軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

登竜門

火魔法を連発してケープカープを倒す。

魔道士のレベルも上がっているので、問題なく倒せた。

ミリアの状態異常にすら世話になっていない。

この分なら二十六階層でも問題なく戦えるだろう。

墜落したコイがアイテムを残し煙となって消える。

残ったのは肝が二つに、寄生ワームだ。

げ。

寄生虫が残るのか。

「こっちは肝か。食材ではないのか」

「肝を魔物に投げつけると、魔物がドライブドラゴンに変わることがあるそうです」

セリーが教えてくれた。

コイだけにドラゴンに変化するのか。

竜門という川を登ったコイは竜になるとか何とか。

鯉の滝登りだ。

この世界のコイもドラゴンになるのだろうか。

気にするだけ無駄か。

所詮魔物だ。

空中を泳いでいるくらいだし。

「魔物をドラゴンにすると、強くなったりしないか?」

「ボス以上の上位の魔物に対して使用します。ただし、あまりに強すぎる魔物はなかなかドライブドラゴンにならないそうです。魔物の強さによってドライブドラゴンへのなりやすさが異なります」

ボスなんかの強い魔物をドライブドラゴンにすれば弱くなるわけか。

もちろんドライブドラゴンにもボスがいてより上位のドラゴンがいるだろう。

そいつをドライブドラゴンに変化させれば確実に弱体化する。

「そういう風に使うのか」

「後は、ドライブドラゴンをどうしても倒したいときとか」

「ドライブドラゴンを倒したいときなんてあるのか?」

「ドライブドラゴンが残す竜皮は、プリプリしていて美味しいのだそうです。肌が美しくなるとされています。またスープに入れて煮込めば味がワンランクもツーランクもアップすると言われています」

ドラゴンのドロップを鶏皮みたいに言いやがって。

美肌効果があるかどうか怪しい限りだ。

ただ、スープが旨くなるということは出汁は取れるのだろう。

試してみるべきかもしれない。

「はい、です」

ミリアが寄生ワームを持ってきた。

考えないようにしていたのに。

寄生ワームは、ミミズっぽい虫だ。

動いてはいないようだが、生きているのだろうか。

魔物が消えて寄生虫が残るというのはよく分からん。

その前に魔物につく寄生虫というのが意味不明だ。

寄生虫も魔物なんだろうか。

ケープカープは川魚だから寄生虫が多いのだろうか。

「手で持っても大丈夫か?」

セリーに確認する。

手から人間の体内に入ってくることは多分ないだろうが。

「土に触れさせなければ問題ありません。寄生ワームは、土に触れるともぐっていき、そこで死ぬと言われています。寄生ワームをまいた畑は収穫量が増えるとされ、農家によく売れるそうです」

