軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

93.一方その頃

「ちょっ!!! まってまって」

「レオ、まつでし!!!!!」

「うをあぁあ!!」

「わははははははは!!」

荒野を走る四人。

先頭にレオ。

それを追うお茶漬、菊姫、シン。

「ああああ、ここにホムラがいれば蹴りかなんか入れて止めてくれるのに!」

「ペテロがいれば見捨てる踏ん切りがつくでしのに!」

「どっちも留守!」

埃とゴミを蹴立てて走るレオ。

荒野に合う。

狼のエフェクトが半透明に見えるシン。

荒野に合う。

荒れた大地に花を振りまきながら走る菊姫。

荒野に合わなくもない。

昼の荒野に星を振りまきつつ走るお茶漬。

荒野に合わない。

「なんてーか、走りのエフェクトもうちょっと合わせときたかったな! とうっ!」

飛びかかってきたサーベルタイガーに似た敵をシンが殴り飛ばす。吹っ飛ばされて地面を掻いた敵は少し距離が離れたが、殴られてヘイトを上げた状態で噛み殺すことを諦める距離でもない。

そんなことを繰り返した結果、結構なモンスタートレインを起こしているため、振り切るまでもう止まるに止まれない状態まできている。

それでも止まれと声をかけているのはレオが敵のいる方へと走っているからだ。

足の速い密偵は敵に絡まれることなくタゲを取っても振り切れる。だがこの先はナルン山脈がある、ジアース側から見るナルンは緑豊かな山脈だが、 迷宮都市(バロン) 側から見える威容はほとんどが石の山、行き着く先は絶壁のそびえ立つ行き止まりだ。

レオは、目に入らないはずはないのに行き着く先が行き止まりであることに気づいた様子がない。

そして後に続く三人は?

レオがタゲを取って中途半端に集めた敵は全て三人に狙いを定め直して追ってくる。一旦はレオを追った敵の中にはレオの方から、つまり正面からくるものまで混ざる始末。

三人の中では比較的早く動けるシンが捌いてようようなんとかなっている。

きっかけはレオ。

迷宮都市バロンの外がどうなってるのか見てみたい! 釣の穴場を探そうぜぇっ! と三人を誘い、城壁の外に出た。

外は荒野だった。

ただし、ひび割れた大地の荒野ではなく、ヒースのような痩せた土地に独特の低い植物が群生しているタイプだ。ヘザーやエリカでも咲いていればまた印象が違うのであろうが、生憎バロンでは花の季節ではない。

「ううう、見捨てる時期を逸してしまった〜〜〜〜〜〜」

「どっかにエリアの切り替えとかないでしかぁああああ」

「このゲームにそんな継ぎ目ない!! 強いていうならイベントでの切り替えぇぇぇぇえええっ」

「わはははは! 三人とも遅いぞ〜〜〜〜〜っ!」

「「「貴様が言うなあああああっ!!!!!!」」」

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

ぼんやりした視界に入る黒く艶やかなもの。

漆黒のそれは冷やりとして滑らかでとても柔らかい。

ん?

柔らかい?

……。

アウト――――――――ッ!

カミラが私の肩を枕に寝ている。

胸は私の胸にぴったりくっついている。ギルド嬢のエメルさんに次ぐ胸だ。柔らかくて気持ちがいい。

いや、違う。

感触を味わっている場合ではない。起きないうちに離れねば。一応動けないなりに周りを確認すれば、どうやら越境してきたのはカミラの方なのでそちらはセーフ。

起こさないようにそっと肩からカミラの頭を外し、うっかり背中にかかる髪ごと触っていた手を引き抜く。

……痺れてるんだが? こんなところまで再現しないでいただきたい。感覚がないせいで痺れているのに気づかず、手を引き抜く最中に事故りそうになった。危ない。

無事ミッションを完了して茶を飲む。

朝用に置かれていた燃料ブロックにガラハドがしていたように火をつけ沸かしたお湯だ。評価は変わらないが雰囲気は大事だ、チロチロと薬缶の底を舐める炎を見ながら思う。手間を省きすぎるのは味気ない。

朝食は山実鳥の胸肉を茹でてほぐしたものとキュウリの千切りを混ぜたものに味噌ダレ。上に同じ山実鳥の皮をパリパリに焼いたものを崩してかける。

今現在無性にやりたいのは味噌を塗った焼おにぎりなんだが。いつか材料気にせず作れるようになるといいのだが。

メインはホットドッグ。

長細い柔らかいパンにソーセージを挟み、ベーコンを細かくしたものと一緒にチーズを乗せて焼いたもの。

ソーセージの上にキャベツの酢漬けを乗せたもの。

アボカドをペースト状にしてレタスとソーセージを挟んだもの。

ソーセージは普通のもの、ハーブソーセージ、どちらも焼き色が付いていて噛めばパリッと弾ける。

付け合せにはやっぱりフライドポテト。ん? オニオンリング派? それもつければ問題ない。

私はフライドポテト一択なのだが、レオとシンはオニオンリングが好物だ。今頃何をしているのだろうか。前回ログインした時にレオから来たメールには「死にすぎてウナギゲットォッ!」と訳のわからんことが書かれていたが、問いただしたメールに返事はなかった。きっと今も何か訳のわからんことをしていることだろう。

