軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16.大反響

「ふぅ……。やっと一段落といったところかしら」

「二コラお嬢様、午後からはこちらの封書をご確認くださいませ」

執事が山のような封書を持ってきた。それをチラ見し、私は肩を落とす。

「きっと、オマリー 絹(シルク) を都合してほしいっていう依頼よね。市場ではなかなか手に入らない状態だから、直接連絡してくるなんて……」

「皆様、それほどまでに熱望されているのですよ」

「ありがたいことだけど、困ったことでもあるわね。……ありがとう、そっちに置いておいて」

「かしこまりました」

執事が部屋を出て、私は大きな溜息とともに机に突っ伏した。

オマリー 絹(シルク) のカラーバリエーションが広がって以来、私とエヴァンは毎日目の回るような忙しさだ。

私たちはこの事業の立ち上げから関わっているけれど、立ち上げ自体、中心になって動いていたのはお父様である。私たちもそこそこ忙しくはあったけれど、お父様に比べればそこまでではなかった。

でも、正式にこの事業を受け継いだ後は、お父様はあくまで相談役で、実際に指揮を執るのは私とエヴァン。これまでのオマリー 絹(シルク) の販売に関してはある程度落ち着いていたのだけれど、新しい色が続々とお目見えしたことで、市場はひっくり返った。

元々人気があったということもあるけれど、大きかったのは、ドラン公爵夫妻が主催する夜会に私が新しいオマリー 絹(シルク) で仕立てたドレスを着て参加したことだろう。

あの時、庭園で踊る私たちを目撃した貴婦人たちが、私のドレスについていい噂を広めてくれたのだ。

『あの上品な光沢と虹色の反射はオマリー 絹(シルク) ならではですわ。その上、淡い青色のドレスは、二コラ嬢の瞳の色そのもので、彼女の美しさをより引き立てていたわね』

『とても綺麗な色のドレスで、思わず見惚れてしまいました』

『月の光に照らされて浮かび上がる虹色に、神々しさを感じましたの!』

などなど。

でも、私とエヴァンよりも更に忙しくなっているのは、職人たちだろう。

ルアンスパイダーの糸を紡ぐ職人、糸を染色する職人、布を織る職人……。

それぞれが高い技術を要するので、人材育成に力を入れているとはいえ、一人前に育つまで少々時間がかかる。だから、常に不足している状態。

でも、ものすごい数の注文が入っても、職人たちを酷使するわけにはいかない。人が手で作業している以上、品質を維持するためには作業環境も快適に保つ必要がある。要は、きちんと休息を取ること。

オマリー 絹(シルク) は大量生産できない。だからこそ、希少価値があるのだけれど。

「工程も一つ多いのよね……。ルアンスパイダーの糸は、そのままでも使えないことはないんだけど……」

そのまま使うなら、糸を紡ぐ工程は省略できる。これだけでもかなり違うのだが、ここはどうしても譲れなかったのだ。

「ここまでとは想定していなかったけど、こうなることはわかっていたのだし、仕方ないわね」

本当は、全ての注文に迅速に対応したい。でも、それが不可能なのは最初からわかっていた。

私は軽く頭を振り、思考を切り替える。そして、執事が持ってきた封書を確認し始めた。

「え……これは……」

一番上に乗せられていた封書を見て、大きく目を見開く。

明らかに他とは違う上質の紙に、高貴な封蝋。そして、その紋に驚愕する。

「ちょ、ちょっと待って! これって……!」

その時、タイミングよくノックの音がした。

「姉上、今よろしいでしょうか?」

「エヴァン! ちょうどよかったわ、入って!」

私は大慌てで、部屋の扉を開けたのだった。