軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シザーリザード

二十二階層でボス戦を続けることにした。

ボス部屋近くの小部屋にダンジョンウォークで移動し、ボス部屋へと向かう。

「次のボス戦では俺は魔法で戦ってみようと思う。ボスに対して魔法で戦えるかどうかのテストだ」

「分かりました。ご主人様なら全然問題ないと思います」

「ボスが強いといっても、マーブリームを短い戦闘時間で倒しています。問題はないでしょう。ブラックダイヤツナも、マーブリームと同様、水魔法に耐性があって土属性が弱点です」

セリーが問題ないというのなら大丈夫か。

一安心だな。

「陣形はどうしましょうか」

ロクサーヌが質問してきた。

フォーメーションの問題もあるのか。

魔法で倒すなら、こっちから攻め込まずに待ち受ける手もある。

そんなに時間は稼げないだろうが。

「今までどおりでいいだろう。ブラックダイヤツナをロクサーヌ、セリー、ミリアで囲んでくれ。ベスタはもう一匹の魔物を頼む」

「分かりました」

ボス部屋もそこまで広くはない。

無理に陣形を変えることはないだろう。

「ベスタにはこの剣を貸しておこう。最初はあくまでテストだしな」

「はい。ありがとうございます」

待機部屋でベスタにデュランダルを渡した。

ベスタはラッシュを使えないが、大幅な戦力ダウンにはならないはずだ。

俺が魔法を使うから、全体ではむしろアップしているくらいだろう。

しかしそうすると時間はあまりかからないのか。

二十三階層の配置換え待ちなのに。

まあ駄目ならまた何周かすればいい。

すぐに扉が開いたのでボス部屋に突入する。

人が少ないのがいいことか悪いことか。

煙が集まり、魔物がお出ましになった。

ブラックダイヤツナと、今回はロートルトロールだ。

魔法で戦おうというのに弱点属性の異なる魔物は不利だが、しょうがない。

俺は入り口の扉付近に立ったまま、サンドストームを連発する。

ボスの方が強いのだから、ボスの弱点属性を使うべきだろう。

最初にサンドストームを二回念じた後、ブラックダイヤツナに状態異常耐性ダウンをかけた。

ロクサーヌ、セリー、ミリアがボスに群がる。

ベスタはロートルトロールにデュランダルをぶちかました。

ロートルトロールが腕を振り上げる。

ベスタは、落ち着いて身構えた。

叩きつけられたパンチを避け、魔物の腕を二本の両手剣で挟み撃ちにする。

同じところを両側からでなく、上下に段差をつけていた。

えげつないな。

同じところじゃない方が痛いはずだ。

魔物にとってどうかは分からない。

しかし人なら腕の骨が逝ってる。

人の骨くらいならデュランダルは断ち切るだろうが。

ブラックダイヤツナに対しては、正面にロクサーヌ、背後にミリアが回って攻撃した。

セリーは横から槍を突き入れる。

俺も土魔法を重ねていった。

ブラックダイヤツナの下に一瞬魔法陣が浮かぶ。

セリーがすぐにキャンセルさせた。

このフォーメーションにも弱点があるな。

ボス戦では基本的に、部屋を広く使い、魔物を引き離すようにしている。

二匹の魔物に一人を集中攻撃されてはたまらない。

ボスとお付の魔物を引き離すので、セリーが両方を見ることはできない。

今までは俺がデュランダルでもう一匹の魔物を抑えていた。

今回もベスタがデュランダルを持っている。

ボスの方が魔法もスキルも強力だろうとはいえ、もう一方の魔物を野放しにしていいわけではない。

詠唱中断のスキルがついた武器が二本いる。

魔法を使って戦うとしても、結局デュランダルをしまうことはできないのか。

それなら俺がデュランダルを持ってラッシュで戦ってもたいした違いはない。

遠くから魔法を撃つ方が俺としては安全ではあるものの。

ロートルトロールが倒れた。

魔法ではなくベスタがデュランダルでとどめを刺したようだ。

デュランダルをベスタに渡すと、ますます俺がとどめを刺せなくなるという欠点もあるな。

俺はセリーの横に移動し、斜め後ろからブラックダイヤツナにサンドボールを撃ち込む。

ベスタは反対側に回って向こうから剣で攻撃した。

全員で囲み、ボスを倒す。

最期はやはりベスタがデュランダルでしとめた。

