軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18. リリーちゃんのシスター式魔力トレーニング

今日は教会で礼拝の日。

いつもと同じように、カインと二人で参加している。

今日も今日とて、シスターエミリーの鈴を転がすような美声が聖堂に響いている。

これまでも何度か礼拝には参加しているのだが、その中で気付いたことがある。

「体の中に、神の 御力(みちから) を感じて下さい。暖かく、優しくも力強いその御力を、体の隅々まで行き渡らせるのです。体の中心から右手へ、そして右足、左足、左手、頭、そしてまた中心へと、流れていきます。深呼吸をして、焦らず、ゆっくり、ゆっくりと、神の御力が循環するのを想像してください。はじめは小さなせせらぎがいずれ大河となるように、神の器を大きく育てていくのです」

この神の御力って、魔力の事なんじゃないかなって。

神の器というのは魔力の許容量のことで、魔力を体内で循環させることによって増やしていく事ができるというのが私の仮説だ。

その証拠に、シスターの声に合わせて以前倒れた時に感じた熱い何かを循環させるように動かしていくと、だんだんうまく動かせるようになってきて、なんとなく以前よりも熱いものが増えているし、許容量が増えているような気がするのだ。

熱いものが爆発しそうになるあの発作もあれ以来起きていない。

あの時は魔力の器がまだ小さくて、あふれそうになっていたんじゃなかろうか。

そう思うと、前世の漫画のうろ覚え知識でやってみた事が大正解だったことになる。

何事もやってみるものである。

シスター、最初は胡散臭い宗教みたいだって思ってごめんね……。

最近では毎晩寝る前に魔力循環を行うようにしていて、始めた当初は魔力の流れに翻弄されてかなりの集中力が必要で汗びっしょりになったりしていたものだが、今ではそこまで集中せずともスムーズに動かせるようになって、だいぶ魔力が増えてきたように思う。

まぁ、増えても今のところ何の使い道もないんですけど。

継続は力なりといいますし。

……もしかしたら、ある日突然〇めはめ破が打てるようになるかもしれないじゃん!

「お兄ちゃん、騎士学校ってどんな感じ? たのしい?」

教会からの帰り道、カインと手を繋いで歩きながら、学校生活の様子を聞く。

「訓練はすっごくきついけど、最初はできなかったことがだんだんできるようになっていくのは楽しいよ。最近やっと魔法剣を使った訓練もさせてもらえるようになったんだ」

このところニョキニョキと身長を伸ばしてイケメンに磨きがかかっている兄が、目をキラキラさせて嬉しそうにしている。

魔法剣というものは、少年なら誰しもが憧れるものらしい。

魔力を込めるとピカピカ光ると聞くが、私はまだ見たことがないのでいつか見てみたいものである。

「でも、俺は魔力が少なくて、魔法剣を起動することもまだできないんだ。貴族出身の他の騎士見習いは簡単に起動してるのに……。がんばって練習はしてるんだけど、このままだと騎士になるのは難しいかもしれないって教官に言われたんだ。体力や剣技は良くても、魔力が足りなくて魔法剣を起動できずに騎士になれない人が毎年何人かいるんだって……」

そう言ってカインはしゅん、と肩を落としている。

むむ、推しがしょんぼりしている!

これは、私の出番では?

「魔力の増やし方、私たぶんわかるよ。教えようか?」

「ええ!? なんでリリーがそんなの知ってるんだ!? っていうか、魔力量は生まれた時から決まってて、増えたりしないって教わったけど……」

「私もたぶんってだけで、自信もって言えるわけじゃないんだけど……」

「そっか……まぁそうだよな。違ってても何かあるわけじゃないし、可能性が少しでもあるなら、俺はやってみたい。リリーのその魔力の増やし方っていうの、教えてもらってもいいか?」

「うん。おうちに帰ったら、やってみよう」

学費が貯まってからは、毎日傷だらけでがんばっている兄の力になれるようなことがあまりないことを歯がゆく思っていたので、ようやく訪れた応援のチャンスに喜び勇んで家への道を早足で帰った。

本日は定休日のためシンとしている我が家に戻り、万が一倒れたとしても大丈夫なように二人で靴を脱いでベッドに上がった。

「シスターがいつも言ってる、神の御力っていうの、あれ、魔力の事だと思うんだ。体の中で魔力を循環させて、器を大きくして、魔力を増やすっていうことを言ってるんだと思う」

「えぇ……。俺、なんかよくわからないこと言ってるなぁって、今まで真面目にシスターの話聞いたことなかった……」

「わかる。私も最初はそうだった」

というか、ほとんどの子供たちがそう思っていると思う。

「魔力を循環させるって言われても、よくわからないんだけど、どうやってやるんだ?」

「体の真ん中の、奥の方に、なんか熱い塊みたいなの、ない? それをちょっとずつ、動かしていくんだけど……」

「ううーん……。そんなのあるかなぁ……?」

兄と私では感覚に違いがあるようで、二人して頭に「?」を飛ばして中々先へ進まない。

「じゃあ、わたしが動かしてみるから、手をつないでやってみる?」

向かい合って両手をつなぎ、いつも自分の中だけで循環させている魔力を、兄も自分の一部のようにイメージしながら、ゆっくりと、少しずつ流していく。

「わっ、わっ、わっ、な、なんだこれ!? なんか、あったかいのが、リリーの手から流れてくる! これが、魔力!?」

「うん、たぶん。深呼吸して、あせらず、ゆっくりと体の中を循環させてください。己の中の器を、大きく育てるのです……」

「ぶはっ、ちょ、笑わせないでよ、リリー! ふっ、ふははっ」

シスターの言い方を真似して言うと、ツボに入ったようで兄が小刻みに震えながらくすくす笑っている。

少しずつ流しているのが良かったのか、慣れた私が流しているからか、あんまり集中できていなくても魔力の流れに翻弄されるようなこともなくほっとした。

しばらくそうしていると、兄も慣れてきたようで私が流そうとしなくても自然と流れるようになってきた。

「なんだか体がぽかぽかしてきたな。これをすると魔力が増えるのか?」

「うん。毎日してたら、ちょっとずつ増えてるような気がするよ。これから、毎日寝る前とかにやってみようか」

「うん! そうしよう!」

こうして、毎日のナイトルーティンが兄との手つなぎ魔力循環にアップデートされたのだった。

輝くような笑顔で魔法剣が起動できたことを兄が報告してくれるのは、すぐ先の未来のお話。