肥料なのか。

あるいは本当にミミズみたいな生き物なのかもしれない。

寄生虫のくせに益虫なのか。

「それなら最初から畑に住めという話だよな」

「アイテムボックスに入れておかないと、長くは生きられないようです。畑の中で十日以上生き延びている寄生ワームが見つかった例はありません」

幼生と成体で生育環境が異なるのかもしれない。

魔物の体内で成長し、土の中で生殖するとか。

畑の中で羽化して成虫になるので十日たつともう見つからないという可能性もある。

畑で普通に見られる蜂とか蛾とかの幼虫が寄生ワームということもあるかもしれない。

生物というのはたくましいものだ。

人間は迷宮に圧迫されているのに、逆に魔物に寄生する生き物もいるのか。

末恐ろしい。

いや。寄生ワームを残したケープカープは肝を残さなかった。

魔物が一個だけアイテムを残すとしたら、寄生ワームも魔物なのではないだろうか。

あるいは、寄生ワームはケープカープの肝を食べるのか。

食べられてなくなったので、魔物はアイテムを残せず、寄生ワームがドロップすると。

肝は、魔物が消えた後でも残る実体のある部位なのだから、食べる生物がいたとしても不思議はない。

この説が正しければ、寄生ワームに寄生されていたケープカープがモンスターカードを残すとき、寄生ワームとモンスターカードの二つのアイテムがドロップするはずだ。

我ながら完璧な理論。

「ケープカープがモンスターカードを残すとき、寄生ワームも一緒に残ったという話はないか?」

「聞いたことはないですね」

セリーが否定した。

俺の理論は時代の先を行きすぎて、まだ検証されたことがないようだ。

しょうがない。

ウェーゲナーといいコペルニクスといい、時代の先端を歩む者は理解されないのだ。

ミリアから寄生ワームを受け取って、アイテムボックスに入れる。

あれ。アイテムボックスに入るのだから、寄生ワームもドロップアイテムか。

アイテムボックスに入れられるのは装備品と魔物が残したアイテムだけだ。

俺の説は駄目じゃねえか。

まあ考えてもしょうがない。

所詮は魔物だ。

その後、二十六階層で探索した。

二十六階層でも戦えるようだ。

全体攻撃魔法も喰らったが、ロクサーヌと二人で問題なく回復する。

ケープカープの全体攻撃魔法は、得意属性の水魔法が中心で、風魔法も使ってきた。

得意属性だからといって威力が高いということはないらしい。

風魔法やグミスライムの土魔法とダメージは大差なかった。

得意というのは使うのが得意ということのようだ。

土魔法と弱点属性の火魔法はまだ浴びていないが、こちらも多分違いはないだろう。

苦手というのはきっと使うのが苦手に違いない。

今まで使ってきてないし。

ケープカープが残したアイテムは、肝の方が多かった。

ただ、寄生ワームがレアドロップというほどではない。

川魚は寄生されていることが多いようだ。

肝の使い道については、迷宮を出て朝食を取りながら相談する。

「やはり一度肝を使って魔物をドライブドラゴンにしてみるべきだよな」

魔物をドライブドラゴンにすることで得られるジョブがあるかもしれない。

あるいは竜を倒すとドラゴンスレイヤーになれるとか。

オラ、ワクワクしてきたぞ。

「そうですね。戦ってみるのがいいでしょう」

「ドライブドラゴンも他の迷宮では二十三階層以降に出てくる可能性がありますから、倒せない相手ではないはずです」

「やる、です」

「大丈夫だと思います」

今回は肝を使うことが目的でドラゴンと戦うことがメインではない。

結果的に戦うことにはなるとしても。

こいつらは妙に戦闘的だ。

「ケープカープをドラゴンにするか。いや、もっと低い階層の魔物にすべきか。迷宮の外にいる魔物とか」

何も好きこのんでLv26のケープカープをドラゴンにすることはない。

ドラゴンにする相手は選べるのだから、Lv1の魔物で試してみるべきだろう。

肝を使ったときにドライブドラゴンのレベルがどうなるかは分からないが。

ミリアが石化した魔物に肝を使う手もあるが、石化した魔物相手では失敗しそうだ。

肝が無駄になりそうな気がする。

成功して石化が解けても嫌だし。

「ドライブドラゴンは、迷宮の中にいるときの大きさと外に湧いたときの大きさが異なるそうです。最初は迷宮の中の魔物をドライブドラゴンにすべきでしょう」

セリーが答えた。

大きさが違うのか。

迷宮はそこまで広くないから、ドラゴンといっても大きさは限られる。

ドライブドラゴンが何十メートルもあったら迷宮にはいられない。

外に出ると大きくなって厄介になるのだろう。

セリーの言うとおり、迷宮の中にいる魔物をドライブドラゴンにした方がいい。

「そうすると迷宮一階層の魔物が無難か」

「ドライブドラゴンは二十三階層から三十三階層の間に出てくる魔物の中でダントツに強いとされています。一階層で試すのがいいでしょう。弱い魔物が相手だと肝を投げたときに成功する確率も高まるようです。一階層の魔物がコボルトなら確実にドライブドラゴンにできるとか」

「それなら一挙両得だな。クーラタルは混むので使えないだろうが」

「ドライブドラゴンはクーラタル三十三階層の魔物ですが、三十四階層のコボルトケンプファーより強いのではないかと言われています」

一階層のボスより強いと。

逆にいえば、一階層のボスより少し強いという程度の力しかない。

今の俺たちならなんとでもできるだろう。

早朝の狩で肝は十分集めたので、朝食後は一番にハルバーの迷宮一階層に赴いた。

ハルバーの迷宮一階層の魔物はナイーブオリーブだ。

「肝は俺が投げる。ドライブドラゴンになるまでは、ミリアは攻撃を控えてくれ」

「はい、です」

「ドライブドラゴンは、突進することが多いので、横や後ろからなら比較的安全に攻撃できるようです。また四属性すべての魔法を駆使し、四つの属性すべてに耐性があります。弱点となる属性はありません。雷魔法を使うのがいいと思います」

