軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90. 事の顛末と開会式

攫われていた騎士見習い達は、全員無事に保護された。

メラニーを拘束していた魔力を奪う手枷も、ケラウノス3%でプスッとしたら無事に壊すことができた。

アードルフもメラニーの無事を喜んでいたが、自分を囮にして一人で何とかするつもりだったと聞くと、その場でメラニーを正座させてお説教が始まっていた。

とても心配したのでメラニーにはしっかり反省してほしいが、やはりアードルフはおかんだなぁと思ってしまった。

騎士見習い達の証言によると黒幕はやはりシュヴィールス公爵だったようで、そちらも公爵邸に突入したお養父様達によって無事に捕えられた。

お養父様達の突然の襲撃を受けたシュヴィールス公爵は最初は抵抗していたそうだが、すぐに観念して「息子たちは関係ない」と子供の助命を願ったのだそうだ。

散々私たちを苦しめてきたヴァルツレーベンの仇だが、自分の子供を大事に思う心はあったらしい。

捕えたシュヴィールス公爵や他国の貴族を尋問した結果、なんとエルデハーフェンの騎士見習いを他国に兵器として高額で売り払おうとしていたということが発覚した。

エルデハーフェンはそのほとんどが魔物の多く出る森に囲まれており、他国と国境が接しておらず、唯一海に面しているシュヴィールス公爵領だけが他国との交流の門が開かれている。

魔力持ちはエルデハーフェンにしか生まれることはなく、魔法剣を扱える騎士が一人いるだけで戦の戦況が大きく変わるので、他国の者からすると喉から手が出るほど欲しい存在なのだそうだ。

そこに目をつけたシュヴィールス公爵は、まだ精神的に未熟で操りやすい騎士見習いを洗脳した上で、他国に出荷しようとしていたらしい。

ちなみに、騎士見習いたちの洗脳は既に解けている。

メラニーの証言から、恐らく対象の負の感情を増幅して操る魔導具があるのだろうと予想されたのだが、「アーティファクトによるものなら、神の雷が効くのでは?」と言ったクリストフの思い付きを試す形でケラウノス3%でチョンっとつついてみたのだ。(痺れはするが、命に別状はない事は検証済みだ)

すると騎士見習いたちは昏倒し、目覚めた時には洗脳が解けていた。

それまでは、助かったというのにうじうじと膝を抱えてキノコでも生えそうなほど湿っぽかったのに、目覚めた時には随分すっきりとした様子だった。

どうやら、ケラウノスの雷にはアーティファクトの効力を打ち消す力があるらしいことがわかった。

話はそれたが、魔法剣を使える騎士たちはこの国にとっても重要な人材なので、これまで他国から派遣の要請があっても決して国王が頷くことはなかったのだが、まさかの四大貴族の一角からの裏切り行為。

国の中枢は大きく揺れた。

四大貴族の中でも筆頭とも言える大きな権力を持つシュヴィールス公爵の失脚は、国中に少なくない影響が及ぶことが予想されたが、国の未来の宝である騎士見習いたちを私欲の為に誘拐して売り払うのは売国行為だとして、公爵は最終的に処刑されることとなった。

又聞きでしかないが、捕まったシュヴィールス公爵はとても落ち着いていて、聴取にもすんなりと応じたそうだ。

処刑が決まり、何か思い残すことはないかと聞かれた彼は「最期に息子に会いたい」と言い、監視の騎士立会いの下、息子のリュディガーとの面会が叶ったのだという。

公爵には娘さんもいるはずなのに息子だけなのかと思ってしまうのは、私に前世の記憶があるからなのだろうか。

処刑当日の公爵はそれまでの落ち着き具合とは打って変わって非常に取り乱した様子で「わたしはやっていない! これは何かの間違いだ!」と最期まで無実を訴えていたらしい。

