軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二十四階層

翌朝、ハルバー二十三階層のボス部屋に到達した。

迷宮というのは上の階層に行くほど広くなるらしい。

二十三階層からは魔物が強くなるだけでなく面積も広がっており、ボス部屋を見つけるのにやや時間がかかってしまった。

ハルバーの二十三階層は出てくる魔物の多くが土魔法を弱点とする。

探索は順調に進んだはずだ。

これでも早い方だったのかもしれない。

「シザーリザードのボスはマザーリザードです。シザーリザード同様、土魔法が弱点で火魔法に耐性があります。マザーリザードの特徴は、なんといっても魔物を産み出すことです。魔法でもスキル攻撃でもないので詠唱中断では防げません。魔物が増えると形勢が一気に傾きかねないので注意が必要です。また、二十三階層からはボスは二匹の魔物を従えて出てきます」

セリーからブリーフィングを受ける。

なにやら恐ろしい敵のようだ。

詠唱中断も効かないのか。

まあ確かに、詠唱中断でなんでもかんでも防げたら楽勝すぎる。

「ブラックダイヤツナで試したときのように、魔物を引きつける。詠唱中断が使えないのならそれでいいだろう。初めてなので、ボスの正面はロクサーヌが頼む」

「分かりました」

本当はマザーリザードにはミリアをぶつけたいところだが。

詠唱中断が効かないとなると、頼みはミリアの石化だ。

しかし初めての敵だし、こちらの最大戦力であるロクサーヌでいくべきだろう。

ロクサーヌの巫女はLv25まで成長しているので問題はない。

石化だって二十三階層のボスにどこまで通じるか分からないし。

硬直のエストックをロクサーヌに持たせる手もあるが、暗殺者のスキル構成を考えればミリアが使った方がいい。

こうなるのだったらロクサーヌを暗殺者にしてミリアを巫女にすべきだったか。

いまさらしょうがないが。

「ベスタもこれを」

「はい」

デュランダルを出し、ベスタに渡した。

全員でボス部屋に突入する。

煙が集まり、魔物が三匹出現した。

中央のでかいのがマザーリザード、他の二匹は両方ともマーブリームか。

シザーリザードが出てくる可能性もあったのだからマーブリーム二匹というのは幸運だ。

いや、人間万事塞翁が馬。

幸運かどうかは分からないか。

弱い相手であることは確かだが油断は禁物だ。

サンドストームを二発放ち、ミリアが相手をするマーブリームに状態異常耐性ダウンをかける。

マザーリザードはシザーリザードと同じ二足歩行のトカゲだ。

はさみはない。

現れてすぐに土魔法の洗礼を浴び、嫌そうにこっちを睥睨した。

マザーリザードの足元に赤い魔法陣が浮かぶ。

げ。

魔法だ。

引きつける作戦なので仕方がない。

出現と同時に動いていたら間にあったかもしれないが。

詠唱中断のついた武器を早くそろえるべきか。

しかし詠唱中断があっても、マザーリザードが魔物を産むことは防げないんだよな。

「来ます」

火の粉が舞い、体が熱くなった。

胸が苦しくなり、節々が痛みを訴える。

せめて体を縮こまらせて、苦痛に耐えた。

シザーリザードの全体攻撃魔法より威力があるようだ。

さすがボスだけのことはある。

魔法を喰らっている間にマーブリームが接近し、攻撃をしかける。

ミリアが避け、ベスタが弾いた。

よく避けられるもんだ。

マザーリザードもやってきて、ロクサーヌに頭突きを見舞う。

もちろんこれが当たるロクサーヌではない。

通常攻撃なら何の心配もいらない。

「やった、です」

ミリアが硬直のエストックを突き入れると、マーブリームが石化した。

早い。

ミリアは石化したマーブリームの横を通ってマザーリザードの後ろに回る。

俺もマザーリザードに状態異常耐性ダウンをかけた。

「あやまちあらば安らけく、巫女の祝の呪いの、全体手当て」

ロクサーヌがボスの攻撃を避けつつ全体手当てを唱える。

セリーの射程圏内に入ったので連発されることはないだろうし、どうしても必要ということはないが、回復してくれるならありがたい。

MPの管理も含めて、使用の判断はロクサーヌにまかせている。

「やった、です」

しばらくすると、マザーリザードが石化した。

こちらも早かったな。

暗殺者と状態異常耐性ダウンの相性はかなりいいようだ。

これで動けるのはマーブリーム一匹だ。

四人が魚人を囲む。

マーブリームはすぐに倒れた。

