作品タイトル不明
進化の兆し
「フンフフン……」
カレンの友達が出来た村を出発したその日の夕方。
皆で手分けして野営の準備をしていると、カレンの楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。
「……ご機嫌のようだな」
「ああ、今日はずっとあんな感じだぜ」
俺の近くで肉を捌いていたレウスが呆れた表情をしていたが、その気持ちはわからなくもない。
イルアとの別れ際にリボンを貰ってから、カレンの表情は緩みっぱなしだからだ。移動中も暇を見つけてはリボンを眺め、今も焚火にかけた飯盒の様子を見ながら髪のどこに着けるかで悩んでいた。
「こっち? やっぱりこっちかな? リースお姉ちゃんはどこがいいと思う?」
「そうね……カレンの髪には纏める事に使うよりワンポイントで着けた方がいいかも」
その隣には自分の作業を終えたリースもいて、リボンを結んでもらっていた。
どこにでもあるようなリボンであるが、カレンにとっては初めての友達から貰ったものだから嬉しくて堪らないのだろう。
ちなみにカレンはリボンのお返しに白い羽根を一枚渡していた。
それはカレン自身の翼から取ったものだが、イルアには道中で手に入れた有翼人の羽根だと説明している。お互いの安全の為、今はまだカレンの正体を教えない方が良いと判断したからだ。
信じたかどうか定かではないが、普通の鳥とは明らかに違う純白な羽根をイルアは嬉しそうに受け取っていた。
再会の証として互いに贈り物をする事によって、寂しさもありながらも笑顔で別れる事が出来たわけだが、カレンの興奮は未だに冷めないわけだ。
「リボンだけであんなにも喜べるのって、昔の姉ちゃんみたいだな」
「いいえ、まだまだですね。私がシリウス様から初めてリボンをいただいた時は、感激のあまりにしばらく身に着ける事を躊躇ったものです」
「あの時はリボンが泣いていた気がするよ」
せっかくプレゼントしたのに、汚すわけにはいかないと言って中々着けてくれなかったからな。その後、数日に亘るリースの説得によってようやくリボンを着けてくれるようになったわけだ。
当時の事を思い出して苦笑していると、狩りに出ていたホクトが大きな獲物を咥えて戻ってきた。
「おかえり。今日は少し遅かったな」
「オン」
「……どうした? 何かあったのか?」
いつものようにホクトの頭を撫でて労っている内に僅かな違和感を覚えた俺は、レウスに獲物の解体を任せて質問をしていた。
翻訳はエミリアがいるから問題はないし、何より前世からの付き合いもあってこいつの言いたい事は大体わかる。
この迷っているような雰囲気からして……。
「何か怪しいものを見つけたから、判断に困ってる……といったところか?」
「えーと……ホクトさんが狩りをしている途中で不思議な感覚を覚えたそうです。なので周辺を探ってみたのですが……」
「お前の様子からして敵意はなさそうだな」
「クゥーン……」
「少なくとも嫌な予感ではなかったですし、その感覚もほんの一瞬だったので気のせいかもしれない……との事です」
詳しく聞いたところ、ホクトは相当な範囲……それこそ山一つ分の距離は駆け回ってきたそうだが、結局何も見つからなかったらしい。
百狼は色々と謎が多いし、ホクト自身でさえ知らない百狼の超感覚で何かの存在を感じたのだろうか?