マグロが床に転がり、煙になる。

赤身が残った。

再び周回することが決定したが、しょうがない。

魔法で倒せたとしても料理人はつけていない。

「赤身、です」

ミリアが赤身だけを持ってくる。

ロートルトロールのドロップに興味はないようだ。

「それなりの長期戦にはなったが、魔法でも戦えないことはないか。ただ、次からはまたこれまでどおりに戦う。トロが残るまでボス戦は続けるぞ」

どうせデュランダルを出さないといけないのなら、魔法で戦う意味は少ない。

次は今までどおり戦えばいいだろう。

「はい、です」

赤身を受け取り、アイテムボックスにしまった。

「魔法でも戦えることが検証できてよかったと思います。二十三階層からはボスの他に魔物が二匹出てくるそうですし」

「そうなのか?」

「はい」

セリーが進言してくる。

二十三階層の魔物からは全体攻撃魔法も使ってくるらしいのに、さらにボス戦でも数が増えるのか。

いろいろ大変だ。

迷宮だって、生きているらしいし、簡単にやられたくはないだろう。

かといって、人を餌にしているのに、一階層からガチガチに固めたのでは誰も来なくなってしまう。

一階層は簡単に。

階層が進むにしたがって難しくしてガードを固くする。

うまくできてやがる。

まあ人の方もそれに合わせて徐々に強くなっていけるのだからお互い様だ。

「ボス戦で敵が三匹になるのなら、魔法で戦った方がいいかもしれないな」

「そうですね」

「ただ、フォーメーションを考えないといけないが」

詠唱中断のスキルがついた武器は、デュランダルとセリーの持つ槍の二本しかない。

魔物が三匹なら一対一の対応はできない。

「槍ならある程度の間合いが取れるので、私が二匹を見ることもできると思います」

「そうか。そのときには頼むな」

セリーがやってくれるらしい。

頼もしい限りだ。

セリーは戦闘でも結構役に立つんだよな。

俺がますます駄目に思えてくるじゃないか。

「向こうに行けばマーブリームとの団体がいます。マーブリームの方がにおいが強いので、数は少ないはずです」

二十三階層に抜けると、ロクサーヌがにおいを確認した。

状況に変化があったらしい。

「さすがロクサーヌだ。よし。ではそっちに行ってみるか」

ロクサーヌの案内で進む。

いずれにしても戦わなければいけないなら、早めがいいだろう。

道中、博徒をはずして錬金術師をつけた。

全員にメッキを施す。

万が一の用心だ。

「魔物に出会ったとき、これまでのように待ち受けるのではなく、走って近づいた方がいいと思います」

「ん? ああ、そうか」

「これがありますから」

セリーが強権の鋼鉄槍を示してアドバイスしてきた。

敵が全体攻撃魔法を撃とうとしても、槍の届く範囲ならばキャンセルさせることができる。

そのためにはこちらからも近づいた方がいいということか。

思った以上に役立つ武器だ。

「分かった。ただし、一発は受けてみるつもりだから、よほど早くなければキャンセルしないでくれ」

「分かりました」

いつまでもおびえているわけにはいかないし、一度は全体攻撃魔法を受けてみなければならない。

セリーにはその旨の指示を出す。

受けるなら駆け寄らなくてもいいのでは、と思ったが、待っている間に二発めを撃ってくる可能性もある。

その前に接近しておいた方がいい。

魔物が現れた。

マーブリーム二匹とシザーリザード一匹だ。

さすがはロクサーヌ。

望みどおりの組み合わせだ。

四人が走り出す。

俺はサンドストームを連発した。

シザーリザードもマーブリームと同じく土魔法が弱点なので、遊び人のスキルを変える必要はない。

シザーリザードは、はさみを持ったトカゲだ。

手がザリガニのようなはさみになっている。

ただし、体はトカゲ。

顔は爬虫類で尻尾も生えている。

尻尾のせいか、全体にザリガニっぽい。

フォッフォッフォッフォッ、と笑い出しそうには見えない。

ザリガニだしな。

土ぼこりが舞う中、俺も小走りに近寄る。

薄れたので次の魔法を放とうとするが、走りながらではうまくいかなかった。

詠唱省略で念じるだけといっても、ある程度は精神統一が必要だ。

剣を振り回しながら魔法を撃つことも難しいから、それと同じである。

