセリーを洗う。

優しく、ゆっくりと洗い上げた。

「よし。次はミリアだな」

呼び寄せると、ミリアが俺の前に来る。

いよいよなでまくりか。

拒否するような姿勢は微塵も見せていない。

ここまでくれば大丈夫だろう。

「××××××××××」

「覚悟はできているそうです」

「そうか」

「よ、よろしくお願いします」

ミリアが頭を下げ、ブラヒム語で言った。

このために準備して予め覚えておいたのだろうか。

もちろんよろしくお願いされるつもりだ。