あれ? なんか【蹴り】を取得しないといけない気が突然してきた。何でだ。

匂いにつられたのかガラハド達が起き出す。

本日の朝食も好評だった。

「さて、白、よろしく」

「なんかこう、忘れないうちに呼び出しておこう感が漂ってるんじゃが?」

「気のせいです」

三人が視界の端で肩を揺らして笑っている。

「さて、よろしく頼むぜ」

「ここはオーレ・ルゲイエやザントマンという【睡眠】を使ってくる敵がいるから気をつけ……る必要は昨日ボスの状態異常攻撃もレジストしてたホムラにはないかもしれないけど、寝たら起こしてくれるか?」

「了解」

ここから通常の武器では物理ダメージは半減どころでなく減らされるのだが、ガラハドもイーグルもエモノはルバ特製だ。

「最初に来た時はこの剣無しだったからな、カミラに火を『エンチャント』してもらってちまちま進んだんだ」

「剣を手に入れてからは攻略速度、雲泥の差よ。ありがとう」

おっと、今まであまり『エンチャント』は使用しなかったがパーティーメンバーに必要な場合があるのか。

「これを手にいれる時にホムラと知り合ったんだな。あの頃はまだ称号もステータスも将来有望そうくらいだったのに……」

イーグルが遠い目をしだした。

「オレなんか、ギルドカードもまだな状態で会ったぜ? 次にあったら既に雷魔法とか使ってたし。さらに剣が出来上がるまでの間とオレ等がここに潜ってる間に一体何があったんだってかんじだよな」

「本当にどこをどうしたらこうなるのかしら?」

ガラハドとカミラまで遠い目を!!

「漸くお主の異常性を理解する輩が現れたか」

「白まで!?」

オーレ・ルゲイエは虹色のネグリジェのような服に靴下姿の妖精だった。儚げな姿なのに持っている傘で三段突きをかましてくる上、瓶からミルクをぶっかけられるとイーグルが言ったとおり【眠り】の状態異常にかかる。ドロップが『妖精のミルク』とレアが『妖精の絹』だったので私的にはウェルカム。

だがしかし、『浄化』がなかったらこれかなり臭う羽目になっていたんじゃないだろうか。

お供のザントマンの投げる砂にも【睡眠】効果があるようでイーグルとカミラはレジストするが結構ガラハドは食らっている。

他に出会う敵はレイス――今度は攻撃をしてくる――、ぼんやりした輪郭の白いレイスにくらべて、ドレス姿のフロウレイス。

その他いろいろ出てきたが、物理よりも状態異常と魔法が主な攻撃方法な敵だ。

「ふむ、我の異常付与に勝るもの無く、我より素早いもの無しか」

そう呟いて敵の間をすり抜け、すり抜けざまに状態異常をかけてゆく白。

「おいおい、レイスが痺れてるの初めてみたぜ」

「シーサーペントには大して効いてなかったのに」

「いや、シーサーペントに効く魔法って聞いたことがないぞ」

「毒に極端に弱いぞ、シーサーペント」

「マジか!」

「本体レベルが弱体化しててもスキルレベルがそのままってことなのかしら?」

話し続けているが、三人とも攻撃の手は休めていない。

そんなこんなでボス前。

白とは帰還の時間がきたためわかれている。

やはり戦闘中はもふれないため不満だ。

「……フェル・ファーシってジジイだったのか」

勝手に白っぽい女性型の魔物を想像していた。

『ジジイの雫』って嫌だなおい。

「いや。違う」

ボスへと続く階段を降り、扉を開いて目に入ったのは痩せた老人。

いや、目の下のクマや疲れた様子でそう見えるだけで実際はもう少し若いかもしれない。

「おや、おや、諦めたと思ったのにまた懲りずに来たか」

「なんだお前は!?」

「聞かれて答えるとでも?」

にらみ合う謎のジジイとガラハド達。

あれかイベントか。

前知識がなくても待っているのがモンスターならば戦闘へ向けてのテンションがあがるのだが、見知らぬ人間だと、日本人的感覚を発揮してしまうためかどうも引いてしまう。

敵の可能性以外もあるのではないかと。

「気温を上げることに成功。おまけにここで火炎の騎士を葬れるのは僥倖と言うもの」

おっと、敵確定。ガラハド達は相手をしらんようだが、あちらは三人を知っている風だ。

「何だと!」

「ハハハッ!」

笑っている男の後ろに床からせり上がるように半透明なものが顔を出す。

陶器のような印象を与える美しい女の顔。

だが胸から下はタコの足のようなたくさんの触手。

全体的にクラゲを思い出させる青白い半透明。

太いタコ足の中は赤い液体が満ちているのか中で気泡が動く様子がわかる。

これがフェル・ファーシなのだろう。

一応【鑑定】すると赤の ファル(・・・) ・ファーシとバッタもののような名前が付いていた。

あ、フェル・ファーシの雄か。女顔なのに。

説明欄に雄は珍しいとある、またもやレアボスなのか。

男の方も【鑑定】を使おうとしたところで、男の足元から魔法陣が広がりその端から男とファル・ファーシを囲む結界壁が出来上がる。

「この結界は魔法も物理も防ぐが ファル・ファーシ(なか) からの攻撃は通すぞ!」

「何っ!?」

「六属性を防ぐ我が傑作……っ、ぎゃああああああ」

六属性っておい。

勝ち誇って醜悪に笑っている男がファル・ファーシの足に絡め取られた。

「ボスを傘下に収めての余裕じゃなかったのか?」

あっけにとられる私。

ガラハド達も驚いている。

え――……なんというか頭からボリボリされておりますが。

あれか。

「 通常ボス(フェル・ファーシ) じゃなかったから予定が狂ったオチか!」

「多分正しい洞察だが……」

「オチとか言うな!」

「オチで済ませないで!」