立ち止まって次の魔法を使う。

ロクサーヌたちは一足早く魔物と対峙した。

「ミリアがあれを」

「はい」

シザーリザードにはミリアがあたるようだ。

最初の敵だからロクサーヌが行くかと思ったが、石化に賭けるらしい。

ミリアの斜め後ろにセリーが控える。

攻撃はしないようだ。

一発めは受けると言ったからな。

トカゲが魔法を撃とうとしたタイミングで槍を突いて、キャンセルしてしまう可能性もある。

シザーリザードがはさみを振り下ろした。

ミリアが盾で受ける。

受け止めた後、硬直のエストックで突き刺した。

石化はしなかったようだ。

「来ます」

俺が前線にたどり着く前に、ロクサーヌの警告が飛ぶ。

マーブリームの足元に魔法陣が浮かんでいた。

マーブリームかよ。

セリーがさっくりと槍を突いて、キャンセルさせる。

走らせておいて正解だ。

待ち受けていたら間に合わなかっただろう。

単体の水魔法ならロクサーヌがあっさりかわすだけかもしれないが。

前衛に追いついて、ベスタの後ろについた。

ロクサーヌの後ろは危険だ。

土魔法を放っていく。

マーブリーム二匹が倒れた。

マーブリームもシザーリザードも土魔法が弱点のはずだ。

同時に倒れないのは、その分シザーリザードが強くなっているということだろう。

サンドボールに切り替えてトカゲに撃ち込んでいく。

土球をかなりの数ぶち込んで、シザーリザードを倒した。

二十三階層からの魔物は相当強くなっているようだ。

ただし、倒れるまでの間シザーリザードは魔法を使ってこなかった。

使わないのか。

まあこんなもんか。

一回の戦闘でバカスカ撃たれたら、二十三階層の難易度はとんでもないことになっている。

全体攻撃魔法を使ってくることがあるという注意にとどまっているのは、それくらいの頻度ということだろう。

「二十三階層からの魔物はこちらからも近づかないといけない上に強くなっているから戦闘時間が延びて大変だな。大丈夫そうか?」

「動きそのものは特別たいしたことはありませんでした。問題ありません」

ロクサーヌならそうだろう。

シザーリザード一匹になってからはミリアと正面を換わっていたが、まったく寄せつけなかったし。

「問題は全体攻撃魔法ですね」

「そうだな」

セリーはよく分かっている。

「石化させる、です」

「頼むぞ」

「はい、です」

今回は石化しなかったが、戦闘時間が長引けばミリアの石化が効果を発揮することも多くなるだろう。

「大丈夫だと思います」

ベスタまでが頼もしい。

「ロクサーヌ、近くにシザーリザードと楽に戦えそうな団体がいるか? いなければ二十二階層に戻るが」

「こっちですね」

ロクサーヌの案内で進む。

せっかくメッキをかけたのだ。

全体攻撃魔法を受けるまで戦ってみたい。

ボス戦に戻って錬金術師をはずし料理人や戦士をつけたら、メッキがはがれてしまう。

次の魔物はシザーリザード二匹だった。

ロクサーヌとベスタが走りより、正面に立つ。

ミリアは遊撃に回るようだ。

いつの間にかベスタが主力に格上げになったのか。

まああの体格だしな。

後ろから見ていても頼もしく感じる。

ベスタが両手剣二本でシザーリザードのはさみを弾き返した。

弾かれてトカゲの姿勢が崩れる。

その隙を逃さず、剣を叩き込んだ。

ミリアも横から硬直のエストックで突く。

ロクサーヌは相変わらずトカゲの攻撃をすんでのところでかわしていた。

後ろから見ていると一瞬当たったかと思うような間隙しかない。

それでも当たることはない。

後ろではセリーが槍を持って監視していた。

こうして見るとうちのパーティーもかなり安定感があるな。

結局、全体攻撃魔法を受ける前に倒せた。

シザーリザードLv23はあまり全体攻撃魔法を使ってくることはないのだろうか。

一度受けてみたいのだが。

次のシザーリザードとマーブリーム一匹ずつの組み合わせは、シザーリザードにミリアの石化が発動してケリ。

続いてその次はシザーリザード一匹だったので、全員で囲み、全体攻撃魔法を使ってくる前に倒した。

さらにその次のシザーリザード、マーブリーム、ハットバット各一匹の団体も、シザーリザードが石化して。

駄目じゃねえか。