軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

共同作業

気を取り直して、十階層の魔物の半分を一撃で倒せるように魔法の威力を調整する。

大体でいいし、難しくはない。

準備はすぐに整った。

「では、ルティナにも十階層で軽く戦闘を経験してもらおうと思う」

「はい。わたくしなら大丈夫です」

「まずはセリーの持っている槍で戦ってみろ。俺が魔法を撃ち込んで倒れなかったニードルウッドが出たら、槍で魔物を倒せ」

「分かりました」

ルティナに指示を与えた。

最初は間合いを取れる槍からがいいだろう。

槍は、セリーのものを使わせる。

俺の聖槍だと魔法を撃ってからやり取りするのが面倒だ。

「ロクサーヌ、ニードルウッドのいるところを探してくれるか」

「はい。それがいいですね」

クーラタルの十階層で一番多く出てくるのは十階層の魔物のエスケープゴートだが、これは逃げ出すので問題外。

九階層の魔物のニートアントも毒持ちなので避けた方がいいだろう。

標的は、八階層の魔物のニードルウッドということになる。

ニードルウッドも魔法が使えたりはするが。

ちなみに十一階層のグリーンキャタピラーも糸を吐くので使えない。

一撃で倒せるのが十一階層だったら、えらいことになるところだった。

その場合は、魔法使いの魔法を使ってでも下に行くことになるのだろうか。

二階層なら比較的混まないし。

ルティナからしてみれば、その方がよかったかもしれない。

ロクサーヌに探してもらったニードルウッドで俺の魔法の一撃に耐えたものをルティナが攻撃する。

十階層でも問題はないみたいだ。

パーティーはフルメンバーだし、俺の勇者の効果も乗るからな。

続いて、剣や棍棒も試させた。

「見事だ。最後は、ちょっと大変だが素手で戦ってみろ」

「素手ですか」

「いい経験になるだろう」

素手で戦わせるのは僧侶のためだが、経験を積むためと言っておく。

ルティナは、何度か攻撃を浴びたが無事ニードルウッドを倒した。

そのたびごとに手当てとメッキをかけているので、問題ない。

ロクサーヌでもなければ被弾することは分かっていたから、俺のジョブには僧侶をあらかじめつけておいた。

戦闘終了後にも様子を見ながら手当てをかける。

苦しそうな表情はしていないから、大丈夫そうか。

迷宮ではリュックサックを背負わせるので、迷宮に入るのが実質的に今日初めてのルティナには戦いにくかったかもしれない。

リュックサックには黒魔結晶も入れさせているので、魔物を倒しても安心だ。

「ありがとうございます」

「次は少し特殊な倒し方だ。魔物の正面はロクサーヌが持ってくれるから、ニートアントから拾った毒針を投げつけ、毒状態にして魔物を倒せ」

「分かりました」

毒針も試させよう。

「ロクサーヌ、頼む」

「はい。それならば別にニードルウッドじゃなくても大丈夫ですよね。エスケープゴートは、逃げるから駄目ですが」

ロクサーヌが提言してきた。

自分ならニートアントの攻撃は回避できるから問題ないということだろう。

すごい自信。

というか確かな事実か。

「そうだな」

「ニートアントならすぐ向こうにいます」

まあ本人がやるというのならやらせればいいだろう。

出てきたニートアントの相手をロクサーヌがする。

実際、ロクサーヌはニートアントの攻撃を苦もなくかわし続けた。

横からルティナが毒針を投げつける。

「やった、です」

ミリアが声をかけるまで投げ続けた。

今ので毒にできたのか。

相変わらずさっぱり分からん。

ルティナも、まだ投げようとしていたから、毒を受けたときの色の違いは分からないようだ。

俺の目だけが悪いわけじゃない。

毒を受けたニートアントの攻撃はロクサーヌがかすらせもせず、魔物が倒れる。

後は肝を投げて魔物を竜にするやつが残っているが、これはさせなくてもいいだろう。 何かのジョブが得られるわけではないみたいだし。

十階層でドライブドラゴンにしてしまうのも怖い。

一階層へ行くのは混むので面倒だし。

「これくらいにしておくか」

「魔法で倒したりはしないのですか?」

ルティナが尋ねてきた。

剣や槍で魔物を倒したので次は魔法でもということか。

魔法使いのルティナには確かにその選択肢もある。

必要はないが。

魔法で敵を倒したからといって取得できるジョブはない。

あるいは、魔道士なんかは魔法で敵を倒すことが条件になっている可能性もあるだろうか。

