軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サンゴ

きりのいいところまで探索を行い、休息を取った後、クーラタルの十九階層に移動した。

ロクサーヌに地図を渡す。

「ロクサーヌ、ボス部屋まで最短距離で頼む」

「マーブリームが複数いる群れがあったらどうしますか」

「無視で……十七階層には後で寄ろう」

ミリアの視線が気になって、あわててつけ加えた。

尾頭付きのためには料理人をつけなければならない。

この階層ではマーブリームも少なくなるはずだ。

マーブリームを狩るのは十七階層で行えばいいだろう。

ときたま出会う魔物を蹴散らしながら、ボス部屋に向かった。

ロートルトロールのパンチは一撃が重そうだ。

攻撃を受けたら麻痺することがあるのだったか。

確かにあれを喰らったら痺れそうだ。

そのロートルトロールの殴打をロクサーヌは軽やかにかわしている。

重い分溜めが大きいので、避けやすくはあるかもしれない。

ロクサーヌなら目をつぶっていてもかわしそうだ。

というか本当に避けかねんのが恐ろしい。

ミリアもなんとか盾で受けきった。

ベスタはロートルトロールのパンチを剣で受け、もう一本の剣で払う。

正面から受けたのではなく、受け流したのだと思う。

片手でやってのけるところがすごい。

三人が対峙している間に、魔物を焼きこがした。

この三人なら大丈夫そうか。

問題があるとすれば俺が前に出るときだけか。

地図を見て進むだけなので、MPが尽きる前に待機部屋に到着した。

「ロートルトロールのボスはロールトロールです。ロクサーヌさんなら大丈夫だと思いますが、強烈な攻撃をしてくるそうです。転がって横を攻撃するスキルも持っています。後は、雷魔法を放ってくるので注意が必要です。雷魔法を受けると体が麻痺することがあるそうです」