最後はベスタの斬り込みで、横になる。

ベスタの受け持ったマーブリームが石化したマーブリームよりも早く煙になったのは、デュランダルでも攻撃したおかげだろう。

状態異常耐性ダウンをかけなかったせいか、ミリアが完封することにはならなかった。

「ベスタ、剣をくれ」

「はい」

後は石化した魔物だけなので、ベスタからデュランダルを返してもらう。

最初にマザーリザードを、次にマーブリームを始末した。

マザーリザードが魔物を産み出すところも見たかったが、無理に経験することはない。

あ、尾頭付きだ。

「尾頭付き、です」

「明日の夕食だな」

「はい、です」

ミリアが飛びついて持ってくる。

階層を突破した記念にトロとか言い出さなくてよかった。

尾頭付きならアイテムボックスにいっぱいある。

「セリー、このまま二十四階層に行って大丈夫だと思うか」

「もちろんです。問題はないでしょう」

一応セリーに確認すると、力強い返事が返ってくる。

セリーの判断でも問題ないのか。

他の三人に対しては、聞くだけ無駄だろう。

「ご主人様なら問題のあろうはずがありません」

「やる、です」

「大丈夫だと思います」

だからおまえら三人には聞いてないっつの。

まあセリーが反対しないのなら行ってみるべきか。

行って駄目そうなら引き上げるという手もある。

さすがに一階層上がったくらいですぐ全滅にまではならないはずだ。

いざとなったらアイテムボックスの回復薬を全部使うとかすれば、乗り切れるだろう。

「では二十四階層に行くか」

「ハルバー二十四階層の魔物はサイクロプスです。弱点は風魔法で、火魔法に耐性があります。火魔法も使ってきますが、接近戦での威力の乗った物理攻撃が脅威とされています」

セリーが説明した。

弱点は風魔法か。

遊び人のスキルは、初級風魔法にするのがいいだろう。

二十三階層に逃げ戻ってくる可能性もあるとはいえ、万全の体制で挑んだ方がいい。

遊び人のスキルを取り替えて、二十四階層に足を踏み入れる。

「サイクロプスのいるところで、魔物の少ないところに案内してくれるか」

「はい。分かりました」

「くれぐれも最初は慎重にな」

ロクサーヌに指示を出した。

「こっちの方が近いから右ですね」

ロクサーヌが右へと誘導する。

近いからという理由はやめてほしかった。

大丈夫なんだろうか。

今までも最初は慎重にやってくれていたから問題はないだろうが。

しばらく進むと、サイクロプス三匹が現れた。

赤茶けた肌の一つ目の巨人だ。

顔の真ん中にある目がでかい。

あれがサイクロプスか。

四人が走り出し、俺がブリーズストームを二回念じる。

風が吹くと、サイクロプスは立ち止まり、目を閉じた。

しばしそのままの姿勢でたたずむ。

そして目を開けると、きょろきょろと顔を動かして周囲を確認した。

あー。確かに分かりやすい弱点だな。

目が大きいのはいいことばかりではないようだ。

そうすると風魔法は二度いっぺんに使わず、時間差を置いて一発ずつ放った方がいいか。

次からは時間をずらしてブリーズストームを放つ。

遊び人の風魔法と魔法使いの風魔法を交互に。

風が吹くたびにサイクロプスの動きが止まった。

その間に四人が魔物のところにたどり着く。

剣と槍をぶち込んだ。

サイクロプスはベスタより一回り大きい。

やはり巨人だ。

俺もブリーズストームを撃ちながら近づく。

風魔法二発を交互に放つと、サイクロプスにはこちらを攻撃する余裕がなかなかない。

たまに腕を振り下ろしても、ロクサーヌにかわされてしまう。

「やった、です」

さらに一匹が撃沈と。

サイクロプス三匹を倒した。

煙が消えると金属の塊が残る。

銅だ。

三匹なら問題なしか。

あるいは問題か。

ドロップアイテムは魔物の体の一部が残ったものだ。

体の一部が金属でできているのは反則という気がしないでもない。

「銅か。こんなのを剣で斬りつけて大丈夫だったか」

「はい。問題ありません。サイクロプスが相手でも大丈夫ですね」

まあロクサーヌならそう言うだろう。

ミリアの石化もちゃんと発動したしな。

石化はスキルだから少し違うかもしれないが。

「サイクロプスと戦えるかどうかは、五匹を相手にしてから判断した方がいいと思います。すぐにも戦ってみましょう。銅は装備品の素材ですね。革よりも数を必要とすることが多く、扱いにくい素材です。がんばります」