だとしてもそのうち倒すはずだ。

「わざわざやらなくてもいいだろう」

「初日ですし、今日のうちに戦闘も経験できましたから、これくらいでいいと思います」

ロクサーヌも賛成してくれる。

初日のうちに経験させておくことが重要なんだろうか。

よく分からん。

まあ、ちゃんと戦えることは分かったし、ルティナにも自信につながるだろう。

もやもやを抱えて一夜をすごすよりいいはずだ。

「じゃあ、今日はここまでにする。後は夕食だな。ミリア、尾頭付きを出すから、煮付けでも作ってくれ」

「おおっ。はい、です」

ルティナが加入した記念に、今日の夕食は尾頭付きにしよう。

ルティナにとっては奴隷に落ちた記念ということになるが。

この世界、別に尾頭付きに慶事の食べ物という含意はないようだ。

メデタイは語呂合わせだし。

レアドロップだからご馳走という感じである。

祝祭ではない記念にちょうどいいだろう。

ワープと念じ、迷宮を後にした。

冒険者ギルドに移動する。

「おや。いつの間に」

ギルドから出ると、金物屋のおばちゃんと出くわした。

家を借りたときの世話役の人だ。

「こんにちは」

「へえ。がんばってるんですねえ。家を世話した甲斐があったというものですよ」

買い物途中の近所のおばちゃんみたいなノリで話しかけてくる。

近所のおばちゃんみたいというか、実際近所のおばちゃんだ。

がんばってるというのは、冒険者ギルドから出てきたので俺が冒険者になれたと思ったのか、奴隷が増えていることを指したのだろうか。

最初はロクサーヌだけだった。

「その節は」

「メンバーが減ったところを見たことはないから、無茶な使い方はしてないんでしょうけど。いるんですよ、ときおり、無理な階層に進んで使いつぶす人が」

後者だったらしい。

奴隷を使いつぶすという話はセリーからも聞いた。

「さすがにそれはないな」

「ですよねえ。女の私でもうらやましくなるような美人さんぞろいですし。これから、買い物ですか?」

「はい」

買い物だというと、世話役のおばちゃんは頭を下げてあっさりと去っていく。

夕方で時間もないことは分かっているのだろう。

「冒険者になるような人は稼ぎも違うと聞くけど、本当なのかねえ」

去り際につぶやいていた。

前者も入っていたようだ。

今冒険者だとすると家を借りたときには冒険者目前だったわけで、借りるときにその話がなかったのは不自然だろうか。

探索者Lv49になっていればアイテムボックスの容量から分かる。

家を借りるくらいでそんな話はしないものだろうか。

あるいは、家を借りたときには冒険者になるかどうか決めていなかったと考えるかもしれない。

探索者Lv50になったからといって誰もが冒険者になるわけではない。

冒険者になったらLv1から鍛えなおしだし、探索者ならアイテムボックス容量は冒険者よりも増える。

探索者を続ける人も多いらしい。

今は冒険者のジョブも取得しているし、冒険者だと思われても問題はないだろう。

買い物を済ませて、家に帰った。

家に帰ったらまずは風呂を入れよう。

なんとかルティナも一緒に入ってくれないものだろうか。

どうなんだろう。

いい作戦はないものか。

一緒に風呂に入る前に、一緒に風呂を入れるのもいいかもしれない。

初めての共同作業だ。

ルティナが手伝ってくれたら、風呂を入れるのも楽になるだろう。

入れている最中に誤って湯船に落ちるとか。

入れているそばから一番風呂に飛び込むとか。

それはないか。

「ご主人様、ルーク氏からの伝言です。芋虫のモンスターカードを落札したようです」

家に帰ると、風呂ではなくルークからの伝言メモが待っていた。

芋虫のモンスターカードか。

ルティナが加入したので、ヤギのモンスターカードがほしいところだな。

「分かった。それは明日でいいだろう」

「はい」

「オークションの仲買人にモンスターカードの依頼をかけていてな」

分かってなさそうなルティナに説明する。

「そういうことですか。芋虫のモンスターカード……」

「身代わりのスキルになるな」

「ええっと。ひょっとして、わたくしが着けてしまったせいですか?」

不安げに尋ねてきた。

ルティナが着けて足りなくなったから注文したと思ったらしい。

「ああ。いや。気にするな」

曖昧に否定する。

どうせ分かることだが。

それまでは恩を売っておいてもいいだろう。

はっきり否定するのは、違うような気がする。