自分はシュヴィールス公爵ではないとも言っていたらしく、死の恐怖から精神を病んでしまったようだと聞いた。

公爵邸などの公爵が所有している建物は隈なく捜索されたが、洗脳の魔導具――公爵がしていたブローチであることが濃厚だが、それはどこからも出てこなかった。

また、何故公爵がヴァルツレーベンに執着し、攻撃を仕掛けてきていたのかも結局わからずじまいで、そちらに関しては動機も証拠も何もなしで公爵本人だけが処刑される結果となった。

メラニーを対聖女の人質にするといった発言があったようなので、ヴァルツレーベン、ひいては私に対して何か思うところがあるのは間違いないが、具体的な事はついぞわからなかった。

私としてはまるでゲームのラスボスと相対する時のような最終決戦を想定していたのだが、実際にはラスボスはお養父様とレオンが捕まえてしまい、私は結局パーティー以降直接会うことのないまま、あっけなく決着がついてしまったのだった。

「最終的に捕えたのは私だが、そのきっかけを作ったのは其方や其方の護衛騎士見習いだ。それに、奴は騎士見習いたちが見つかることはないと高をくくっていたようで、我らが突入してすぐは飄々と知らぬ存ぜぬを通していた。騎士見習いたちを保護したという一報が入ると観念したようであったが、其方が騎士見習いたちを見つけることが出来なければ言い逃れされていた可能性が高い。よくやったな」

すべてが終わった後、側近も排してお養父様と二人きりで話した時、そんな風に労われごつごつした大きな手で頭を撫でられた。

「約束であったからな、今後其方には政略結婚を強制しないこととする。其方の望む者と自由に縁を結ぶがよい」

「お養父様……」

「その相手が他領の者の場合は色々と差し障りがあるため事前に相談してほしいが、何とか其方の希望に沿うように努力はする。気兼ねなく婿候補を私の前に連れてこい。養父として、其方に相応しいか見定めてくれよう」

お養父様はなぜか楽しそうで、ノリで「うちの娘は嫁にやらん!」とでも言い出しそうな雰囲気だ。

やる気満々なところ悪いが、私は政略結婚が向いていないと思っただけで、結婚したい特定の相手がいるわけではないのだ。

生涯独身を貫いたらがっかりさせてしまうかもしれないけれど、言質は取らせてもらった。

少々モヤモヤは残るが、これで私の将来を自由にする権利が手に入ったので、貴族学園を卒業したらのんびりFIREライフが始められるように今から計画を立てていきたいと思う。

そして、ついに始まりました、貴族学園魔法剣技大会!

騎士団長の息子のゴットヘルフは、態度は悪かったが大会を中止にすることは本当に待ってくれていたようで、誘拐事件の犯人も無事に捕まり、何とか開催できることになったのだ。

かなり手間とお金をかけて準備していたので、開催することができて本当に良かった。

会場のコロシアムは観客で満員御礼。

昨日から会場の外で行っているグッズ物販も大盛況で、既にほとんどの商品がソールドアウトとなっている。

大会は個人戦だが、選手を寮ごとに色分けして応援グッズも寮カラーにしたので、応援席が見事に色分けされていてとても綺麗だ。

北の寮だけサポーターが少ないと悲しいので、転移魔導具で領地のサポーターもヴァルツレーベンから呼び寄せてある。

特集記事のおかげでユーリやレオンは辺境出身者以外にもとても人気なので、サポーターの少なさは無用の心配だったかもしれないけれど。

貴族席にはヴァルツレーベンの領主夫妻や選手に選ばれた騎士見習いの両親も応援に来ている。

当日は責任者の私はもうすることがないので、私も貴族席で皆と一緒に観戦だ。

騎士見習いのご両親には寮で出迎えた時に挨拶をさせてもらったが、事情を聞いたメラニーの両親には「うちの娘がご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした!」と土下座して謝られたし、クリストフとクラウディアの両親には「あの……クリストフがご迷惑をお掛けしておりませんでしょうか……」ととても恐縮された。