セリーの説明だけだとやたら強そうだ。

実際にはスキルと魔法はキャンセルできるが。

魔物は雷魔法というのも使えるのか。

ボス部屋に入る。

魔物が二匹現れた。

ロールトロールとロートルトロールだ。

まずはご老体からご退場願わなくてはならない。

ロートルトロールをデュランダルで斬りつける。

腕を振り上げたのを見て、半歩下がった。

タイミングを合わせて殴打をかわす。

どれくらいの頻度で麻痺するのか分からないが、攻撃を浴びないにこしたことはない。

せいぜい注意した方がいい。

腕の動きが止まったところに、ラッシュを叩き込んだ。

ロートルトロールの動きを見ながら、攻撃していく。

次のパンチもなんとかかわした。

結構大変だ。

ロクサーヌはボスの相手があるから、ミリアかベスタにお付の魔物の正面で対応してもらうのがいいだろうか。

それもまた情けなさすぎるか。

情けないとか言っている場合ではないかもしれないが。

俺が麻痺してしまったら大きなピンチになるだろう。

セリーが抗麻痺丸を持っているとはいえ、薬を呑ませるにもまずは安全なところに退避させなければならない。

ボスの相手はロクサーヌがし続けるとしても、フォーメーションが全部崩れる。

魔物の動きを慎重に見ながら、ラッシュを重ねた。

ロートルトロールが倒れる。

なんとか攻撃を受けることなくすんだ。

ほっとする暇もなく、ボスの囲みに加わる。

ボスのロールトロールは、ロートルトロールと同じく灰色毛むくじゃらの、猫背の猿人だ。

背中が湾曲しているので背はベスタより低い。

伸ばせば分からないが。

伸びるかどうかも分からない。

ロールトロールの攻撃をロクサーヌがなんでもないかのように避けた。

次の殴打も少し身体を揺らした程度でかわす。

あの攻撃は結構怖いはずなんだけどな。

強烈に叩きつけられた腕が近くを通っただけで、かなりの風圧がくる。

ボスならなおさらだろう。

ロクサーヌはその魔物の攻撃を相変わらずミリ単位でかわしていた。

恐ろしい。

まあロクサーヌが回避し続ける限り、囲んでしまえばこっちのものだ。

全員で囲んで、斬りつける。

俺がラッシュをぶつけ、セリーが槍で突き、ベスタも二刀を叩き込んだ。

お。今のベスタの攻撃はクリティカルっぽい。

ロールトロールの曲がった背中に勢いよく一撃が入った。

クリティカルの発生率は、どうやらたいしたことはないようだ。

そんなに頻繁に出るわけではない。

分からなかったり見逃しているのもあるかもしれないが。

せいぜい数パーセントというところか。

レベル依存で増える可能性もあるが、そう大きくは増えないだろう。

ボーナススキルのクリティカル率上昇でも大きくはアップしない。

最初のクリティカル率上昇でアップするのは多分五パーセントだ。

ボーナスポイントを63も使っても三十パーセントしか上昇しないのだから、元のクリティカル率が三十パーセントもあるとは考えにくい。

七十パーセントということはあるかもしれない。

これなら両方足して百パーセント。

すべての攻撃をクリティカルにできる。

多分そんなことはなく、元のクリティカル発生率は最大でも五パーセント以下なんだろう。

三十パーセント乗せれば、それなりには使えるようになる。

使えるといっても三十パーセント上乗せして三分の一を少し超える程度。

あまりクリティカルに頼った戦いはできない。

全員で攻撃し、俺もラッシュを重ねてロールトロールを屠った。

最後はセリーの槍がとどめになったようだ。

槍が突き刺さり、ロールトロールが倒れる。

「次からはボスについてくる魔物も二人で倒すことにしよう。ロクサーヌとミリアにはボスを見てもらうとして、ベスタ、もう一匹の方の正面を頼めるか」

「分かりました。大丈夫です」

ベスタに話をつけた。

情けないとかいう理由でピンチになったら、そっちの方が情けない。

安全を優先させるべきだろう。

ロールトロールが煙となって消える。

後に白っぽい塊が残った。

鉄だ。

ロールトロールのドロップアイテムは鉄なのか。

「ありがとな」

「はい、です」

「鉄はやっぱり装備品の素材になるのか?」

「そうです。私にはまだ扱えませんが。鉄の装備品を作れるようになるには、十年以上は鍛冶師として修業を積まなければいけません」

ミリアから鉄を受け取りながら、セリーの説明を聞く。

鍛冶師が作る装備品は順番に作っていかなければいけないというのがめんどくさい。

一足飛びで作ることはできないらしい。

できたとしても、鉄一個だけではしょうがないか。

そのうち使うだろうから、物置部屋にでも入れておこう。

十年以上修業するとか言っているから多分レベルも関係するのだろうが、レベルの方は問題ないはずだ。

錆びなければいいが。

「鉄だ、鉄」

「てつ、です」

ミリアにアイテムの名前を教えてから、二十階層に移動した。

魚関係ないから明日には忘れているだろう。

鉄のウロコを持った魚とかいればいいのに。

それは巻貝か。

「クーラタル二十階層の魔物はラブシュラブです」

「ラブシュラブか。一度だけ戦ってから、十七階層へ行こう。ロクサーヌ、ラブシュラブのいるところに、頼む」

「分かりました。向こうですね」

ロクサーヌの案内で一度だけラブシュラブのいる団体と戦う。

強さを確かめて、十七階層に移った。

フィフスジョブを料理人にして、マーブリームを狩る。

「ミリア、尾頭付きは明日フィッシュフライにしようと思うが、どうだ」

「はい、です」

相変わらずいい返事だ。

ベスタが来たからマヨネーズを作らなくていいと思っているだろう。