気のせいならそれでいいのだが、ホクトでさえ感知出来ない存在がいる可能性もあるので、遭遇したらすぐに逃げる事も視野に入れておかなければなるまい。
とにかく警戒だけはしておくべきだと気を引き締めていると、俺たちのやりとりを眺めていたカレンが首を傾げながら質問してきた。
「お父さんは何でホクトの言葉がわかるの?」
「ホクトとは長い付き合いだからな。目と仕草を見ていれば何となくわかるのさ」
「オン!」
他にも尻尾の振り方や体全体を使った動きで察する事も出来るし、最終手段として地面に図や文字を描いた表現が可能な相棒だからな。
調理を再開しながらこれからの動きについて考えていると、カレンがホクトの目を真剣な表情で眺めている事に気付いた。
どうやらカレンもホクトが何を言っているのか理解をしたいらしい。
「オン?」
「うーん……お腹が空いた?」
「……オン」
「違うの? じゃあブラシでゴシゴシして欲しいんだね?」
「……オン」
「フリスビーがしたい!」
「クゥーン……」
「カレン。何か違うと俺は思うんだが」
それは理解と言うより、ただの消去法である。
つまりカレンから見て普段のホクトはフリスビーかブラッシング、そして俺の生み出した魔力の塊をねだるかのどれからしい。
否定してやりたいところだが、戦う事がなければ大体そんな感じなので完全に否定出来なかったりする。
ちなみにホクトが何を言おうとしていたかだが、自分が遊び相手になりましょうか……だったとさ。
ホクトの情報から警戒を強めてはいたが、結局何事もなく次の日となり、俺たちは野営の片付けを済ませてから移動を再開した。
天候に恵まれたので、そろそろ訓練を始めようかと思いながら馬車を走らせていたのだが、その日はどこか様子が違っていた。
「……妙だな。さっきから魔物の気配が全く感じられない」
「私の鼻でも魔物の匂いを感じません」
「いつものように、ホクトが怖くて逃げているんじゃないの?」
「うん。ホクトは凄く強いもん」
「でもさ、ここまで全く気配を感じないのは変だぜ?」
確かにホクトの存在によって魔物は本能的に避けるのだが、あくまで魔物は近づきにくいだけの話である。危機感知が低かったり、空腹や戦いに飢えたりする魔物もいるからだ。
それに周辺に影響を与え過ぎないよう、ホクトは普段から気配を少し抑え気味で歩いているので、ここまで広範囲に魔物が全くいないのは明らかにおかしいのである。
「『サーチ』で調べてみたが、予想通りの反応だ。精霊の方はどうだ?」
「……何も言ってこないわね。何かあればすぐに騒ぎ出すのに、今は静かなものよ」
「私も同じだよ。むしろいつもより大人しい感じがする」
「ホクト、昨日と同じ感覚はあったか?」
「クゥーン……」
「あ、これならカレンもわかる。ないって感じだね」
ホクトの違和感から始まり、魔物の空白地帯に加え精霊が大人しいときたか。
明らかに何かが起こっている証拠だが、俺たちに影響がないので原因が掴めない。
何が起こっても対応出来るように訓練は中止にしたが、この妙な状況は変わらないままであった。
そうして何事もなく移動を続けている内に腹が減ってきたので、途中で馬車を停めて食事休憩をとる事にした。
「うーん……本当に何も起こらねえな」
「何事もないから不安って不思議だよね」
「鼻を働かせ過ぎて少しムズムズしてきました」
「精霊とホクトが何も感じないんだから、私たちが必死になっても仕方がないと思うわよ。適度に気を抜きなさい」
「フィアみたいに開き直れとは言わんが、まあそういう事だ」
「お腹空いた……」
「そうだな。兄貴、俺も腹減った」
「私も……」
「はいはい。すぐに作るからな」
一部を除いて精神的な疲れが若干見え始めているが、カレンがいつも通りなのが幸いだな。まあ傍目からすれば魔物に一切襲われない状況なので、平和な旅にしか見えないからだろう。