二人は家だと問題児なのだろうか。

メラニーもクリストフもよく仕えてくれていると伝えて、用意しておいた息子娘のグッズを手渡すと、どちらの両親もとても喜んでいた。

応援されるクリストフとメラニーは気恥ずかしそうにしていて可愛かった。

ガヤガヤと観衆の熱気が冷めやらない会場に、大会の始まりを告げるラッパの音が鳴り響く。

『大変長らくお待たせいたしました。これより、貴族学園魔法剣技大会を開催いたします。それでは、選手入場!』

フュルヒテゴッド作の拡声の魔導具を通して、記者クラブで一番口が達者なダミアンが選手入場の宣言をした。

彼は本日の司会進行と実況役だ。

オーケストラクラブの生徒たちによる、入場曲の演奏が始まる。

曲は前世の有名なアニメソングである。

選手の入場には、やはり“これから来るぞ、始まるぞ”と観客のボルテージを否応なく高める盛り上がり曲が必要だと思ったのだが、オーケストラクラブのレパートリーは優美なクラシック曲が多かったため、無理を言って練習してもらったのだ。

参考は私のつたない鼻歌と口頭での説明しかなかったのに、オーケストラクラブの部長さんが見事に私の意図を汲み取って編曲してくれたので、天才というのは結構いるものなのだなと驚いた。

『南の寮所属、風を纏いし魔剣ティルヴィングを操る【漆黒の貴公子】、皆様ご存じ昨年の覇者、我らのヴィクトール・フォン・エルデハーフェン王子ー!』

ダミアンの紹介と共に入場してきたヴィクトール王子に大きな歓声が上がる。

残念王子だけど、民衆人気はとても高いらしい。

その後も続々と選手の入場が続く。

『北の寮所属【疾風の黒き狼】メラニー・ゲラーマン!』

いつも通りの淡々とした様子でメラニーも入場した。

ちなみに特集記事にも載せた各選手の二つ名は、私もアイデアは出したがほとんどがダミアンの作である。

いい感じに中二病っぽくてとても良いセンスだと思っている。

ユーリには不評だったみたいだけど。

『続いて北の寮所属、大人気【 太陽と月の兄弟(ソルナディアブロッド) 】の片割れにして、全てを凍らせる魔剣ミスティルテインを操るのは、【氷銀の騎士】ユリウス・フォン・ヴァルツレーベン!』

ユーリはとても女性人気が高いようで、入場した瞬間「きゃあああぁぁぁ!」と大きな黄色い声援が上がった。

本人はものすごく嫌そうに眉間に皺が寄っている。

「太陽と月の兄弟ってなに……」とでも思っていそうだが、レオンとユーリの兄弟が人気すぎてついた固有のユニット名である。

太陽のように明るいレオンと、月のように静かなユーリの対比が“とても良い”のだそうだ。

普段のユーリは別にクールでも静かでもなく、優しくて頑張り屋さんの良い子なんだけどな……。

ユーリに黄色い声援を送っている女の子たちを見て、一瞬チクリと胸が痛んだ気がしたけど、多分気のせいだろう。

『そしてこちらも優勝候補、北の寮所属、【 太陽と月の兄弟(ソルナディアブロッド) 】の片割れにして、天衣無縫の剣技で炎の魔剣レーヴァテインを操るのは【紅蓮の騎士】レオンハルト・フォン・ヴァルツレーベン!』

きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!

会場に一際大きな黄色い声援が響き渡る。

さすがレオン兄様、女性人気が凄まじい。

ニコニコと笑顔で観客に手を振っていて、特に緊張とかはなさそうだ。

楽しそうで何よりである。

全選手の入場が終わり、闘技場に整列した。

『さぁ、ここに集ったのは、比類なき実力と才能を持つ者ばかり。この猛者たちの中で栄光の頂点を掴むのは、果たして誰になるのでしょうか! それでは、貴族学園魔法剣技大会の開幕です!!』

ダミアンの宣言に合わせて、花火が上がり、ラッパの音が鳴り響く。

わああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ

会場は大歓声に包まれ、観客も選手たちも熱気が最高潮に高まっているのを感じる。

開会式には力を入れた甲斐があって、掴みは十分すぎるほどだ。

色々あったが、ようやく皆でたくさん準備してきた学園魔法剣技大会の本番が、今始まる。