甘い。

尾頭付きを二個得て、ハルバーの二十階層に移動した。

夕方まで探索を行い、クーラタルに帰る。

「ご主人様、ルーク氏からのメモが入っています。サンゴのモンスターカードを落札したようです」

家に帰ると、ルークからの伝言が入っていた。

ロクサーヌが読む。

「サンゴか。セリー、サンゴのモンスターカードは何のスキルになる?」

「武器につけると石化付与、防具につけると石化防御のスキルになります。コボルトのモンスターカードを一緒に融合すると、効果がアップするようです」

石化か。

なかなか使えるカードではないだろうか。

面白そうだ。

「杖につけたら魔法で石化するとか」

「それは聞いたことがありません。無理ですね」

「まあそうだろうな。受け取りに行くのは明日の朝でいいか。ベスタはこの間と同じようにミンチを作ってくれるか」

「分かりました」

ベスタに豚バラ肉とバラを渡した。

やはり合い挽き肉にする。

「ベスタはミンチを作るから、ミリアも俺を手伝ってくれ」

「はい、です」

というわけで、マヨネーズはミリアにお願いした。

実際には全員で交代しながら少しずつ分担する。

ロクサーヌやセリーも料理の合間に卵をかき混ぜてくれた。

五人でやれば負担も五分の一だ。

俺も混ぜる。

最後はベスタがかき混ぜて完成した。

ベスタはかき混ぜてばかりだ。

ベスタがマヨネーズをかき混ぜている間に、俺はハンバーグと同じように作ったミンチを小さく丸め、スライムスターチをつけて油で揚げる。

揚げた後、甘酢あんと絡めながら炒めた。

今回はハンバーグではなく中華風肉団子にしてみる。

材料はほぼ同じだが、ソースが違うので異なる味がした。

甘く絡みつくあんの中、軽く噛んだだけで肉塊が簡単に崩れる。

一口サイズというのがまたいい。

「これは、甘くて柔らかくて美味しいです。さすがご主人様です」

「先日のものと同じように作っていたのに、ここまで味が違うのですか。これも美味しいです」

「すごい、です」

「この料理もありえないくらいに美味しいです」

四人にも好評のようだ。

もはやミンチを下賎な食べ物だと考える人は彼女たちの中にいないだろう。

翌日、朝食の後で商人ギルドへモンスターカードを受け取りに行った。

ロクサーヌたちには洗濯や後片づけを頼み、例によって俺一人だ。

ルークを呼び出し、会議室に行ってサンゴのモンスターカードを買い取る。

「これはコボルトのモンスターカードと一緒に使おうと思う。一枚落札してくれ」

受け取ったついでに、コボルトのモンスターカードも注文した。

「コボルトのモンスターカードはこの前お買いになられたのでは」

「予備があると便利だからな」

コボルトのモンスターカードは現在一枚残っている。

だから、今から帰ってすぐに融合できる。

予備があれば、モンスターカードを落札した後、コボルトのモンスターカードを手に入れるまで待たなくていい。

これは大きい。

次回分も是非手に入れておくべきだろう。

自分たちの狩でモンスターカードが残った場合にも使える。

「便利なのは確かにそうでしょう」

「予備のためにもう何枚か落札してくれてもいい。買い注文を出していたところがなくなったから、コボルトのモンスターカードも少しは安くなるだろう」

MP吸収のスキルがついた武器を作ろうとコボルトのモンスターカードを買いあさっていたところがこの間まで存在した。

セリーに作らせて引き渡したから、もう注文は出していないはずだ。

「先日の競りで久しぶりに四千ナール台の数字が出ました。予備ということで時間がかかってもいいのなら、四千九百か四千八百で落札が狙えると思います」

「一枚めは五千ナールでいい。それが落札できたら、二枚め以降少し下げていこう」

「かしこまりました」

やはり多少下がっているのか。

俺が買い占めるようなことになってもまずいが。

そこら辺は落札価格との兼ね合いだ。

「あと、ヤギのモンスターカードが必要になった」

ヤギのモンスターカードの注文も出す。

階層を上げていかないとなかなかレベルが上がらないが階層が上がれば戦闘が厳しくなるわけで、それを解決するには武器の強化が一番手っ取り早い。

すでに聖槍は手元にあるのだから、聖槍に知力二倍のスキルをつければいいだろう。

「聖槍に使われるのでしょうか」

「いや、それとは別件だ。ちょっとよんどころのない事情があってな。一枚だけどうしても必要になった」

「そうですか」

ルークは俺が聖槍を持っているのを知っている。

というか取引に立ち会った。

ヤギのモンスターカードは、確かにルークの言うとおり聖槍に知力二倍をつけるのに使うのだが、それを明らかにしてしまうと何枚も買わなければいけなくなる。

実際に使うのは一枚だからたくさんは必要ない。

たまたま一発で成功したことにしてもいいが、いつもいつも一回では怪しまれる。

一回で成功したという言い訳は他のときに使うこともあるだろうから、今回は違う理由にする。

はっきりした理由まで教える必要はないし、適当にごまかしておけばいいだろう。

「ヤギのモンスターカードには五千五百まで出そう。一枚落札してくれ」

「かしこまりました。その値段なら遠からず落札できると思います」

ヤギのモンスターカードは前に五千四百で買ったんだよな。

そのときに五千四百のまま注文を続行しておけば、今ごろはもう一枚くらい手に入っていたかもしれないが。

すんでしまったことはしょうがない。

百ナールの違いなら安いものだ。

ルークにヤギのモンスターカードの依頼も出して、商人ギルドを後にした。