ホクトは周辺の索敵を怠っていないし、ここは遮蔽物の少ない平原なので遠距離攻撃の可能性は低い。それに敵が潜んでいそうな箇所があれば『サーチ』を放っているので、奇襲されようと即座に対応は可能だ。
適度に緊張を保ちながら昼食を食べ終え、食事休憩に入ろうと思ったところでホクトが俺の前にやってきた。
「クゥーン……」
「やれやれ、少しだけだぞ」
ホクトは自分専用のブラシを咥えているので、ブラッシングの催促である。
その様子に気づき、自分専用のブラシを手にした姉弟がホクトの背後に並ぶ中…………それは突然現れた。
『……嘆かわしい』
瞬間、俺はブラシから手を放しながら身構え、ホクトも戦闘態勢をとっていた。
皆もほぼ同時に武器を構えながら、声が聞こえた方角からカレンを守るように立ち位置を変えている。
場合によっては即座に『マグナム』を叩き込もうと魔力を集中させていると、目の前の景色が歪み……。
『まさかこのような所で、人如きに媚びる同胞を見るとは思わなかったぞ』
何もなかった筈の空間に、全身が白銀に輝く巨大な狼が現れた。
それは俺たちが見慣れているホクトをそのまま大きくしたような姿……つまり百狼なのだが、その存在感はホクトとは明らかに違っていた。
まず大きさ。ホクトは人を二人乗せても平気なくらいに大きいが、目の前の百狼はそんなホクトより二回りは大きい。簡単に言えば大人と子供のようだ。
何よりも圧倒的なのは、その身から溢れ出ている魔力であろう。
ただそこに立っているだけなのに逃げ出したくなる威圧感を放っているが、こちらも様々な経験を重ねているので耐える事が出来た。
「わぁ……ホクトより大きい!」
そして意外な事に、カレンが全く動揺していなかった。
考えてみればアスラードやゼノドラといった上位竜と一緒に過ごしていたので、そういう精神的な部分は鍛えられているのだろう。
「背中に乗せてもらえるかな?」
「カレン、それは後にしなさい」
いや……ただ無謀というか、怖いもの知らずと言った方がいいかもしれない。
フィアに窘められて素直に引き下がってくれたものの、緊張感が霧散してしまいそうである。
気を取り直して集中していたが、百狼は呆れているような感情を見せていた。
『人が我の接近に気付かぬのはわかるが、まさか同じ百狼であるお前まで気付かぬとはな。やはり人と共にいれば自然と腑抜けとなるか』
ここまで接近されても声をかけられるまで気付けなかったのだから、この百狼はホクトでさえ知らない特殊な能力を持っているのだろう。
つまり目の前の百狼が昨日から感じていた違和感の正体だが、いきなり攻撃をしてこなかった点からして、少なくとも敵意はないと思いたい。
それに俺たちはホクトと一緒にいるので、百狼の力を十分知っている。
もし戦いになれば全滅する可能性もあるだろうし、そもそも戦う理由もないので丁寧な対応を心掛けようと考えていたのだが、横に立つホクトだけが敵意を剥き出しにしていた。
「ガルルル……」
『何だ? 人なぞ、その気になれば腑抜けのお前でも蹂躙出来る存在であろう?』
「オン!」
腑抜けと言われて怒ってー……いや、ホクトはそんな挑発で怒るような奴じゃない。
もっと別の……俺たちに関する事か?
「何だろう、ホクトがこんなにも唸ってる姿なんて初めて見たよ」
「百狼は謎が多いし、同族と出会ったら戦わなければいけない習性でもあるのかしら?」
「違うよ、フィア姉。ホクトさんは怒っているんだよ。自分はとにかく、兄貴や俺たちの事を見下しているのが許せないんだってさ」
「私たちは家族で、シリウス様は敬愛すべき主だから訂正しろと仰っているようです。それでこそ私たちの先輩ですね」
人からだとあまり気にしないが、自分と同じ百狼から言われるのは我慢出来ないのだろうか?
