軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タックル

翌朝、迷宮に入った後、朝食を取ってから全員で帝都の図書館に赴いた。

アイテムボックスの中には早朝に拾ったアイテムが詰まっている。

休みなので売りには行けない。

金貨一枚と銀貨五枚を渡し、セリーを送り出す。

中に入るまで見送ろうとしていると、受付に行ったセリーが何故か戻ってきた。

「どうした。なんか忘れ物か」

「いえ。釣具屋のある場所を聞いてきました。冒険者ギルドとは反対方向、帝宮のある方に進んで、二つめの道を入ってすぐだそうです」

「わざわざ聞いてきてくれたのか。ありがとう」

冒険者ギルドに行って尋ねてみるつもりだったが、手間が省けた。

ありがたい。

休みなので人がいないかもしれないし。

セリーが中に入るのを見送り、ロクサーヌとミリアを連れて外に出る。

白亜の殿堂である図書館の奥には、立派な屋敷が続いていた。

立ち並ぶというほどではなく、間隔を開けて建っている。

いかにも貴族街という感じだ。

道も、石畳のこじゃれたメインストリートに変わっていた。

なんか場違いな雰囲気。

この向こうに帝宮があるのか。

「あそこのようですね」

ロクサーヌが指差す。

店頭に釣竿が何本も置いてある店があった。

釣具屋だ。

竿は何かの木で作られてる。

しょぼいような感じはしないでもないが、どう見ても釣竿だ。

釣りが行われているのは間違いない。

「いらっしゃいませ」

「海釣りをしたいのだが、道具を一通りそろえてもらうことはできるか」

中に入って、やってきた店員に告げる。

店の中はそんなにたくさんの釣具が展示されているわけではなかった。

狙う魚や場所によって仕掛けを換えることは、大がかりには行われていないだろう。

店員のジョブは商人だし、そろえてもらうのが手っ取り早い。

「釣りは初めてでございますか」

「そうだ。ミリアも釣りはしたことないよな」

「ない、です」

興味深げに釣り道具を眺めているミリアに話しかけると、こちらにやってくる。

やはりないようだ。

「かしこまりました。もちろんご用意させていただきます」

「頼む」

店員がタックルを用意した。

竿、リール、道糸、錘、針。

浮きはないようだ。

となるとミャク釣りか。

「釣竿は、最初の一本はこちらがよろしいかと思います。慣れてきたら、自分の好みも分かるでしょうし、釣り場などによっても使い分けていきます」

「分かった」

「リールは一つ、道糸は予備を含めて二つ。錘と糸はその日の状況や魚によって変えますので、何種類かご用意させていただきます。これらをつないで、このような仕掛けを作ります」

店員が見本の仕掛けを取り出して見せてくる。

釣竿から糸が出て、糸の先に針がつく。

特に変わったことはない仕掛けだ。

「なるほど」

「針にえさをつけて沈めます。えさは、海辺で採れるワームや小エビがよろしいでしょう。小魚を切ったものやカニでも釣れます。ただし貝は使えません」

この世界の貝には毒があるのだった。

「なるほどなるほど」

「なるほど、です」

「風が強かったり流れが強いときには重い錘を使います。完全に底まで沈んでしまうと、どこかに引っかかったりしてトラブルの元になるだけです。深く沈まない程度の軽い錘を使う必要があります」

店員が釣り方まで説明してくれる。

俺は話半分に、ミリアは、ロクサーヌの翻訳の助けも借りて熱心に聞き込んだ。

「なるほど、です」

「釣りの場合には漁業権の埒外になると聞いたが、本当か?」

「はい、そのとおりでございます。釣りはどこで行ってもよいことが帝国から認められています。ただし、竿は一人につき一本、針も一個という限定がございます。複数の針をつけると禁漁の制限にかかる場合があります」

「分かった」

針は一個か。

浮きもないし、針も一つなら漁場を荒らすほどの釣果になることはないのだろう。

店員が用意した竿を手にとって見る。

三つに分かれている継ぎ竿だ。

材料は木でできているが、結構柔らかい。

しかも中通しだ。

無駄に技術が高いな。

ただしリールはしょぼい。

ベイルアームとかもついていないし、キャストには使えないだろう。

本当に糸を巻くだけだ。

「そちらの釣竿は当店自慢の一品です。末永くお使いいただけると思います」

「どうだ?」

釣竿の根元の一本をミリアに渡した。

一つ一メートルくらい。

三本つなげるから、全体で三メートルか。

「後は、釣った魚を入れておく籠と、魚を取り込むときに使うざるもあれば便利でしょう。籠とざるはこちらにございます」

ミリアが釣竿の具合を確かめている間に、籠とざるを確保する。

どちらも木で器用に作られていた。

プラスチックがないから、木の加工技術が発達しているのだろう。

「大丈夫、です」

籠とざるを持って戻ると、ミリアが釣竿を渡してくる。

これでいいようだ。

「まあこんなところか。それでは全部もらえるか」

「ありがとうございます。ええっと。これから釣りを始めるお客様ということですし、全部で三千五百ナールとさせていただきましょう。それと、釣竿を入れる袋とこちらのタックルボックスも特別におつけさせていただきます」