そういうことは早く教えてくれ、セリー。

食事中に教えてくれたら、そのとき遊び人のスキルに下級雷魔法をセットし、試験の後で中級火魔法に戻せたのに。

まあ遊び人のスキルに設定不能時間があるとか、その他の細かいことは明かしていないのでしょうがない。

そのくらいのマイナスは甘受すべきだろう。

セリーなら気がついてもよさそうだが、そんな場面はなかったか。

鑑定とか複数ジョブとかキャラクター再設定とか、一つ明らかにするとどこまでもつながっていきそうなんだよな。

話したところで、ロクサーヌたちに余計な荷物を背負わせるだけだと思う。

俺が墓場まで持っていけばすむ話だ。

どのみちデュランダルを使って俺が倒せばあまり関係はない。

新たなるジョブ、ドラゴンスレイヤーのためにも。

デュランダルを出して、ロクサーヌの先導で進む。

現れたナイーブオリーブに小走りで近づいた。

逃げられない距離まで接近して、肝を投げつける。

ナイーブオリーブに肝が当たると、一瞬魔物が煙になり、形を変えた。

煙がドラゴンの形となってから、再び魔物に戻る。

こうやって変化するのか。

ナイーブオリーブと同じ緑の魔物が現れた。

ドライブドラゴンLv1だ。

大きな爪のある四足と翼を持った細長いヘビ型のドラゴン。

全長はそれでも三メートルくらいあるだろうか。

かなりでかい。

普通に恐ろしい。

迫力がある。

ドライブドラゴンは、空中に浮かんでいた。

口を開けて牙をむき出しにする。

そのまま正面に立つロクサーヌに突っ込んだ。

ロクサーヌが上半身を倒してかわす。

さすがのロクサーヌも余裕を見て大きく避けた、と思ったら爪のついた前足がロクサーヌのすぐ脇から出てきた。

あれをかわしたのか。

ドラゴンが上体を戻し、再び突進する。

今度は、ロクサーヌが首だけを動かして避けた。

竜の頭は先ほどよりは前に出てこない。

と思ったら、前足をロクサーヌが盾で止めていた。

前足の小指とかが盾で止められたら痛そうだな。

それだけで魔物を倒せそうだ。

まあ正面はロクサーヌにまかせておけば問題はない。

俺は横に回って、安全地帯から攻撃する。

デュランダル一振りでは倒れなかった。

ナイーブオリーブではなくドライブドラゴン相当の体力があるようだ。

Lv1でよかったというべきだろう。

横からもう一太刀浴びせる。

同時にドライブドラゴンの動きが止まった。

反対側から攻撃しているミリアが麻痺させたらしい。

これはチャンスとデュランダルを連続で叩き込む。

竜が倒れた。

これだけでかいと倒したとき誰かが下にいた場合が厄介だな。

今回は麻痺していたから問題はないが。

時間も多少かかった。

一階層ボス並みの力はあるようだ。

ドライブドラゴンが煙となって消える。

竜皮が残った。

見た目も鶏皮みたいな竜皮だ。

白っぽくてつぶつぶまでついている。

あれは毛穴じゃないんだろうか。

竜だから鱗がついているのかもしれないが。

「はい、です」

ミリアが拾い上げた。

しまった。

俺が拾うべきだったか。

パーティージョブ設定で見てみるが、俺もミリアも新しいジョブは獲得していない。

肝で魔物をドライブドラゴンにしたりドラゴンを倒したり竜皮を拾ったりすることで得られるジョブはないようだ。

登竜門には合格しなかった。

その他の条件が足りていない可能性もあるが。

ロクサーヌたち全員にやらせる必要はないだろう。

「この竜皮は今日のスープに使うとして、明日の夕食も尾頭付きと竜皮のスープにしてみるか?」

「やる、です」

竜皮を受け取りながら尋ねると、ミリアが返してくる。

このやるは、料理を作るという意味のやるだろう。

竜を 殺(や) る、の意味ではないと思いたい。