「分かりました」

「セリーなら確実に成功させるしな」

「え?」

ルティナは、モンスターカードの融合が失敗することは知っているらしい。

セリーなら確実に成功すると言うと、驚いていた。

「では、俺は風呂を入れてくる。ルティナも、魔法を撃つ余裕があるようだったら、少し手伝ってくれるか」

やらせていけばすぐに分かることではある。

あまり引っ張らずに次の作業に行こう。

「あ、はい。何をすればよろしいのでしょう」

「ついてきてくれ」

「はい」

「いってらっしゃいませ」

ロクサーヌたちに見送られ、ルティナを連れて風呂場に向かった。

「ルティナは、風呂に入ったことはあるか」

「はい。四、五日から十日に一度くらいは。貴族の娘としてのたしなみです」

やはり伯爵令嬢だから風呂は知っているのだろう。

貴族は風呂に入るとロクサーヌも言っていた。

たしなみというのは、伯爵令嬢は清潔にしておかなければ、ということだろうか。

「うちでは、もっと頻繁に入る」

「風呂が好きというかたは時折いらっしゃるようです。わたくしは、特にそういうことはありませんでしたが」

頻繁に風呂に入ることを自慢しようとしたが、かわされてしまった。

喜ぶかと思ったのに。

そうでもないらしい。

下手をすれば変人扱いだ。

風呂場に入る。

狭い風呂場で美少女と二人きりだと、ちょっと緊張するな。

ロクサーヌや他のメンバーで多少慣れたとはいえ、性奴隷でないルティナはまたちょっと違うし。

この場で押し倒し、いや、そうではない。

「この風呂桶を使う」

「大きい」

風呂場に入ると、ルティナが呆然とつぶやいた。

いや。分かっている。

もちろん風呂桶が大きいということだ。

いきなり俺が脱いだわけではない。

分かっている。

分かってはいるが。

俺と二人きりの風呂場で美少女が上の空で大きいなどと口にしたのだ。

しっかり記憶しておこう。

「ここにお湯を溜める。ルティナは、ウォーターウォールで水だけ出してくれればいい」

「しかも魔法でお湯を」

俺は遊び人のスキルを中級水魔法に設定して、魔法使いのジョブもセットする。

「こんな感じでな」

まずはウォーターウォールだけを出した。

風呂を入れるのに使う回数は火魔法よりも水魔法の方が多い。

遊び人のスキルもルティナに使ってもらうのも水魔法がいいだろう。

「分かりました」

「ルティナはもっと小さい風呂に入っていたのか?」

雑談を続けようと質問する。

しかしルティナは詠唱を始めてしまった。

風呂を入れるときに会話は無理か。

しょうがないので、俺はバーンウォールとアクアウォールを重なるように、ウォーターウォールをそのすぐ向こうに並ぶように呼び出す。

火魔法の火力を最大限活用するにはこの方がいい。

ルティナの水魔法を手前に張ってもらえばさらに有効だが、そこまではいいだろう。

ルティナも呪文を唱えてウォーターウォールを出した。

「くっ。こうしてはっきり分かると違いが」

その後で何かつぶやいている。

ウォーターウォールは、せめてルティナから見えない向こう側に出したが、足りなかったか。

火魔法と水魔法を両方使っていることがはっきり分かるし、しょうがない。

使っている魔法の種類も違う。

黙って風呂にお湯を入れていく。

「無理はしなくていいからな」

二回か三回で終わるかと思ったが、ルティナは案外がんばるので釘を刺した。

安全な家の中だから試しにやってみろといって、目一杯MPを使わせる手もあるか。

いや。魔法使いのレベルはすぐ上がっていくから、やめた方がいい。

「いいえ。わたくしとて」

「悪いな」

それでも結構粘る。

二桁近くまでいったのではないだろうか。

「すみません。このくらいまでです」

「ありがとう」

「いえ。あまりお役に立てずに」

「魔法使いになったばかりなのだし、ここまでできればたいしたものだ。それに十分活躍してもらった」

お湯はすでに半分くらい溜まっていた。

詠唱がないので、俺はルティナの倍近く魔法を使っている。

一回で三発だから実際には六倍だ。

「ミチオ様はまだお撃てになられるのですか。わたくしには才能がないのでしょうか」

MP残量が危なくなるまでがんばったらしい。

「鍛えればこのくらいはできるようになる。後は俺がやるから、ロクサーヌたちの方を手伝ってやってくれ」

「はい」

ルティナを送り出す。

詠唱があるので、共同作業で仲を深めることはできなかった。

一緒に入ってくれるだろうか。