俺たちの事で怒るその優しさは嬉しいのだが、熱くなり過ぎるのも困るので何とか落ち着いてもらいたいものだ。
しかしお互いの意見はすれ違いを続けているようで、ホクトと百狼の会話は次第に熱を帯びていった。
「オン、オン!」
『百狼としての誇りはどうした? いや、未熟者だからこそ人に寄り添うか』
「それはさすがに聞き捨てならないよ。私たちは今までホクトに沢山助けられてきたんだから」
「百狼様。ホクトは心優しい立派な者です。未熟では決してありませんわ」
「ホクトは強いの!」
ホクトを貶されたのが許せないのか、弟子たちが前に出て訴え始めていた。さすがに銀狼族である姉弟は言い返す事が出来ないようだが、強い意志を持って睨み返している。
その対応に気分を害する可能性もあったが、百狼は冷静に俺たちを諭すように告げてきた。
『人がどう思おうと、未熟者なのは間違いない。我等百狼は土地に漂う魔力を体内に取り込み、その身を成長させていく存在。生まれて数十年経ちながらも、まだその大きさなのは未熟な証拠なのだ』
百狼は魔力が満ちた場所を転々とし、その土地に留まって魔力を吸収し続けているわけか。
思い返してみれば、ホクトと再会した場所はそういう場所だったな。ホクトは居心地が良いからと言っていたが、そういう場所に留まる事を本能的に理解しているのだろう。
しかし俺と再会した事によってそれが滞り、ホクトの成長が止まっているのが百狼は許せないわけか。
多少の罪悪感を覚えはしたが、これはホクトが自ら選んだ道なので、俺はそれを尊重したい。
それよりも、先程の言葉に一つだけ気になる点があった。
あの百狼は今、ホクトの事を生まれて数十年と言ったよな?
「一つお聞きしたい事があるのですが、貴方はホクトの親を知っているのですか?」
『人よ、百狼に親というものは存在しない。過去に生まれて間もない未熟者を、我が偶然見つけただけだ。妙に不思議な魔力と行動をする奴だと記憶に残っていたが、まさか人に媚びるだけでなく、家畜の如く馬車を牽いているとは思わなかったぞ』
「ガルルル!」
『確かにお前の勝手だろうが、我は見るに堪えぬ。今すぐその戯れを止めて魔力を吸収しに行くがいい。出来ぬのなら、そこの人を始末すれば諦めもつくか?』
親が存在しないという点も気になるが、状況が怪しくなってきたので後回しだ。
せめて女性陣だけでもこの場から逃がそうと身構えていると、ホクトが一歩前に出ながら大きく吠えた。
「オン!」
『いいだろう。その言葉が真であるなら、己が実力で示してみせろ』
おそらく自分が成長している証拠を見せる為に、ホクトは百狼へ勝負を挑んだのだろう。
魔力を高めながら前に歩を進めるホクトだが、勝手に決めてしまった事を不安に思ったのか、途中で申し訳なさそうな目をしながら振り返ってきた。
「俺たちの事は気にするな。遠慮なく行ってこい、ホクト!」
「……オン!」
相手の実力は未知数だが、纏う雰囲気と魔力量からしてホクトより格上なのは間違いないだろう。
だが、俺の相棒であるお前なら強者に挑むという事をよくわかっている筈だ。
だからこそ、快く送り出してやれる。
そして堂々と歩みを進めるホクトに先手を譲るつもりなのか、百狼はその場から動く様子を見せなかった。
『全力で来るがいい。我に一撃でも当てる事が出来れば褒めてやろう』
「オン!」
相手が動かないのを確認したホクトは、一定の距離で足を止めて更に魔力を高め始めた。
その魔力量は凄まじく、ホクト周辺の空間が溢れ出る魔力によって揺らいで見える程である。
そして高まった魔力を開放すると同時に爆音が響き渡り、ホクトの足元が地を蹴った衝撃によって大きな穴が開いていた。
まるで光の矢の如く飛び出したホクトだが、百狼は不動のままである。
『……ふむ。速度は悪くない』