セリーがなんか前向きだ。

開眼したのだろうか。

あるいはどうにでもなれと開き直ったのかもしれないが。

「サイクロプス五匹ですか」

「サイクロプスとシザーリザードで五匹のところでもいい」

「それならこっちです」

もう少し様子を見てからという気もするが、様子を見たからどうだということもないだろう。

やる気ならやる気のあるうちにやった方がいい。

ロクサーヌが案内する。

サイクロプス三匹とシザーリザード二匹の団体が現れた。

「さすがだな」

そういえば三匹と二匹の組み合わせなら分かりやすいといっていたか。

四人が駆け出して向かう。

俺もブリーズストームを一度念じてから追いかけた。

「来ます」

シザーリザードの足元に赤い魔法陣が浮かぶ。

周囲を火の粉が舞った。

火魔法が俺たちを襲う。

やはり五匹だと全体攻撃魔法を受けることも増えるか。

ロクサーヌが立ち止まり、全体手当てを使った。

走りながらと魔物の攻撃を回避しながらでは難易度が違うらしい。

魔物の攻撃をかわしながらなら使えても、走りながらの全体手当ては難しいようだ。

ミリアとベスタが替わって先頭に立ち、魔物に向かっていく。

シザーリザードの前にベスタが立ちふさがった。

全体攻撃魔法を使ったシザーリザードはまだ後ろ。

風魔法のたびに立ち止まるサイクロプスはさらにその後ろだ。

魔物はかなりばらけたな。

とはいえ、こちらが散開する手はない。

詠唱中断のスキルがついた武器を持っているのはセリーだけだ。

ベスタとミリア、セリーがシザーリザードを囲むように相手をする。

少し遅れて到着したロクサーヌは、同様に遅れてやってきたシザーリザードの前に立った。

「やった、です」

「来ます」

シザーリザードが石化すると同時に、後ろのサイクロプスの足元に魔法陣ができる。

サイクロプスは風魔法で行動を阻害できていいが、他の魔物と同時に出てきたときは厄介だな。

シザーリザードと一緒に行動していればセリーの槍が届いたのに。

折りよくブリーズストームを発動させるが、魔法陣は消えない。

キャンセルの機能はないようだ。

サイクロプスが火を吐いた。

単体攻撃魔法か。

ロクサーヌが難なく回避する。

単体攻撃魔法でロクサーヌを狙ってくれるなら問題ない。

シザーリザードと戦っている間にロクサーヌは先頭の位置に戻っていた。

目を閉じていても、サイクロプスの魔法はちゃんと狙えるらしい。

その方がいい。

狙えない場合、こちらが風魔法を撃つことによってサイクロプスに全体攻撃魔法を使わせることになりかねない。

弱点を突くことで危険な攻撃を誘発することになったら困る。

サイクロプスがようやく前線に到着した。

前に出てくるのは一匹だけだ。

一匹と、さっき火を吐いた一匹は後ろに回るらしい。

風魔法で一つ目巨人の行動を遅らせると二列めに回られることになるのか。

それは結局、全体攻撃魔法を誘発しているのと変わらないな。

ただしこの階層では。

全部の魔物が全体攻撃魔法を放ってくるようになれば、関係はない。

後ろに回ったサイクロプスは、倒すまでに一度だけ全体攻撃魔法を撃ってきた。

二匹で一度だから多くはないだろう。

風魔法による行動の阻害は結構効いているようだ。

「やった、です」

ロクサーヌが全体手当てをして、サイクロプスが倒れると、ほぼ同時にミリアが残ったシザーリザードを石化する。

シザーリザードは二匹ともミリアが無力化してくれたことになる。

「おお。さすがミリアだ」

「はい、です」

デュランダルを出し、石化した二匹を片づけた。

その間に、ロクサーヌがもう一度全体手当てをしてくれる。

デュランダルのHP吸収があるので俺には必要ないが。

「MPは問題ないか」

「はい。一昨日はあまりたくさん使える気がしませんでしたが、今はまだまだ何回でも使えそうです。不思議です。慣れたのでしょうか」

一昨日は巫女Lv1から始めたのに、今は巫女Lv25だからな。

たくさん使えるようにはなっただろう。

全体攻撃魔法を浴びてもロクサーヌが回復してくれるし、戦闘が長引けばミリアの石化がある。

二十四階層でも戦っていけそうだ。