店員が布袋と釣具を入れる箱も出してきた。

値段の方は、ぶっちゃけよく分からん。

日々の食費から考えると高いような気もするが、装備品の値段なんかも考えればこんなものか。

少なくとも三割引はしてくれたのだろう。

「悪いな」

「悪い、です」

ミリアが俺の腕をそっと引っ張って小声で告げる。

こっちの悪いは遠慮している悪いか。

「大丈夫だ」

ネコミミに手を置いて、軽くなでた。

貴族の趣味だと聞いたから金貨が飛んでいくかとも思っていたが、そこまではしない。

十分だろう。

釣竿とボックスはミリアに、ざるをロクサーヌに持たせて店を出る。

俺は籠をかついだ。

「ありがとう、です」

「釣れるといいな」

「釣る、です」

ミリアの目に決意が宿っている。

釣れないからといって海に入って魚を獲ることだけはやめてほしい。

まあロクサーヌも注意を与えていたみたいだから大丈夫か。

俺の言うことは聞かなくてもロクサーヌの意見には従うはずだ。

図書館に戻り、壁から移動した。

行き先はハルツ公爵領にあるハーフェンだ。

海のある場所といったら、ここしか知らない。

ペルマスクにも海があるらしいが、俺はギルドの外に出たことがないし。

ハーフェンでは朝の市はやっていなかった。

休日で休みだったのか、もう終わってしまったのか。

春と夏の間の休日とは、要するに夏至のことらしい。

北のこの辺りでは市が始まるのも早いだろう。

辺りを見回す。

村長Lv3のエルフがいた。

前にあった村長だ。

近づいて話しかける。

「この辺りで釣りをしても大丈夫か」

「はい。釣りはどこで行うことも認められております。この先にある磯などはなかなかよいポイントのようです。以前釣りに来た人がよく釣れたと言っておりました。岩場で網を入れにくいので魚も多くいるようです」