しかしどれだけ速かろうと真正面から攻めれば避けられるので、ホクトは途中で空中を蹴って己の軌道を強引に変えていた。
そのまま何度も空中を蹴り、ホクトは百狼を中心にして周囲を飛び交い続ける。
あれは俺が巨大な敵と戦う時によく使う攪乱戦法だな。
以前俺がメジアと戦う時に使った戦法で、相手の近くを高速で移動し続ける事によって攻撃を避けるだけでなく、こちらの狙いを絞らせないようにしているのだ。
ホクトが飛んだ後は白い軌跡が残り、無数の白い線によって百狼の体が埋め尽くされたその瞬間……ホクトは仕掛けた。
『だが……所詮は小細工よ』
しかし……百狼の反応と、尻尾を振るう速度はそれを超えていた。
攻撃に専念していたホクトは防御する間もなく尻尾で叩き落とされ、地面を大きく削りながら遠くへ吹き飛ばされていた。
ホクトの攻撃は初見ならば俺でも避けるのが厳しい一撃だが、それでも百狼は事もなく対応して力の差を見せつけていた。
『どれだけ人の戦いを模倣しようと、我の目から逃れられぬ』
「クゥー……ン……」
直撃のダメージは予想以上に大きく、ホクトは体を震わせるだけで立ち上がる事が出来ないようだ。
普通ならばそこで止めを刺すのだろうが、百狼はホクトを冷めた視線で見下ろすだけだった。
『お前はまだ百狼の力を全く理解しておらん。それが理解出来ぬ限り、お前は我に触れる事さえ出来ぬ』
百狼の指摘通り、ホクトは師匠や俺と戦った経験を元にした戦い方をする。
狼ならば牙や爪を多用するのに、ホクトは前足の爪を出さないようにして殴ったりと、必要のない限りはとにかく相手を殺さないように手加減するのだ。つまり妙に人間臭い戦いをするのである。
これは前世の記憶が影響しているせいだと思うが、そのせいで本能的に理解する百狼本来の能力をホクトが使いこなせていない……という事か?
そして今のやりとりで俺たちは理解もしていた。
ここにいる全員を軽く蹂躙出来るような強敵が目の前にいるのに、俺たちが冷静でいられるのは……。
『己の未熟を悟ったか? いや、たかが数十年の未熟者には早過ぎたかもしれぬな』
この百狼は、ただホクトを鍛えようとしているのだと気付いたからだ。
先輩としてなのか、それともライオルの爺さんみたいに強者と戦いたいからなのかはわからないが、あの百狼は俺たちに全く興味を持っていない。
俺たちを貶してホクトを煽っていたのも、あくまで挑発に過ぎないわけだ。
そしてホクトに完全な敗北を教えれば十分だったのか、百狼はゆっくりと背中を向けた。
『今回だけは見逃してやろう。今のお前は消滅させる価値もない』
「もう帰るつもりですか? まだ戦いは終わっていませんよ」
『呆れたものだ。人よ、どれ程強がろうとあの未熟者にもう戦う力は……』
「俺の相棒を舐めてもらっては困ります」
前世の俺たちは、圧倒的な存在だった師匠と数えきれない程戦ってきたんだ。
強者に挑み続ける負けず嫌いと、諦めない精神は……。
「俺と一緒だろう……ホクト!」
「アオオォォ――ンッ!」
その呼び掛けに反応するように、ホクトは遠吠えと同時に立ち上がった。
そして魔力を高める事によって傷ついた体が治り始めるが……何か様子がおかしい。
突如ホクトが唸り始めたかと思えば、苦しそうに悶えてから再び地面に倒れてしまったのである。
俺はすぐに駆け寄ろうとしたが、ホクトから噴き出している魔力が暴風のように荒れ狂って近づく事さえ難しかった。
とにかく『サーチ』で調べてみると、ホクトの体内で膨大な魔力が暴れているのがわかった。
まるで何かを破ろうとしているかのように……。
『どういう事だ? まさかこれ程早く兆しを見せるとは……』
この状況は完全に予想外だったのか、振り返った百狼は初めて動揺する感情を見せていた。
そして苦しみを吐き出すかのように大きく吠えたホクトの体から、周囲を覆い尽くす眩い光が放たれた。