「この先か。行ってみよう」

村長に話を聞き、磯に出た。

漁場を荒らされないために変なところを教える可能性もあるが、網を入れにくいという理由は納得できる。

魚のいないところへ誘導して好き勝手に動き回られるのも嫌だろうから、それなりには悪くないポイントなのだろう。

磯には大きな岩礁がいくつもあった。

確かにいいポイントのようだ。

ミリアが真剣な表情で辺りをうかがう。

岩に乗り上げ、海を覗き込んだ。

「魚がいる、です」

満足げに戻ってくる。

「じゃあミリアはここで釣りをしているか」

「はい、です」

心配もあるが、せっかくの休日だから好きにさせればいいだろう。

ロクサーヌにも言って、釣り道具を全部置いた。

皮の帽子をミリアにかぶせる。

「一応、銀貨五枚を渡しておく。何かあったらあの村で必要なものを買え」

「ありがとう、です」

「午後には迎えに来る。あまり離れないようにな」

「はい、です」

ミリアと釣り道具を置いてその場を離れた。

磯から入った林の中の木にワープの壁を出し、家に帰る。

「大丈夫だろうか」

「大丈夫でしょう。あの村なら言葉の通じる獣人もいます」

そういえばなんとか語が少し通じるんだっけ。

まあ問題はないか。

海のことに関してはミリアの方が詳しいだろうし。

「ロクサーヌには銀貨十枚を渡しておこう」

「えっと。私だけ、よろしいのですか」

「ロクサーヌは一番奴隷だからな。特別だ」

「はい。ありがとうございます、ご主人様」

ロクサーヌに銀貨十枚を渡した。

ロクサーヌの場合買い物といっても浪費するわけではない。

今回はきっとミリアの服でも買ってくるのだろう。

多めに渡しておくのが正解だ。

ロクサーヌが笑顔で受け取る。

オークションの参加費は千ナールらしいので、それならこのお金で自分も会場に行くと言い出しかねないかとも思ったが。

言わなかったところを見ると、参加費がいくらかまでは知らないのかもしれない。

「それでは行ってくる」

「はい。いってらっしゃいませ。いいパーティーメンバーがいたら、お願いしますね」

ハーレムメンバーを拡充するのはロクサーヌ的にありと。

その言葉に甘えさせてもらおう。

言質は取った。

ロクサーヌに家の鍵を渡し、商人ギルドの待合室に飛ぶ。

待合室の中は結構な人でにぎわっていた。

商人ギルドの待合室にこんなに人がいるのを見たのは初めてだ。

壁から出たとき人にぶつかりそうになってしまった。

いや、大丈夫だ。

ぶつかってはいない。

新しいハーレムメンバーを選べるかと心がざわついているような気もするが、十分冷静だ。

何も失敗はしていないはずだ。

待合室の受付にいつもとは別の人がいる。

あそこで参加費を払い、中に入るらしい。

俺も前の人に続いて並んだ。

「参加費は千ナールだな」

「そうです」

「おう、おめえら、知ってるか。今日は魔法使いの奴隷が出るらしいぞ」

参加費を出して中に入ろうとすると、誰かが声を出す。

飯場の親方みたいなむさいおっさんだ。

「そうなのか」

俺の前に中に入った人が反応を見せた。

魔法使いといわれれば気にはなるのだろう。

俗物め。

重要なのはジョブじゃない。

美人かどうかだ。

「俺はなんとしても手に入れるぞ。白金貨の用意はできてるか。できてねえなら、帰るんだな」

おっさんがそこらじゅうに響く大声でわめいた。

そんなんで帰るやつがいるのだろうか。

案の定誰も帰ろうとはしなかったが、おっさんは満足げに引き上げていく。

千ナールを払って中に入った。

奥に進んでみる。

いつもは会議室として使うギルドの小部屋は、出品する奴隷商人と出品される奴隷の控え室になっているらしい。

一室に入ってみた。

「いらっしゃいませ。当店はこちらの竜人族の男を出品いたします」

中に入るとすぐに奴隷商人が話しかけてくる。

部屋には男が三人いた。

うち一人は探索者なので客だろう。

残る一人が筋骨たくましい大柄の男だ。

ジョブは竜騎士Lv1。

中二感溢るるかっけージョブだ。

竜人族の種族固有ジョブなんだろうか。

「そうか」

「竜人族は戦闘能力に秀でています。その力と存在感は近接戦闘においてパーティーの主力となるものです。戦闘奴隷として最も優れていると考えてよいでしょう」

奴隷商人が勧めてくる。

竜人族といっても見た目は人間と違いがない。

体は一回り大きい。

戦闘には向いているのだろう。

「なるほど」

「竜人族の中でもこの男は特に優れた力を持っており、自信を持ってお勧めできます。迷宮で鍛えており、すでに竜騎士のジョブも取得しています。即戦力として期待できるでしょう。竜人族には稀少価値もあり、この機会に入札しないと絶対に後悔します」

鍛えているといっても竜騎士Lv1だ。

とりあえず取得しただけという風に思える。

この奴隷商人のお勧めはあてにはならんな。

それ以前に男はノーサンキューでお願いしたい。

適当に断って、部屋を出た。

次の部屋に行く。

この部屋の奴隷は女性二人のようだ。

二人ともイスに座っている。

前の部屋の竜人もそうだったが、別に檻に入れておくとかではないらしい。

まあ檻に入れないといけないようでは、買ってもすぐに逃げ出しそうだ。

女性のうち一人は若くてそれなりに可愛い。

もう一人は美人ではあるが熟女。

オークションに出品するほどのものかどうかは微妙なラインだ。

「こちらの女は仲のよい母娘でして」

奴隷商人がにやけた顔をして、ひそひそ声で話しかけてきた。

なるほど。

死ぬまでに一回でいいからどうしても親子で、ってやつか。

俺は探索者じゃなかったら絶対AV男優になる。

引退したら女子大の教授になりたい。宝の山だからな。

別にそこまでの興味はないので引き下がった。

というか、実際問題どうするんだろう。

買ってまたすぐに売り払うのだろうか。

次の部屋の奴隷は女性一人。

どうやら女性の方が多いみたいだ。

女性の方が高く売れると奴隷商人のアランも言っていたし、当然か。

この部屋の女性は楚々としたお嬢様っぽい美人だ。

黙っていればどこぞのご令嬢に見える。

奴隷になるようにはちょっと思えない。

さすがにグレードが高い。

「いかがでございましょう。戦闘には向きませんが、最高級の美女でございます」

確かに、一目見て荒事に向かないことは分かる。

他の客も入ってきたので入れ替わりに外に出た。

すごい美人なので後ろ髪は引かれるが。

戦えないのではしょうがない。

髪を伸ばして静かに座っていれば、この世界では割とお嬢様に見える。

どうせ本物のお嬢様ということはないだろう。

下手にしゃべって幻滅するよりは、話をせずに妄想していた方がいい。

それに、人が売られているところというのもあまり気分のいいものではない。

などとフーゾクに行ったことのない学生のような感想を抱く。

気を取り直して隣の部屋に行った。

この部屋も女性一人か。

他に客はおらず、奴隷商人が一人いる。

彼女もやはり美人だ。

オークションに出品されるような奴隷は違うらしい。

大柄でたくましい感じがするので、戦闘もいけそうか。

「いらっしゃいませ」

奴隷商人が声をかけてくると、女性も立ち上がった。

でか。

ベスタ ♀ 15歳

村人Lv2

彼女を見上げる。

燃えるような赤い髪をした女性だ。